先週、取材でイギリスにいったとき、街中で、3インチディスプレイの小さなスマートフォンを見つけました。売っていたのは「CarPhone Warehouse」という携帯電話のチェーン店です。SIMフリーで、しかもプリペイド契約と組み合わせて購入すれば39.99ポンド(1ポンド180円換算で7,200円)ということなので、購入してみることにしました。単体で購入しても49.99ポンドと10ポンド(同1,800円)の違いがあり、19.99ドルの本体にO2というイギリスのプリペイドSIM(SIM10ポンド、チャージ分10ポンド)との組み合わせで購入しました。

LG L20は、3インチ液晶を採用したコンパクトな低価格スマートフォン

この機種は、画面が3インチで、縦10センチ、横6センチしかありません。液晶面を見た感じは、クレジットカードよりもちょっと大きい程度です。最近のスマートフォンに比べるとかなりコンパクトです。LTEには対応していませんが、3G、GSMに対応しており、通話用としては十分です。LGのホームページを見ても、対応バンドに関する記載がないのですが、イギリス向けなので、2100MHzには対応していると思われます。携帯電話関連の情報サイトをみても、850/900/1900/2100と表記してあるところと「900/2100、850/1900、850/2100」という3タイプを併記してあるところがあります。イギリスなので、900MHz、2100MHz対応のような感じもしますが、詳しいところはわかりません。なお、GSMは、850/900/1800/1900のクワッドバンド対応のようです。

CPUは1ギガヘルツのCortex-A7のデュアルコアで、SoCとしてはMediatekのMMMT6572Mが使われています。メインメモリは512メガバイト、内蔵ストレージは4ギガバイトとほぼ最小の構成です。搭載されているアンドロイドは、Ver.4.4.xで、製品としては2014年にアナウンスが行われています。

英国のCarPhone Warehouseで19.99ポンドで販売。実際にはプリペイドのSIMカードの購入と10ポンドのチャージで39.99ポンドで購入

大きさはクレジットカードよりも一回り大きなサイズ。周囲が斜めにカットされているので、見た目はわりと小さな印象を受ける

背面カバーが開き、バッテリが交換できる。SIMスロット(マイクロSIM)はバッテリの下。そのほかにはマイクロSDカードスロット(上部左側)がある

背面にはカメラのみ。ボリュームと電源ボタンが側面に、底部側面にはマイクロUSBコネクタ、上部側面には、ヘッドホン端子

搭載されているアンドロイドは、LGのカスタマイズが行われており、電話利用中心にしたホーム画面などが用意されています。また、ロック画面でも、画面を叩いてロックを解除する機能などが搭載されています。

気に入ったのは、カスタマイズされた、電話専用のホーム画面です。これは、ホーム画面の1つがテンキー表示になっていて、直接電話をかけることができ、残りのページにアプリのアイコンを配置できます。また、固定した機能4つと、ユーザーが指定可能なボタン4つの合計8つのボタンを利用できます。なので、電話専用に使って、ときどきカレンダーを見るなんて用途には最適です。

実際に使って見ると、電話用として使うのであればいいんですが、アプリを使い出すと、とたんに速度が気になります。アプリによっては、ボタンを押してホーム画面に戻るのにふた呼吸ぐらい必要な感じです。なので、SNSに写真を投稿などとしようものなら、ちょっとイライラします。電話帳程度のアプリなら、すぐ起動して、文字入力して通話相手を検索するのは、比較的ストレスなく利用できますが、フォトアプリなどの大量のデータを扱うようなアプリだと、かなり「もっさり」した感じがします。もともと本体価格19.99ポンド(1ポンド180円換算で3,598円)で売られているような機種です。遅くて当たり前といえばそうなんですが。

ただ、ホーム画面に電話用テンキーを常に表示できるため、電話として使うのは、ほとんどストレスを感じません。番号を知っているなら直接ダイヤルしてもいいし、海外の電話と同じく、数字に3~4つのアルファベットが割り当てられてあって、これを使うと、読み仮名や名前に設定したアルファベットをインクリメンタル検索してくれます。筆者は、日本語を使えない機器を使うことが多く、比較的使う項目については電話帳の名前にローマ字読みも登録しているので、これで相手先を選択できます。また、前述のように電話帳を開いて日本語で検索するのは、ストレスなくできます。

カスタマイズされたホーム画面が利用可能。テンキーやアプリ起動ボタンなどが登録できる電話用のホーム画面が利用できる。この右側のページにアプリアイコンを登録可能

ただ、画面が小さく、操作はしやすいとはいえません。フルキーは打ち間違えしやすく、テンキーの操作が合っているようです。

カメラは固定焦点で、2メガピクセル(1,600×1,200ドット)。LEDライトもなく、屋内の撮影などはあまり得意ではなさそう

小さいスマートフォンが欲しいよねぇ

筆者は、現在では通話用のSIMとは別にデータ通信用には、MVNOのSIMを併用しています。この関係もあって、通話用とデータ用の2つの端末を使う必要があります。1つにすればいいかとも思うのですが、家族間通話無料が意外に通信料金削減には効いているし、データ通信は定額でできる契約は残してあるので、一応世界中どこにいっても困らない「最後の砦」みたいな感じで契約を残してあります。いまだに3G契約なので、通話のみだと、毎月無料通信分でカバーできてしまい、毎月1,000円程度で維持できるというのも理由です。

それで、通話専用の小さなスマートフォンが欲しいのですが、国内にはほとんど売られていません。かつては、ソニーエリクソンのXPERIA ray(SO-03C)のような3インチクラスの液晶を持つものがあったのですが、昨今の大型画面ブームで、すっかり、3インチクラスの端末がなくなってしまいました。XPERIA rayは、いまも手元にあるのですが、アンドロイドがGingerBread(Android 2.3)なので、使えないアプリもあります。特に最近使っているAndroid Wareは、組み合わせ対象がAndroid 4.3(Jelly Beanの最終版)以上なので、利用できる端末が限定されます。まあ、スマートウォッチを諦めればどうにでもなるのではあるのですが。ただ、海外を見ると、低価格化の必要があるのか、いまだに3インチのスマートフォンで新製品が投入されています。もちろん、大画面化という傾向もありますが、全体のバリエーションの中で画面の大きな機種が多少多い程度で、コンパクトなマシンがなくなってしまったわけではありません。

もちろん、通話だけなので、アンドロイドである必要はないのですが、電話帳が共有できるなどの理由で、できれば、アンドロイドにしておきたいのです。もっもと電話帳が共用できるなら、Windows Phoneでもいいんですが。すでに、GoogleやMicrosoftのクラウド系サービスを使っているので、これになじまないシステムは使いにくくなったというのが現状です。

ガラケーでもAndroidベースという機器もあるようですが、折りたたみ式で今回のL20よりもコンパクトというわけでもなく、無線LAN(最近ドコモから出た機種には無線LANがない)やアプリの利用などで、問題があり、スマートフォンユーザーが、電話専用に使うというところまでは来てないような気がします。

だいたい、大画面が流行ったら、みんな大画面ってのもなんだか、おかしすぎます。1社ぐらいは、コンパクトを目指すみたい方向があっていいんじゃないかと思うんですが。各社ともに、安全策すぎて、みんな同じになっているので、どれも目立たない感じです。だけど、実際のところ、国内メーカーの普通のスマートフォンがバカ売れしているという話は聞こえてきません。

買い換え需要などがあるので、そこそこは売れているんでしょうが、スマートフォンになると、ガラケーみたいに、前の世代と「操作性やメニュー体系が同じ」というわけにもいかず、前世代の機種のユーザーのつなぎとめも難しいのではないかと思われます。アニメやファッションブランドなんかに頼った「コラボ」製品も、特徴のないスマホになんとかして目立つ部分を付けようという感じがしてしまいます。

他社よりも目立たず、そこそこしか売れないとなると、ある意味、ほとんどの機種が「失敗」だったとも言えます。だったら、他社と違う方向を目指してみるのもいいんじゃないかと思うんですが。

本稿は、2015年5月25日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。