エレクトロニクスに関連する最先端のテクノロジーと製品・サービスが集まるイベント「CES」が、2026年は1月6日から米国・ラスベガスで開幕します。現地の会場では、4日からプレイベントの「CES Unveiled」が始まりました。今年注目したいテック・トレンドを現地からレポートします。CESを主催するCTA(全米民生技術協会)のスポークスパーソンであるブライアン・コミスキー氏にもインタビューしました。

  • CESのプレイベント「CES Unveiled」がラスベガスで1月4日に開催されました

    CESのプレイベント「CES Unveiled」がラスベガスで1月4日に開催されました

2026年注目、アメリカ発「3つのテックトレンド」

近年のCESは、エレクトロニクスに関連する完成された製品やサービスだけでなく、次世代のイノベーティブなテクノロジーがベールを脱ぐグローバルプラットフォームとしても脚光を浴びています。昨年に引き続き、2026年も4,000社を超える企業が出展していますが、うち約40%は米国外から参加しています。来場者の国際色も年々強まる傾向にあり、今年は全体で150カ国以上の参加となりました。筆者のようなメディア関係者も6,500人以上参加しているようですが、確かにプレイベント期間中は特に賑わっています。この数年間はクリエイターの方々も増えています。

  • CESのスポークスパーソン、ブライアン・コミスキー氏にアメリカの最先端テクノロジーのトレンドを聞きました

    CESのスポークスパーソン、ブライアン・コミスキー氏にアメリカの最先端テクノロジーのトレンドを聞きました

CTAのブライアン・コミスキー氏は、テクノロジー分野にも精通する「CESの顔」です。コミスキー氏によると、今年のテックトレンドの軸は大きく3つあります。ひとつはAIを中心とするインテリジェント・トランスフォーメーション(知的変革)、2つめはヘルスケア領域から発展したロンジェビティ(長寿)関連テクノロジー、そして3つめがエンジニアリングの先端技術です。

AI(人工知能)はここ数年、CESの主要テーマのひとつとして扱われてきましたが、今年はそのフェーズが大きく変わりつつあります。AIが単なるコンセプトやソフトウェアにとどまらず、さまざまなプロダクトに実装され、人型のヒューマノイドロボットなど「実体を持つAI」として登場し始めているからです。AIが現実世界に踏み出し、人の仕事や暮らしを具体的に支える未来像が、各社の展示を通じて提示されるイベントになりそうです。

コンシューマーエレクトロニクスが「できること」も拡大している

CESのメインの展示ホールであるラスベガス・コンベンションセンターに、今年はソニーやサムスンといったコンシューマーエレクトロニクスの人気ブランドの姿がありません。代わりに初の試みとして、CESの開催期間中に半導体やAI、量子コンピューティングの主要企業が集まる「CES Foundry」という特別展示が行われます。

「次の産業を形づくる技術」を市場や社会と結びつける実験場と位置付けられたCES Foundryには、NVIDIAやAMD、Quantinuum(クォンティニアム)など、AI半導体や量子コンピューティングの分野で存在感を放つ企業が名を連ねています。従来の家電の見本市とは異なる角度から、CESの重心が産業技術へと移りつつあることを象徴する展示と言えるでしょう。

一方で、CES Unveiledには以前と変わらず、コンシューマー向けのプロダクトやサービスを手がけるエレクトロニクス企業が数多く出展しており、会場は以前と変わらぬ活気にあふれていました。「いわゆるガジェットと呼ばれるプロダクトにも最先端の半導体やAIテクノロジーが組み込まれるようになったからです。CESは今でも、コンシューマーエレクトロニクスの最新事情に触れられるイベントです」とコミスキー氏は熱っぽく語ります。

現代のエレクトロニクスに関連するプロダクトは、強力なエンジンである半導体と、賢い頭脳であるAIテクノロジーの両輪を得て、できることの幅がさらに拡大しつつあります。例えばワイヤレスイヤホンの中にも、スマホにつないで音楽を聴いたり、ハンズフリー通話に使えるだけでなく、リアルタイム翻訳やヘルスケアモニターとしての使い道を備える新しい製品が増えています。

「録音」に特化したPebbleのスマートリング

今年のCES Unveiledの会場で見つけた面白いプロダクトを、いくつかピックアップして紹介します。

まずは、2025年に復活したPebbleのスマートウォッチとスマートリングです。PebbleのIPを買収したFitbitを、さらに買収したグーグルがPebbleOSをオープンソース化しました。その流れから、Pebble創業者のエリック・ミギコフスキー氏が中心となり、PebbleOSを搭載するスマートウォッチを開発しました。

  • Pebbleが今年から出荷を開始するスマートウォッチとスマートリングをCESに出展しました

    Pebbleが今年から出荷を開始するスマートウォッチとスマートリングをCESに出展しました

ディスプレイにカラー電子ペーパーを搭載するラウンド型ケースの「Pebble Round 2」と、スクウェアタイプの「Pebble Time 2」です。Pebbleのウェブサイトですでにプリオーダーが始まっており、価格はTime 2が225ドル(約35,000円)で3月出荷開始予定、Round 2は199ドル(約31,000円)で5月出荷予定です。上位のTime 2には心拍モニター機能が付いています。ファンコミュニティをベースに開発された、合計15,000種類を超えるアプリやウォッチフェイスが楽しめます。

  • スクウェアタイプの「Pebble Time 2」。カラー表示の電子ペーパーディスプレイを採用しています

    スクウェアタイプの「Pebble Time 2」。カラー表示の電子ペーパーディスプレイを採用しています

  • Pebbleのファンコミュニティから、対応するアプリやウォッチフェイスがリリースされています

    Pebbleのファンコミュニティから、対応するアプリやウォッチフェイスがリリースされています

Pebbleはスマートリング「Pebble Index 01」も開発しました。本体にマイクを搭載する「ボイスレコーダー」の機能に特化したスマートリングです。専用モバイルアプリで録音データを管理して、音声をテキストに起こしたり、NotionやNoteのサービスに連携させてテキストファイルの編集もできます。こちらは価格が75ドル(約11,000円)で、出荷開始は3月を予定。

  • ボイスレコーダーの役割に徹した異色のスマートリング「Pebble Index 01」

    ボイスレコーダーの役割に徹した異色のスマートリング「Pebble Index 01」

本体に内蔵するバッテリーはチャージ不要、というかチャージができない割り切り仕様になっています。2~3年間で買い替えながら使ってもらうことが前提の商品だからだそうです。バッテリー切れの時期が近付くとユーザーにアラートが飛び、買い換える際にはディスカウント価格も提示されるそうです。

メンタルヘルスを計測するJTのスマートリング

日本からは、JTの子会社であるMENTAGRAPH(メンタグラフ)と、スマートフットウェアを専門に扱うスタートアップのORPHE(オルフェ)を紹介します。CTAのコミスキー氏も両社をはじめ、CESに出展する日本企業に対して「日本が常に先頭に立ってイノベーションを引っ張ってくれている」と感謝の気持ちを込めて語っていました。

  • メンタグラフの新しいスマートリング「Mentoring2」

    メンタグラフの新しいスマートリング「Mentoring2」

メンタグラフが出展していた製品は、スマートリング「Mentoring2」(メンタリング2)です。装着したユーザーの脈波・皮膚電気活動、加速度/角速度の算出による行動推計と、発汗を内蔵する4つのセンサーで計測して「連続値の蓄積ストレス」を計測するためのリング型デバイス。言い替えれば「継続的な疲労」を専用のモバイルアプリで可視化してくれます。

  • ストレスの状態を測り、モバイルアプリでスコアを表示します

    ストレスの状態を測り、モバイルアプリでスコアを表示します

リングを装着すると、3分間間隔で逐次アプリに生体データが送られます。「自分のストレス状態を知りたい時に素速く、正確な状態が計測できるところが本製品の強み」だとJTの担当者が話していました。本製品はBtoB向けのプロダクトとして、コンサルティングや営業の仕事に就く社員のためのヘルスケアデバイスとして導入する企業に先行提供されてきました。今年の3月からクラウドファンディングを通じて、一般コンシューマー向けの販売開始も計画しているといいます。

短い周期でユーザーの生体データを計測し続けるリングなので、本体に内蔵するバッテリーに一定の容量が必要です。そのため、リングの筐体がやや大きめであることが筆者は気になりました。さまざまな種類のスマートリングが商品化されるなかで、Mentoring2がどこまで独自性を打ち出せるのか注目したいと思います。

健康を足もとから支えるスマートインソール

ORPHEは、モーションセンサーと圧力センサーを内蔵する“スマートインソール”「ORPHE INSOLE」という、斬新なカテゴリーの製品を展開しています。ベータ版のプロダクトが2025年に日本で先行販売され、人気を博したことから増産も行われました。

  • オルフェが商品化した“スマートインソール”「ORPHE INSOLE」

    オルフェが商品化した“スマートインソール”「ORPHE INSOLE」

ORPHE INSOLEは、スニーカーやビジネスシューズなど、さまざまな靴の中敷きとして使えるプロダクトです。加速度・ジャイロなど6軸モーションセンサーと6点の圧力センサーにより、ユーザーの足の動きをリアルタイムに計測できます。歩行の状態をトラッキングしたり、転倒検知にも使えることから、医療機関やリハビリ施設、高齢者介護施設などから好評を得ているそうです。ユーザーの足の形に合わせたカスタムオーダーにも対応。同社は、今後の本格的な海外進出も見据えてCESに出展。6日以降は、本会場に構えるブースでORPHE INSOLEを展示します。

  • ユーザーの歩行状態をアプリから可視化します

    ユーザーの歩行状態をアプリから可視化します

身体の健康年齢が測れる体重計

海外の企業は、WITHINGS(ウィジングス)のスマート体重計「Body Scan 2」が、コミスキー氏が「最新のテックトレンドのひとつ」として挙げたロンジェビティ(長寿)関連の最新プロダクトとして脚光を浴びていました。

  • WITHINGSのスマート体重計「Body Scan 2」

    WITHINGSのスマート体重計「Body Scan 2」

  • バータイプのハンドルと体重計の2ピース構成

    バータイプのハンドルと体重計の2ピース構成

本機は、心電式センサーなどを内蔵するハンドルと体重計が一体になったヘルスケアデバイスです。ハンドルをつかんで体重計に乗り、約90秒間の計測を行うと「高血圧の傾向通知」「代謝・細胞レベルにおける精密評価」「心血管機能の解析」ができることが、本機の“3つのハイライト機能”とされています。

専用のモバイルアプリには3つの測定値をスコア化して、ユーザーの実年齢において理想的な健康状態に対する評価を伝えたり、健康状態改善のためのアドバイスを届ける機能があります。アメリカでは5月に599ドル(約94,000円)で発売を予定するプロダクトです。

  • 心電図の機能も搭載しています

    心電図の機能も搭載しています

やさしい犬型ロボットペット「JENNIE」

TOMBOT(トムボット)は、2017年にアメリカのロサンゼルスに創業したスタートアップです。シニア向けの“子犬型”ロボットペット「MEET JENNIE(ミート ジェニー)」を初めてのプロダクトとしてリリースしました。

  • TOMBOTの創業者件CEO、トム・スティーブンス氏とロボットペットの「JENNIE」

    TOMBOTの創業者件CEO、トム・スティーブンス氏とロボットペットの「JENNIE」

創業者兼CEOのトム・スティーブンス氏は「認知症を患ってしまった私の母が、介護施設に入所する際に愛犬を泣く泣く手放すことになりました。療養を続ける母の心を支えるロボットペットをつくりたいと考えたことが、ジェニーを開発するきっかけになった」とスティーブンス氏は振り返ります。本体はマイクのほか、多数のセンサーが内蔵されています。ジェニーに話かけたり、なでたり抱きかかえたりすると鳴いて答えてくれたり、口もとや目、尻尾を動かしてユーザーとコミュニケーションを図ります。

【動画】リアリスティックな仕草が特徴という「MEET JENNIE(ミート ジェニー)」。ラブラドール・レトリバーがモデルです

すでにジェニーのプロトタイプは米国の介護施設などで実績を積んだことから、BtoB向けにレンタル・サブスク形式のサービスを開始しています。今後は個人のユーザー向けにもBtoC展開を広げるそうです。スティーブンス氏は「犬種はラブラドール・レトリバーからスタートしましたが、今後はユーザーの声を聞きながら増やします。日本のユーザー向けに小型犬も開発したい」と意気込みを語っていました。

現地時間1月6日からCESが本開催を迎えます。Unveiledイベントで紹介しきれなかったエレクトロニクスの先端テックの話題も、引き続き現地からレポートしたいと思います。