ファーウェイから4月24日に発売されたばかりのノートパソコン「MateBook 13 2020」。新型コロナ騒動まっただ中の発売だ。

新型コロナの影響で、市場の在宅勤務のニーズが高まっている。このことで、企業向けとしては即納で手に入るパソコンが求められているといい、中古の市場も賑わっているという話が伝わってくる。コンシューマーの市場でも、在宅勤務などを余儀なくされたユーザーが、仕事に使えるパソコンを求めたりするケースがあるようだ。当面は、リモート授業を余儀なくされる学生諸君もそうだし、対面授業が原則の小中学生でもオンライン授業の是非についての議論が高まっている。

  • 東京・秋葉原のPCショップでは「テレワーク支援」や「中古PC買取強化」といったPOPを店頭に置いているお店も多く見かける

こういう時期だからそ、長く使えるパソコンを

この数年、モバイルの用途ばかりが注目され、いつでもどこでも使えるモバイルノートパソコンの存在感が高まっていた。だが、こういう時期は、パソコンを選ぶ基準を少し見直した方がいい。

MateBook 13 2020は、最近の新製品の中ではとてもバランスのいい製品だ。手放しで褒められる評価の高い製品のひとつだといえる。13型で3:2の縦横比を持つ狭額縁のスクリーンはタッチ対応で、本体のフットプリントもきわめてコンパクトだ。そのサイズは286mm×211mmと、297×210mmのA4用紙に匹敵する。モバイルノートとして見たときに、約1.3キロというのは決して軽量とはいえないが、使うときだけ使い、使わないときには片付けておくといった在宅ニーズには問題にならないだろう。背に腹は代えられないと、中途半端なスペックのものをあわてて入手するよりも、こういう時期だからこそ、それなりに長く使えるであろう新製品を選んだほうがいい。

  • ファーウェイが4月24日に発売した13型ノートPC「MateBook 13 2020」。価格はオープンで、店頭予想価格はCore i5モデルが税別119,800円前後、Core i7モデルが税別159,800円前後だ

インテルの最新プロセッサである第10世代Core搭載で、モデルは2種類とシンプルだ。Core i5搭載モデルとCore i7モデルが用意されているのだが、前者はメモリが8GB、後者は16GBを搭載している。ストレージは両モデルともに512GBだ。用途にもよると思うが、予算次第でどちらを選んでも当面は不自由することはないだろう。失敗したと思うことはないはずだ。

本体に周辺機器等を接続するためのUSBポートは両脇にひとつづつType-Cポートが装備されている。それだけだ。それで足りない場合は、同梱されているハブ、Matedock 2を使うことで、USB 3.0 Type-A×1 、USB 3.1 Type-C×1、HDMI×1、VGA端子×1、ヘッドフォンジャックを拡張できる。

こういうタイミングなのになぜ、という仕様もないわけではない。たとえば両脇のUSB Type-Cポートだが、左が充電とデータ転送、右がDisplayPortとデータ転送に対応している。一方、昨今の外付けモニタはType-C給電に対応していて、PCとの間を1本のケーブルで接続するだけで電源供給と映像出力の両方をまかなうことができる。だが、左右のUSBポートの仕様が異なるため、その恩恵にあずかることができない。映像用と電源供給用に別のポートを使わなければならないのだ。また、Wi-Fiも、最新のWi-Fi 6には非対応だ。

ファーウェイは、PシリーズやMateシリーズなどのスマートフォンが、米国の禁輸措置によって、新製品ではGoogleモバイルサービスを使えない状況が続いている。同社としてはGoogleのサービスに代替する新しいエコシステムとして独自のモバイルサービスであるHMS(HUAWEI Mobile Service)のエコシステムの普及をもくろんでいるが、Googleのサービスに匹敵するものとなるにはまだ時間がかかるだろう。

だが、パソコンは違う。Windowsは米商務省のライセンス認可によって、以前と同様にファーウェイ製品にプリインストールして出荷できていると言われている。今回のMateBook 13 2020にWindows 10が入っているのはそのためだ。

いま、パソコンの重要性を再認識する

今年は5G元年とも言われている年で、本当だったら、もっともっと5G通信が盛り上がり、スマホなどもたくさん売れる年になっていたはずだ。それがコロナ問題で抑制されているというのは誰もが想像に難くない。だが、その一方で、パソコンの重要性が再認識されていることになったというのは皮肉な話だ。

だが、少なくとも日本市場におけるファーウェイにとって、この状況はちょっとしたシェルターになるのではないか。ファーウェイの日本・韓国リージョンのプレジデントである呉波氏は、年初に抱負を語るにあたって毎年のように「生き残り」をキーワードにしている。「これで今年も市場に生き残れた」「今年も生き残ろう」といった言葉を過去に何度聞いたことか。だからこそ、いま、呉波氏は、日本の市場におけるファーウェイパソコンの存在感を高めようと懸命になっているはずだ。

スマートウォッチの新製品「HUAWEI WATCH GT 2e」などもそうだ。外出自粛の流れの中で、住宅の室内でもできるワークアウト活動を計測することもトレンドになろうとしている。ハードウェアとしては素晴らしいスマートフォンの新製品の魅力を享受できないのは残念だが、同社の積極的なビジネスの展開を見る限り、ファーウェイの存在感が消えることはなさそうだ。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)