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セイコーウオッチの展覧会「からくりの森 2025」を見てきた。表参道で開催中

Updated NOV. 10, 2025 17:42
Text : 青木淳一
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機械式時計の鼓動を、芸術として感じる森へ――。 セイコーウオッチによる展示イベント「からくりの森 2025」が開催中だ。ここでは、展示作品の中からいくつかをピックアップして、写真と動画を交えて紹介しよう。

機械式腕時計の動きや音「からくりの森 2025」

「からくりの森 2025」の展示テーマは、「機械式腕時計の動きや音からインスピレーションを得たインスタレーション作品」。その言葉通り、昨年(2024年)の「からくりの森 2024」に比べて、機械式腕時計の動きや音によりフォーカスした内容で、メカニカルなギミックにも、さらに力が入っている印象だ。開催要領は以下の通り。

  • 「からくりの森 2025」の会場となっているLIGHT BOX STUDIO

    「からくりの森 2025」の会場となっているLIGHT BOX STUDIO

  • 会期:2025年11月5日~11月18日 11時~20時(会期中は無休、入場は19時45分まで)
  • 入場料:無料
  • 会場:東京都港区青山 LIGHT BOX STUDIO

時間を捕える「プワンツ|PUWANTS」

会場に入ると、まず、水と空気とフロートを使ったインスタレーション作品「プワンツ|PUWANTS」が迎えてくれる。作者はアーティストの小松宏誠氏と、デザイナーでありデザイン研究者の三好賢聖氏だ。

  • 作品名「プワンツ|PUWANTS」。シリーズで製作されていて、2024年までに計12作が製作済み

    作品名「プワンツ|PUWANTS」。シリーズで製作されていて、2024年までに計12作が製作済み

水槽の底から少しずつ空気が出ていて、その上のお皿状の部分にに溜まる。この空気が一定量になると、お皿のバルブから一気に空気が放出され、泡(あぶく)やリングになって上がっていくのだ。まるで、秒針が一回転すると分針がひと目盛進むように。

【動画】上がっていく泡のリングを下から見上げるのが、神山氏おすすめのアングル

小松氏「空気が放出される間隔は精確な時を刻む場合もあるし、そうでないときもあります。時間という変化し続けるものを捕らえるのが時計だとしたら、身体的に捕らえるってどういうことだろう――みたいなことを考えます。いろんな形の泡が出るようになっていて、とってもキレイなリングが出たときは当たり(笑)とか、そんな風に楽しんでいただけたらうれしいです」

  • 作者の小松宏誠氏

    作者の小松宏誠氏

三好氏「今回はPUWANTSシリーズの新作として、機械式腕時計の輪列(ゼンマイからの動力を伝えるために複数の歯車が連なる構造)から着想を得た作品も作りました。水面に浮かんだガラスのお花が輪列の歯車のように正転反転するというもの。こちらの動きも、ぜひ会場でご覧ください」

  • 作者の三好賢聖氏

    作者の三好賢聖氏

  • こちらも「プワンツ|PUWANTS」シリーズの新作。花はガラス製で、輪列を模した動きをする

    こちらも「プワンツ|PUWANTS」シリーズの新作。花はガラス製で、輪列を模した動きをする

ゼンマイ=時間という発想「螺旋の律動」

1枚のステンレス板を長く切り出し、螺旋(らせん)状に組み付けたメカトロニクスオブジェクト。動画に映っているように、内部は4方向に伸びた多数のアームが支えている。このアームは、制御プログラムによって伸縮・螺旋を生物のようにたわませていく。

  • 作品名は「螺旋の律動」。機械式時計の調速機に使用されるテンプと、ひげゼンマイがモチーフ

    作品名は「螺旋の律動」。機械式時計の調速機に使用されるテンプと、ひげゼンマイがモチーフ

【動画】動画の最後、ぶるん、と柔らかそうに震えるのが気持ちいい

機械式時計の精度を司る調速機のひげゼンマイから着想を得ており、この形はテンプをピンセットでつまんだとき、ひげゼンマイが縦に伸びた状態をイメージしたもの。スタンド部に影が落ちることでテンプの形にそっくりになるのも、時計好きなら思わずニヤリとするポイントだ。

作者はデザインエンジニアリング企業「Spline Design Hub」(スプライン・デザイン・ハブ)。代表の神山友輔氏にお話を伺った。

  • 製作した「Spline Design Hub」(スプライン・デザイン・ハブ)代表の神山友輔氏

    製作した「Spline Design Hub」(スプライン・デザイン・ハブ)代表の神山友輔氏

  • 「Spline Design Hub」のメンバーの方々

    「Spline Design Hub」のメンバーの方々

神山氏「この作品は、私と阪本真、村山覚、中野文哉、計4名が中心になって製作しました。機械式時計は駆動させる力も、精確性を司るのもゼンマイ。つまり、ゼンマイはもはや時間であると考え、時の可視化に挑戦しました」

  • スタンド部に影が落ちると、テンプの形に!

    スタンド部に影が落ちると、テンプの形に!

  • 実際のひげゼンマイ。この形がモチーフとなっている

    実際のひげゼンマイ。この形がモチーフとなっている

神山氏「また、テンプをピンセットでちょっと持ち上げると、縦に伸びて螺旋状になると同時に、元気に踊り出す(伸縮する)のですが、そんなシーンを感じさせる演出も入れています」

小さな針の小さな物語「時の交わり」

「からくりの森 2025」には、外部から2名と1社、そしてセイコーウオッチから、社内コンペを勝ち抜いた2名のデザイナーが参加している。その2名は、檜林勇吾氏と杉田尚弥氏。檜林氏はグランドセイコーの「Tokyo Lion TENTAGRAPH」を、杉田氏はおもに「PROSPEX」シリーズを手がけるデザイナーだ。

  • 作者はセイコーウオッチのデザイナー、檜林勇吾氏

    作者はセイコーウオッチのデザイナー、檜林勇吾氏

檜林氏が手がけた作品のタイトルは「時の交わり」。秒針の先端に極小の人形を付けた機械式時計のムーブメントを2つ並べたものだが、お互いの秒針の先端がすれ違うほんの一瞬に、針先の人形が最接近。しかし、二人はまた離れていく。

【動画】出会うときの期待感と対照的な別れ際の寂寥感(せきりょうかん)が、なんともいえない

人生とは、そんな小さな物語の繰り返し――。まるで、作品がそう語りかけてくるようだ。それはつい最近、私にそんなことがあったから、余計にそう感じるのだろうか。なお、台座の部分にはルーペが据えられており、これをのぞくと、すれ違う瞬間の小さな時の交わりをより明瞭に確認できる。

  • 作品名「時の交わり」。時計のムーブメントが2つ並んでいるだけに見えるが、手前のルーペをのぞくと……

    作品名「時の交わり」。時計のムーブメントが2つ並んでいるだけに見えるが、手前のルーペをのぞくと……

  • こんなに小さな物語が繰り広げられていた! ちなみに針と人形は一体成型

    こんなに小さな物語が繰り広げられていた! ちなみに針と人形は一体成型

檜林氏「私たちプロダクトデザイナーは、腕時計を道具というよりも、人生の相棒、あるいは一緒に時を歩む人生の一部、そんな感覚でデザインしています。つまり、時計の針はただ時間の計測値を示しているのではなくて、使う人の時や人生なんですね。

そうした感覚は今まで時計のケースの中に閉じ込められていましたが、今回、ムーブメントをケースから取り出してみました。それを見てどのように感じるかは、見る人によって変わってくると思います。ぜひご覧いただいて、色々なことを感じ取ってください」

会場にはほかにも、興味深い作品の数々が展示されている。

  • 6振動、8振動、10振動の機械式ムーブメントの音(秒針の音や回転錘の音)を組み合わせて音楽を奏でる作品「時のムーブメント」。作者は三好賢聖氏

    6振動、8振動、10振動の機械式ムーブメントの音(秒針の音や回転錘の音)を組み合わせて音楽を奏でる作品「時のムーブメント」。作者は三好賢聖氏

  • 秒針、分針、時針が砂の上に枯山水のような模様を描く「時の軌跡」。作者はセイコーウオッチのデザイナー、杉田尚弥氏

    秒針、分針、時針が砂の上に枯山水のような模様を描く「時の軌跡」。作者はセイコーウオッチのデザイナー、杉田尚弥氏

グッドデザイン賞などアワードを受賞したプロダクツなどもディスプレイされている。それらはぜひ、ご自身の目でご覧いただきたい。タイミングしだいでは、作者の方々と直接お話しすることもできるだろう。時計に対する興味と視点の新しい扉が、またひとつ開くはずだ。

  • 2015年のグッドデザイン・ベスト100に選出されたセイコー・アストロン(SBXB003)

    2015年のグッドデザイン・ベスト100に選出されたセイコー・アストロン(SBXB003)

  • 2022年、グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞した防塵型掛け時計(KS474M)。このモデルは1964年製で、すでに製造を終了しているが、後継機は現在も販売中

    2022年、グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞した防塵型掛け時計(KS474M)。このモデルは1964年製で、すでに製造を終了しているが、後継機は現在も販売中

  • セイコー パワーデザインプロジェクトから初のコレクションとして、12月に限定発売されるブレスレット感覚の小型腕時計の実機も展示中

    セイコー パワーデザインプロジェクトから初のコレクションとして、12月に限定発売されるブレスレット感覚の小型腕時計の実機も展示中


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