年初のCESと6月のCOMPUTEXは、業界全体がこの先どうなっていくかを予測するために重要なイベントだ。

各社が開催するプレスイベントに追われ、なかなか展示会場をくまなく見て回るという時間がとれないのだが、それでも、見ないわけにはいかない。ちょっと時間がたってしまったが、ここではCOMPUTEXの展示会場で発見した2つの重要ポイントを紹介しておこう。

AC電源なしで動いていたCore Mプロセッサ搭載2-in-1

開発コード名「Llama Mountain」は、Core Mプロセッサを搭載した2-in-1モバイルPCのリファレンスデザインだ。もちろん、リファレンスデザインは製品ではない。でも、Intelが、Core Mプロセッサを使えば、こんなすごいことができるということをアピールするためのもので、当然、OEM各社は、それに追いつけ追い越せとばかりに独自の製品を開発する。

Core Mプロセッサを搭載した2-in-1モバイルPCのリファレンスデザイン「Llama Mountain」

12.5型のスクリーンを持つタブレットはキーボードを重ねても7.2mmだ。しかもファンレスで670gというのは、これから各社が超えなければならないハードルとして決して低くはない。このサイズにしてこの重量は実に魅力的で、今年末から出てくるであろう各社の製品が、これより劣るものはないと想定すれば、年末の新製品が実に楽しみなものになってくる。

とはいえ、バッテリの容量を犠牲にすれば、ある程度はボディを軽くすることはできる。でも、それではモバイルPCの意味がない。

COMPUTEXの展示会場のIntelブースには、[ショーケースに入った状態でLlama Mountain」が展示されていた。もちろんスクリーンはオンの状態だ。ちゃんと動いている。そして、その筐体には電源アダプタが接続されていなかったのだ。ブース全体を見渡せば、大量のノートPCが展示されているのだが、それらにはことごとく電源アダプタが接続されている。でも、「Llama Mountain」だけは電源が供給されず、内蔵バッテリだけで駆動されている。筐体から生えるケーブルが一本もない状態で稼働し続けている。

AC電源なしでスクリーンはオン、ちゃんと動いている状態でずっと展示されていた

バッテリの残り容量が残り少なくなるごとにフル充電の機材と入れ替えるのか、それとも、朝から夕方までの丸一日をバッテリ駆動できるのか、ずっと見ているわけにもいかないので、今の時点ではその実力はわからない。でも、デモンストレーションとしては秀逸だ。Core Mプロセッサの低消費電力をアピールできる格好の展示だといえるだろう。

もっとも、電源アダプタが接続されていないことに気がついた来場者が、いったいどのくらいいたのだろう。そのことが、特にアピールされていなかっただけに、もったいないような印象も受けた。

InstantGoに対応していたSurface Pro 3

一方、Microsoftはどうか。発表されたばかりの「Surface Pro 3」は、タブレットとして800g。「Llama Mountain」を見てしまった以上、早くも「Surface Pro 4」への期待につながってしまう。

Microsoftブースで見つけた「Surface Pro 3」

展示会場のMicrosoftブースにも展示があって、発売前の実機を自由にさわることができた。日本での発表会はCOMPUTEXの期間中に開催され、情報が錯綜していたのだが、改めて確認したところ、少なくともCOMPUTEX展示会場での実機については「InstantGo」に対応していた。実機のソバにはりついていた説明員にたずねても「サポートしている」という回答が得られた。

展示機でコマンドプロンプトを開き、

powercfg /sleepstudy

を実行すると、さすがにパーミッションがあいていなくて実行ができない。ならばと、

powercfg /a (AvailableSleepStatesと同義)

を実行すると、見事に利用可能なスリープ状態として「Standby(Connected)」と表示された。日本語版であれば、

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以下のスリープ状態がこのシステムで利用可能です:
    スタンバイ(接続されています)
    休止状態
    高速スタートアップ

以下のスリープ状態はこのシステムでは利用できません:
    スタンバイ(S1)
        システムファームウェアはこのスタンバイ状態をサポートしていません。
        コネクトスタンバイがサポートされている場合、このスタンバイ状態は無効です。
)   スタンバイ(S2)
        システムファームウェアはこのスタンバイ状態をサポートしていません。
        コネクトスタンバイがサポートされている場合、このスタンバイ状態は無効です。
    スタンバイ(S3)
        システムファームウェアはこのスタンバイ状態をサポートしていません。
        コネクトスタンバイがサポートされている場合、このスタンバイ状態は無効です。

    ハイブリッドスリープ
        スタンバイ(S3)は使用できません。
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と表示されているはずだ。もし対応していなければ、

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以下のスリープ状態がこのシステムで利用可能です:
    スタンバイ(S3)
    休止状態
    ハイブリッドスリープ
    高速スタートアップ

    |

以下のスリープ状態はこのシステムでは利用できません:

    |

    スタンバイ(接続状態)
------------

となるはずだ。いわゆるS0ixと呼ばれるHaswellの新たな省電力ステータスを利用した機能となる。

コマンドプロンプトのpowercfgで「InstantGo」のサポートを確認

InstangGoは、以前、ConnectedStandbyと呼ばれていたWindowsの機能で、スリープ時にも画面だけをオフにして通信を継続、完全な眠りにはつかずスマートフォンのように振る舞わせるためのものだ。

対応周辺デバイスが限定されていることから、64ビット版のWindows 8.xでは、ソニーの「VAIO Duo 13」が世界初、それに続いてパナソニックの「Let's Note MX3」の一部モデルのみが実装に成功していた。Surface Pro 3は、それらに続く、世界で3例目の64ビット版Windows環境のInstantGo対応を果たしたことになる。新しい材料としては、VAIOやLet'S Noteが対応していなかったWi-Fiの802.11ac対応などがある。このことから周辺デバイスの対応に何らかの動きがあったものと思われる。

実際の発売日は米国で6/20なので、その時点で再確認してみないと本当のところはわからないのだが、対応しているのとしていないのとでは、その使い勝手が大きく異なるので、なんとかこのまま対応機としてデビューすることを願いたい。それでこそ、Microsoft純正のリードデバイスといえるからだ。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)