日本のビジネスを牽引する著名なCxO(Chief x Officer)の皆さんが今、何を考え日々ビジネスに励んでいるのかを深掘りするべくスタートした本連載。聞き手は私、「Japan CxO Award」の主催を務め、CxO人材採用事業に日々携わるBNGパートナーズの代表取締役・蔵元二郎が務めます。
初回は、楽天グループの常務執行役員Group CCuO(Chief Culture Officer)を務める、小林正忠さんにお越しいただきました。
「セイチュウさん」と呼ばれ、誰もが親しみやすい人柄。楽天の創業メンバーで、楽天市場の事業責任者を経て、米州本社社長、アジア本社社長を歴任。6人から始まった楽天が、世界30カ国・地域に拠点を持ち、約3万人の従業員を抱えるグローバルカンパニーに成長するまで、楽天グループを牽引してきた者として正忠さんが思う、活躍するCxOの条件や、AI時代の未来予測、常に忘れない大切な基本中の基本を、じっくりうかがいました。
CxOに必須とされる「CEO視座」を身につける方法
――本日はよろしくお願いします。実は今日、緊張しています(笑)
なんでですか〜(笑)。この間あるイベントに登壇した際、Japan CxO Awardの審査員に就任されたのを見ましたと何名かに言われましたよ。ありがとうございます。
――こちらこそありがとうございます! 改めて、活躍するCxOが求められていることは、どのようなものだと思いますか?
ある専門分野の知見を持ちながら、CEOが見ている視座で、つまり全社視点で見ていけることでしょうか。
楽天で言えば『三木谷の視座で見ることができる能力』がマストだと感じます。かつて日本企業の組織は、責任の所在があいまいなことも多かったように思いますが、CxOに就任するということは、会社の最高責任者になるということ。『知らない』が許されません。それまで『マーケティングの部門長』だった方がCMO(Chief Marketing Officer)になると、マーケティングの知見を持ちながら、会社の最高意思決定をしているCEOの視座で事業を見ていくポジションになります。グローバル視点では、海外企業と話をするときの窓口も明確になるので、良い傾向だと思います。
――「CEO視座」は先天的な素質と、後天的に身につけられるもの、どちらが大きいのでしょうか?
僕は後天的なものが大きいと思います。立場が人を作るというか、どのポジションにいるのかで見えるものは変わりますよね。登山でたとえるなら、山のふもとでは、目の前に咲く花が気になる。中腹まで登ると、岩が気になる。そして山頂にたどり着くと、向こうの山々が目に入る。それと同じで、立っている位置で見えるものは自然と変わります。
――立っている位置を変えるには、どのようなことをするのが大事ですか?
実際にどれだけ行動し、いただいた機会を最大限生かし、学びに変える経験を得たかに尽きると思います。例えば楽天の公用語が英語化されたタイミングを振り返ると、僕自身、当時英語が得意ではなかったのに米州本社に行ったり、ハーバード・ビジネス・スクールの経営層養成プログラム「AMP(アドバンスド・マネジメント・プログラム)」に8週間参加したりと(笑)、いろいろなことがありました。
そこで、今まで出会ったことがなかったグローバルエグゼクティブと毎晩話をして、彼らがどんな景色を見ているのか直接聞いて、勉強させてもらった経験が非常に大きかった。僕にだけでなく、これまで三木谷は30代のメンバーにヴィッセル神戸や楽天イーグルスの社長を任せる機会を提供するなど、ちょっとどころじゃないストレッチをすることがあります。けれど、一国一城の主の経験は、人を別人に変える。『目の前の営業目標を達成できたからいいや』ではなく、会社の財務や経理も理解して、どんな意思決定が必要なのかを知ることで、視座は自然と上がりますよね。
――その機会がなかなか回ってこない、という方がすべきことは?
経営層の話を聞く機会があれば、そこでしっかり学ぶことでしょうか。楽天の場合は、週に一度開催されている全従業員が参加する会議『朝会』を『“CEOめがね”を手に入れられる場』と意味づけています。
朝会では、事業の進捗やレポートももちろんありますが、三木谷が見てきた景色の話を、三木谷自身が語ります。三木谷は『情報は開くものだ』という信念があるので、自分と同じ情報を現場が持ってくれていたら、自分と同じスピードや質で意思決定ができると、情報を共有します。海外の仲間たちから情報収集した最新の話、国際的な会議で行った対話、各分野を牽引するキーマンとの話など、世界中を高い視座から見ている人たちの景色を教えてくれる。すると、現場の従業員は、担当事業やサービスの未来を、より高い視点で考えられるようになります。

