2025年も続々と新作インディーゲームが発売され、「時間が足りない!」「身体が2つ3つ欲しい!」と感じるほど、今年も良作が目白押しであった。また、今年夏に京都で開催された「BitSummit the 13th」や、秋の「東京ゲームショウ2025(TGS2025)」では、いずれもインディーゲームの出展数は過去最大規模となり、ますます注目度は高まっている。

筆者がこの1年間でプレイしたインディーゲームは、数多ある作品のうちのほんの一部だが、そのなかでも特に印象的で心に残った3作品をご紹介したい。どの作品も数時間でプレイ可能なので、気になった方はぜひ年末年始のお休み期間に遊んでみてほしい。

まだまだ続く『都市伝説解体センター』の特大ムーブメント!

「2025年を代表するインディーゲーム」といえば、多くの人がこの作品を思い浮かべるだろう。今年2月に発売された、「墓場文庫」が手がけるミステリーアドベンチャー『都市伝説解体センター』だ。筆者も多分に漏れず、大いにハマった。

  • 『都市伝説解体センター』のプラットフォームは、Nintendo Switch、PlayStation5、Steam。ダウンロード版は「決死の1,980円」と、破格の値段も話題になった

    『都市伝説解体センター』のプラットフォームは、Nintendo Switch、PlayStation5、Steam。ダウンロード版は「決死の1,980円」と、破格の値段も話題になった

本作は、主人公の「福来(ふくらい)あざみ」が、怪異、呪物、異界などの調査・解体を行う「都市伝説解体センター」を訪れる場面からはじまる。あざみは、センター長の「廻屋渉(めぐりやあゆむ)」や、先輩の調査員「止木休美(とまりぎやすみ)・通称:ジャスミン」と出会い、都市伝説絡みの依頼を解決していく。

  • 本作の主人公・福来あざみ。巻き込まれ体質な頑張り女子大生で、プレイするうちにどんどん愛着が湧いてくる

    本作の主人公・福来あざみ。巻き込まれ体質な頑張り女子大生で、プレイするうちにどんどん愛着が湧いてくる

  • センター長の廻屋渉。現場の調査はあざみやジャスミンに任せ、廻屋本人は主にリモートで怪異の解体を行う

    センター長の廻屋渉。現場の調査はあざみやジャスミンに任せ、廻屋本人は主にリモートで怪異の解体を行う

物語は、1話にひとつの怪異を解体していくドラマ仕立てで展開する。1話のプレイ時間は、おおよそ1~2時間程度。平日の仕事終わりに1話ずつ大事に進めて、1週間の糧にしよう。そう思いながら、第1話・第2話と進めていったが、第3話あたりから先が気になりブレーキが効かなくなってしまった。というのも、毎話ごとにテーマとなる怪異は解決されるものの、本作の主軸となる大きな「謎」は話数を重ねるごとに深まっていくばかりなのだ。

結果として、第3話~最終話までを夜通し一気にプレイし、クリアまで駆け抜けてしまった。早朝4時の朝日が眩しく光り、1週間の糧を3日で食らい尽くしたうえに生活リズムはぐちゃぐちゃに崩れた。そして、物語を最後まで見届けたファンの「怪異」の皆様なら共感してくれるだろう。クリアして半年以上が経った今も、筆者は『都市伝説解体センター』に情緒をぐちゃぐちゃに狂わされている。

  • ミステリアスかつ妙な色気を(主にデコルテから)放ってくる廻屋渉に、筆者は狂わされ続けている

    ミステリアスかつ妙な色気を(主にデコルテから)放ってくる廻屋渉に、筆者は狂わされ続けている

本作がここまで大きなムーブメントを起こした要因は、ネタバレを配慮したファンの叫びと、公式からの無限の供給がある。本作の結末には、大声で叫び出したくなるような「どんでん返し」が仕込まれているが、ゲームをクリアしたファンたちは誰に強制された訳でもなく、決してその「どんでん返し」を口外しなかった。

「クリアしたけど、この気持ちをどうすればいいか分からない」「助けて!」「無理…」

SNSにあふれた阿鼻叫喚の声に多くの人が触発され、見事に怪異の輪が拡がっていったのだ。

もし未プレイの方がいるのなら、重ねて伝えたい。

「頼むから、初見で、自分で、プレイしてくれ!!」

  • 本作の「SNS調査」でもリアリティあふれる世間の「声」が話題に。投稿に対するあざみやジャスミンのツッコミも多彩でおもしろかった

    本作の「SNS調査」でもリアリティあふれる世間の「声」が話題に。投稿に対するあざみやジャスミンのツッコミも多彩でおもしろかった

もうひとつの要因である、公式からの無限の供給について。開発元の「墓場文庫」チームの皆さんはとにかくサービス精神旺盛で、SNSでの感想に爆速で「いいね」をしてきたり、さまざまなゲームイベントに登壇して制作秘話を語ってくれたりと、ファンを楽しませることに惜しみない愛を注いでくれる。

加えて、彼らと二人三脚で本作を手がけた「集英社ゲームズ」によるゲーム以外での展開も凄まじい。ノベライズや少女漫画誌「りぼん」での連載、オーディオドラマ、コラボカフェ、謎解きイベントなど、追い切れないほどの供給を滝行のごとく浴びせられ続けている。

『都市伝説解体センター』の人気は止まるところを知らず、間違いなく来年以降もこのムーブメントは続くだろう。特に発売1周年となる2026年2月には、「どデカい何かが待ち受けているのでは?」と予想する。

怪異の皆様、2026年もどうかご一緒に『都市伝説解体センター』に狂わされていきましょう。

(c)Hakababunko / SHUEISHA, SHUEISHA GAMES

  • 発売を記念し、東京・秋葉原のヨドバシカメラマルチメディアAkibaにて開催された『都市伝説解体センター』コラボイベントの様子

    発売を記念し、東京・秋葉原のヨドバシカメラマルチメディアAkibaにて開催された『都市伝説解体センター』コラボイベントの様子

  • 2日間限定で謎解きイベント「闇の福引」も実施され、スタッフの皆さんもファンもノリノリで楽しんでいた。来年以降どんなイベントが開催されるのか、期待が膨らむ!

    2日間限定で謎解きイベント「闇の福引」も実施され、スタッフの皆さんもファンもノリノリで楽しんでいた。来年以降どんなイベントが開催されるのか、期待が膨らむ!

『ダレカレ』で気づいた、人それぞれの世界と心の在り方

続いてご紹介するのは、ゲームクリエイターのyona氏が手がける新感覚のインタラクティブノベルゲーム『ダレカレ』だ。今年7月に「講談社ゲームクリエイターズラボ」から発売され、TGS2025の「センス・オブ・ワンダー ナイト 2025」 ではグランプリを受賞。そのほか、The Indie Game Award 2025にもノミネートされるなど、国内外から高い評価を受けている注目作だ。

『ダレカレ』について語る前に、あらかじめお伝えしておきたいことがある。

本作はフィクションではあるが、現実を思い起こさせるような表現を含み、人によっては心に重く感じられることがある。そのため、安心できる環境で、心に余裕のあるときにプレイすることをおすすめしたい。

これはゲーム初回開始時に表示される内容であり、ネタバレを含む本稿を読むうえでも大事にしていただきたい。

  • 『ダレカレ』のプラットフォームは、Nintendo Switch、Steam。価格は600円で、Steamではサウンドトラックとのバンドルも販売中

    『ダレカレ』のプラットフォームは、Nintendo Switch、Steam。価格は600円で、Steamではサウンドトラックとのバンドルも販売中

  • 本稿では、物語の核心に触れるネタバレを含みます。未プレイの方は、ご注意ください

    本稿では、物語の核心に触れるネタバレを含みます。未プレイの方は、ご注意ください

本作では、登場人物たちの視点を通して、人の認識の「歪み」を体験する。基本操作は、ボタンクリックのみ。物語は全3章で構成され、約1時間でクリアが可能だ。

第1章は、少女が目覚める場面からはじまる。寝ぼけ半分で朝の支度をととのえリビングに向かうと、そこにいるはずの父親の代わりに見知らぬおじさんが眠っていた。

「お父さんはどこなの?」「おじさんは誰なの?」「一体なにが起きているの?」

少女を介してプレイヤーにも不安が募り、その焦りがゲームプレイに表れてくる。「食事をする」「ドアを開く」「電話をかける」といった単純な動作すらおぼつかなくなり、不穏な空気が流れる。

  • リビングのソファに横たわる、見知らぬおじさん。ゲーム開始時は、ホラーかサスペンスのような緊張感がある

    リビングのソファに横たわる、見知らぬおじさん。ゲーム開始時は、ホラーかサスペンスのような緊張感がある

  • 不安に苛まれる少女の視界は、歪み、揺らぎ、その焦りがプレイヤーの操作にも表現される

    不安に苛まれる少女の視界は、歪み、揺らぎ、その焦りがプレイヤーの操作にも表現される

第2章・第3章と進んでいくと、その少女が実は老齢の女性で、認知機能において何かしらの障がいを抱えており、パートナーの男性を「お父さん」や「見知らぬおじさん」として認識していたことが明らかになる。

先述したように、本作のテーマは人によっては非常に重く心にのしかかり、つらい感情を思い起こさせるだろう。筆者にとっても決して他人事ではなく、プレイをしながら涙が止まらなかった。ただ、この作品を繰り返しプレイして思うのは、「人それぞれの世界がある」ということ。

食の好みが分かれたり、映画を観て違った感想を抱いたりするのと同じように、例えば「リンゴは赤い」という認識も人それぞれあっていいはずなのだ。自分以外の人にとってリンゴが赤くとも、私にとってのリンゴは白い。時間は不可逆で、今を生きることが共通認識として「正しい」ことであろうと、逆行して過去を遡り生きることは決して「間違い」ではない。

人の認識の「歪み」を描いた本作に触れ、「その人にとっての世界の見え方」のひとつを追体験できたことで、自分の、そして自分以外の人に対する「心の寄り添い方」を知れたように思う。

ゲームプレイに限らず、2025年さまざま体験した出来事のなかでも、『ダレカレ』がもたらした心の揺らぎは非常に忘れがたいものがあった。

  • 筆者が涙したワンシーン。「にんじんを切る」という単純な動作もおぼつかず、一体どうすればと悲しい気持ちになったところで、そっと「助け」が入った。こんな風に人に寄り添えたら、と思う

    筆者が涙したワンシーン。「にんじんを切る」という単純な動作もおぼつかず、一体どうすればと悲しい気持ちになったところで、そっと「助け」が入った。こんな風に人に寄り添えたら、と思う

  • 雨上がりの散歩シーン。「共に歩む」ことの難しさと喜びを同時に感じる、素晴らしいゲームデザインだった

    雨上がりの散歩シーン。「共に歩む」ことの難しさと喜びを同時に感じる、素晴らしいゲームデザインだった

(c) TearyHand Studio / Kodansha Ltd.

実感をもって味わう遠い過去の出来事。『The Berlin Apartment』

最後にご紹介するのは、ドイツのゲームスタジオ「Blue Backpack」が企画・製作するアドベンチャーゲーム『The Berlin Apartment』だ。「PARCO GAMES」のパブリッシングタイトル第1弾として、今年11月に発売された。

本作の舞台は、ドイツ・ベルリンにあるアパートメント。120年におよぶ歴史を刻む一室には、かつてそこに暮らしていた住人たちの「遺物」が眠っていた。誰かが誰かに宛てた手紙や、瓦礫に埋もれた星のオーナメントなど、プレイヤーは遺物から紡がれる過去の物語を、その時代に生きた住人ひとりひとりの視点で追体験していく。 「私の前に、誰がここに住んでいたんだろう?」という何気ない想像をゲームに落とし込んだ作品だ。

  • 『The Berlin Apartment』のプラットフォームは、PlayStation5、Steam、Xbox。価格は2,800円で、今後はNintendo Switchでも発売予定だ

    『The Berlin Apartment』のプラットフォームは、PlayStation5、Steam、Xbox。価格は2,800円で、今後はNintendo Switchでも発売予定だ

本作において印象的だったのは、「同じアパートから見える違う景色」だ。第二次世界大戦の傷跡が残る廃墟、東西を分かつベルリンの壁、コロナ禍によるロックダウンで静まり返る街角。時代ごとに繊細かつ丁寧に描かれたアパートからの情景は、一人称視点も相まって、プレイヤーを「当事者」としてグッと引き込んでくる。

  • 1989年のアパートからの景色。東西を隔てる「ベルリンの壁」や、国境警備隊の監視塔が見える

    1989年のアパートからの景色。東西を隔てる「ベルリンの壁」や、国境警備隊の監視塔が見える

  • 物語の主軸となる2020年のアパートからの景色。コロナ禍によるロックダウンの最中で、街行く人もまばらだ

    物語の主軸となる2020年のアパートからの景色。コロナ禍によるロックダウンの最中で、街行く人もまばらだ

また、作中の何気ない操作に込められた、ゲームプレイの工夫にも心が躍った。例えば、ベルリンの壁を超えて届けられる紙飛行機。手紙の内容を読み上げながら、折り方の手順をひとつひとつプレイヤーに操作させることで、「手づくり」の温もりを感じさせてくれる。いざ壁の向こうへ紙飛行機を飛ばすときも、その工程があるからこそ、「あの人に届けたい!」という想いがより強くなるのだ。

  • 窓際に咲く花からはじまった、紙飛行機の送り合い。毎回違ったかたちをチョイスして一生懸命に折る少年心が健気で可愛らしかった

    窓際に咲く花からはじまった、紙飛行機の送り合い。毎回違ったかたちをチョイスして一生懸命に折る少年心が健気で可愛らしかった

  • 紙飛行機を飛ばすのには、絶妙なコントロールが要求される。これがなかなか難しいのだが、数回チャレンジすると「スキップ」することができて、プレイングは快適だった

    紙飛行機を飛ばすのには、絶妙なコントロールが要求される。これがなかなか難しいのだが、数回チャレンジすると「スキップ」することができて、プレイングは快適だった

各時代の住人ごとにゲームプレイはさまざまに変化する。なかでも筆者が特に印象的だったのは、1945年の「静かな夜」だ。主人公の少女は、藁や松ぼっくりでできたオーナメントを壁に掛けたり、ろうそくに火を灯したりして、部屋中をクリスマスの飾りつけで彩っていく。どこに何を飾るのかはプレイヤーの自由で、ささやかな挙動ながらも幸せなワクワク感があった。

  • バスケットいっぱいに詰まった、たくさんの飾り。忘れていたクリスマスのワクワク感を思い出した

    バスケットいっぱいに詰まった、たくさんの飾り。忘れていたクリスマスのワクワク感を思い出した

  • 部屋のどこに何をどう飾るのか、プレイヤーの自由に操作できることが作品世界への没入感を高めてくれる

    部屋のどこに何をどう飾るのか、プレイヤーの自由に操作できることが作品世界への没入感を高めてくれる

しかし、メインのクリスマスツリーの飾りつけを求めて少女がアパートを探索しはじめたところで、一気に胸が締めつけられた。第二次世界大戦の戦火によって廃墟と化したアパートは、壁が崩れ落ち、瓦礫には雪が降り積もっている。隙間風が吹きすさぶなか、少女が見つけたツリーの飾りつけは、心温まるクリスマスとは程遠いものばかりだった。

純真無垢な子どもの視点で見つめる、温かくも寂しい戦後のクリスマス。どこかで本当にあったかも知れない遠い過去の出来事を、こんなにも実感を持って味わえるのは、ゲームプレイの体験ならではだった。

冒頭でも述べたように、本作は「PARCO GAMES」のパブリッシングタイトル第1弾の作品である。本作をプレイしたことで、今後どういったゲームタイトルが「PARCO GAMES」から発売されていくのか、新たな展開に期待が高まった。

(c)btf

  • 1945年のアパートからの景色。温かなクリスマスから一変し、見るも無惨な情景がプレイヤーの目に飛び込んでくる

    1945年のアパートからの景色。温かなクリスマスから一変し、見るも無惨な情景がプレイヤーの目に飛び込んでくる

  • 未だ帰らない父の勲章をクリスマスツリーの飾りつけにする少女。あまりの切なさに目が潤んだ

    未だ帰らない父の勲章をクリスマスツリーの飾りつけにする少女。あまりの切なさに目が潤んだ

2026年も新作インディーゲームの発売が山ほど控えており、どんな新しい体験が待ち受けているのか楽しみで仕方がない。皆さんも、来年もまた素敵なゲーミングライフをお過ごしください!