PCゲームプラットフォーム「Steam」――。

電脳世界の奥深く。そこは“無限”が眠る場所。

今宵もゲームに魅せられた冒険者を、出口のない迷宮へと誘い込む。

この連載では、そんな「Steam」という名の魔境にある、無料インディーズゲームをご紹介。隠れた名作や、いままで知らなかった傑作タイトルなど、思わぬ秘宝が見つかるかもしれません。少しでも興味が湧いたら、まだ見ぬ秘宝を目当てに、トレジャーハンティングしてみては?

基本は「水をやる」だけ? シンプルすぎるゲーム『Viridi』

日々、さまざまなゲームに触れていると、キャラクターのセリフやアイテムの説明文、ときにはゲームのテーマそのものが新たな知識を得る機会になります。今回紹介する『Viridi』も、学びのあるタイトルのひとつ。

本作を一言で表現するならば「簡易多肉植物寄せ植えシミュレータ」です。筆者はこのゲームを始めるまで、「多肉植物の寄せ植え」に触れたことがなかったのですが、毎日世話をしていくうちに、「Pachyphytum glutinicaule」(パキフィツム・グルチニカウレ、稲田姫)といった、ややこしい名前の植物名もそらで言えるくらいに憶えてしまいました。

もちろん、学び以外にもこのゲームには魅力があります。それは、なんといっても“ゆるさ”でしょう。

  • Viridi

    簡易多肉植物寄せ植えシミュレータの『Viridi』をプレイ

屋内での栽培が比較的容易で、インテリアとしても人気の多肉植物ですが、実際に栽培を始めると、季節ごとの日当たり管理や土の準備、落ちた葉の処理、植え替えなどで、そこそこ手間がかかってしまいます。

『Viridi』では、このような「栽培にかかる手間」を大幅に省略。ゲームでやることは、基本的に「雑草を抜いて」「水をやる」のみです。

ただし、操作はシンプルですが、植物が簡単にすくすくと育っていくわけではありません。『Viridi』では「生育にかかる時間がリアルタイムに近い」という特徴があります。実際にプレイしてみると、種を植えてから、そこそこ見栄えがする大きさに育つまで、思った以上の時間と根気が必要であることに気づくでしょう。

参考までに、筆者が4月1日に本作を始めた当時と、5月末に撮影したスクリーンショットを続けて掲載します。こちらをご覧いただければわかりますよね。『Viridi』は、かなり気長に遊ぶゲームなのです。

  • Viridi

    ゲームを始めたばかりの画面

  • Viridi

    約2カ月の集大成がこちら

ゲームを始めたら、まずは好きな鉢を選びます。種を植えたら、あとは定期的に植物を選択し、霧吹きアイコンで水をあげていきましょう。

  • Viridi

    まずは好きな鉢を選ぶ

プレイ中に植物を選択すると、個体の名前とともに、状態が表示されます。例えば下の画面でいうと、「Echeveria Glauca」(高咲蓮華)が「Thirsty」(乾いている)状態。ここに霧吹きアイコンで水をやると「Sated」(満足した)状態になります。

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    「Echeveria Glauca」が「Thirsty」。乾いているとくすんだ色で表示される

  • Viridi

    水をあげて「Sated」になると、鮮やかな色に戻る

栽培を続けるうえで重要なのは「Sated」状態を維持すること。本作はアプリを落としてもゲーム内の時間が経過するので、朝に世話をしてから、翌朝までアプリを開かないでいると、いくつかの個体が「Thirsty」になっていることがあります。ここで水をやらずに放っておくと、乾燥が進んで「Parched」(カラカラに乾いた)、「Desicated」(乾物化)と状態が悪化していくので、できるだけ「Thirsty」状態のうちに水をあげましょう。

ただし、水をあげすぎても状態は悪化します。2~3回までなら「Sated」状態を維持しますが、それ以上水をやると「Overwatered」(水をやりすぎた)、「Waterlogged」(水浸しになった)と表示が変化。それでも水をあげ続けると、根腐れして生育が停まってしまいます。操作に慣れないうちは何度も霧吹きアイコンを押してしまって水をやりすぎがちになるので、注意しましょう。

また、時間が経つと雑草が生えてくるので、クリックして除去する必要があります。定期的に起動して鉢の状態をキレイに保つのは、ちょっと大変ですが、それゆえに、植物が元気に育ってくると愛着が生まれてくるのです。

ちなみに、旅行などで長期間家を空けて鉢の世話ができない場合は、次にアプリを立ち上げるまでゲーム内の時間が停止する「Vacation Mode」を利用すると安心ですよ。

  • Viridi

    雑草はクリックすると抜ける

「いつでも鉢を眺められる」ことにホッとする

『Viridi』をゲームとして見ると、「あまりにもやることが少ない」と感じるかもしれません。しかし、本作の魅力は、まさにその「ゆるさ」。先述の通り、アプリでやることといえば水やりと雑草抜きくらいで、あとはぼんやりと鉢を眺めているだけ。筆者の場合、アプリを立ち上げてから一連の作業を終えて、30秒くらいで落とす日もあります。

「それの何がおもしろいんだ」と思うかもしれませんが、プレイを続けているうちに、ほんのちょっとの“やった感”と、気が向けば鉢を眺めるという選択の余地が与えられていることに、なんだかホッとしている自分がいるのです。

これは、ソーシャルゲームによくある「ログインボーナス」を受け取ったあとの感覚にも似ています。ソーシャルゲームであれば、時間と手間を使って「デイリーミッション」をクリアしないと受け取れないことも多いのですが、なにしろ『Viridi』の場合はゲーム本編がログイン操作のようなものなので、プレイヤーにかかる負荷が非常に小さい。筆者が本作を続けていられるのは、このようなプレイ負荷の小ささによるところが大きいと感じています。

  • Viridi

    植物を選択してしばらく放置しておくと、植物に対して歌を聴かせられる。聴かせた植物は聴かせた分だけ生育速度が上昇する

また、多くの基本無料タイトルと同様に、『Viridi』でもゲーム内アイテム課金を採用しています。購入できるのは、「背景変更アイテム」と「多肉植物の種」の2種類。背景変更アイテムには「森林」や「アパートの一室」、「キャットハウス」のシチュエーションを解放するキーアイテムが用意されています。初期背景で栽培できる鉢は1つまでですが、それぞれのシチュエーションを手に入れれば、栽培できる鉢を増やせます。

寄せ植えは、1つの鉢に小さな植物がみっしりと敷き詰められているのも魅力です。ウィークリーボーナスとして、毎週ランダムな多肉植物の種を1つだけ配布していますが、「もらえる植物だけでは寂しい」と思ったら、種を買い足してもいいでしょう。種1つあたりの価格は0.09ドルから0.39ドルとそこまで高いものではありませんし。

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    課金アイテムのひとつ「Fish Skellie to the Cat House」

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    好きな多肉植物の種を指定して買うこともできる

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    週に1度受け取れる植物の種はランダム

  • Viridi

    ウィークリーボーナスで、ほしかった「Senecio rowleyanus」(緑の鈴)をもらったのでさっそく植えた。うれしい

植物栽培の面倒なところをうまく省略しながら、コツコツと自分なりの鉢を作り上げていく楽しみが味わえる本作は、日々育っていく多肉植物たちを眺める楽しさと、きわめてシンプルに、ゆるく遊べる負荷の小ささが魅力です。

ちなみに、パブリッシャーの「Ice Water Games」は、焚き火を起こして燃えていくさまを眺めるだけの「Fire Place」というタイトルもリリースしています。開発者も『Viridi』と同じなので、なんかもうそういう作風なのでしょう。

ですが、メジャータイトルではまずやらないニッチなジャンルを遊べるのが、インディーゲームの良いところ。ある意味その最たるものが『Viridi』なのかもしれません。

種を買っていきなりゴージャスな鉢を作るもよし、無課金で気長に遊ぶもよし、鉢を増やしていくつも同時並行して育てるもよしと、意外とプレイスタイルが分かれるのもおもしろいですね。

先述の通り見栄えのする鉢を作るには時間のかかるゲームですが、遊ぶのは毎日数十秒から数分。細く長く続けるにはいいタイトルですよ。