2025年6月6日11時より国内でAMDの最新ミドルレンジGPU「Radeon RX 9060 XT」の発売がスタートする。ビデオメモリが16GB版と8GB版が用意されており、それぞれ349ドル、299ドルだ。ライバルのGeForce RTX 5060 Ti(16GB版)とGeForce RTX 5060も含め、実力を検証していこう。比較的低価格でビデオメモリ16GBを搭載しているという価値がどこまであるのか注目したい。

  • 今回検証に使用したのはPowerColorの「Reaper AMD Radeon RX 9060 XT 16GB GDDR6」

    今回検証に使用したのはPowerColorの「Reaper AMD Radeon RX 9060 XT 16GB GDDR6」

AMDは2025年5月21日、新ミドルレンジGPU「Radeon RX 9060 XT」を発表した。RX 9070シリーズと同じく同社の最新アーキテクチャ「RDNA 4」を採用し、TSMC N4Pプロセスで製造される。ワールドワイドでの発売は6月5日だが、日本では6月6日11時からのスタートだ。

Radeon RX 9060 XTはビデオメモリにGDDR 6 16GB版と8GB版が用意されている。16GB版の価格目安は349ドル、8GB版は299ドルで日本での価格は発表されていないが、549ドルのRadeon RX 9070が115,000円前後で販売されていることを考えると、16GB版は7万円台、8GB版は6万円台が中心になるのではないだろうか。

ライバルとなるGeForce RTX 5060 Tiは16GB版の実売価格が86,000円前後から、8GB版が65,000円前後からと考えると、絶妙な価格設定と言えそうだ。性能が拮抗していれば、お得感はある。

スペック面に目を向けるとRadeon RX 9060 XTは、ビデオメモリ容量以外はほとんど共通だ。上位のRT 9070 XTからCPやSP、Accelerator類、メモリーバス幅、Infinity Cachは半分に。その分、消費電力は大きく下がっており、16GB版で160W、8GB版で150Wと補助電源は8ピン×1基で済んでおり、取り回しはラクになった。推奨電源も450W以上なので、幅広い環境で増設しやすいカードと言える。

Radeon RX 9000シリーズのスペック
GPU名 RX 9070 XT RX 9070 RX 9060 XT
アーキテクチャ RDNA 4 RDNA 4 RDNA 4
CU 64 56 32
SP 4096 3584 2048
Ray Accelerator 64 56 32
AI Accelerator 128 112 64
ゲームクロック 2000MHz 2070MHz 2530MHz
ブーストクロック 2970MHz 2520MHz 3130MHz
搭載メモリー GDDR6 16GB GDDR6 16GB GDDR6 16GB/8GB
メモリーバス幅 256bit 256bit 128bit
Infinity Cach 64MB 64MB 32MB
PCI Express Gen 5 x16 Gen 5 x16 Gen 5 x16
カード電力 (W) 304 220 160/150
補助電源 8ピン×2 8ピン×2 8ピン×1
価格目安(発表時) 599ドル 549ドル 349/299ドル

RDNA 4のアーキテクチャについては「AMD、Radeon RX 9070 XT/9070の詳細を公開 - 初のRDNA 4世代GPUがリリース秒読み」、上位モデルであるRX 9070 XT/9070の性能については「Radeon RX 9070 XTと9070を試す - GeForce比でも優秀なゲーム性能、価格次第で化ける?」を確認してほしい。

RX 9070/9060シリーズの大きな特徴は、 FSR 4(FidelityFX Super Resolution 4)への対応だろう。FSRはこれまでAMD以外のGPUでも使える汎用的なアップスケーラー+フレーム生成技術だったが、FSR 4はRX 9070/9060シリーズのAI Acceleratorが必須となる。RTX 50シリーズが必要になるDLSS 4と同じような形だ。FSR 4にはDLSS 4のようなマルチフレーム生成機能は備えていないが、FSR 3.1よりも高画質化を実現している。FSR 4は現在30タイトル以上、2025年には75タイトル以上が対応予定だ。

  • RX 9070/9060シリーズだけで使えるFSR 4。従来のFSR 3.1に比べて画質が向上している

  • FSR 4は現在30タイトル以上が、2025年中には75タイトル以上が対応予定としている

性能テスト前にPowerColorの「Reaper AMD Radeon RX 9060 XT 16GB GDDR6」を紹介しておこう。なお、Radeon RX 9060 XTはAMDのリファレンスモデルは用意されていない。

  • ブーストクロックは3230MHzと定格の3130MHzから若干オーバークロックされていた

  • 2連ファンを採用している

  • 補助電源は従来の8ピン×1と古めの環境でも使いやすい

  • 裏面にはバックプレートを搭載

  • 映像出力はDisplayPort 2.1a×2、HDMI 2.1b×1の3系統だ

マルチフレーム生成で超重量級ゲームでも4Kで快適に遊べるパワー

さっそく、性能チェックに移ろう。テスト環境は以下の通りだ。比較対象としてRadeon RX 9070 XT、GeForce RTX 5060 Ti(16GB版)、RTX 5060を用意した。ドライバに関しては、Radeon系はレビューワ用に配布された「Adrenalin Edition 25.10.09.01」、GeForce系は「Game Ready 576.52」を使用している。

【検証環境】
CPU AMD Ryzen 7 9800X3D(8コア16スレッド)
マザーボード ROG CROSSHAIR X870E HERO(AMD X870E)
メモリ G.SKILL TRIDENT Z5 neo RGB F5-6000J2836G16GX2-TZ5NRW(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2)
システムSSD Micon Crucial T700 CT2000T700SSD3JP(PCI Express 5.0 x4、2TB)
CPUクーラー Corsair NAUTILUS 360 RS(簡易水冷、36cmクラス)
電源 Super Flower LEADEX III GOLD 1000W ATX 3.1(1,000W、80PLUS Gold)
OS Windows 11 Pro(24H2)

まずは、3D性能を測定する定番ベンチマークの「3DMark」から見ていこう。

  • 3DMark

注目はRTX 5060 Tiとのスコアだろう。Time Spy Extreme、Stell NomadというDirectX 12ベースのテストではRX 9060 XTがわずかだが上回った。ただ、RDNA 4アーキテクチャでレイトレーシング性能を強化したとは言え、レイトレーシング処理を含むSpeed WayではRTX 5060も下回ってしまった。ここはちょっと寂しいところだ。

続いて、実際のゲームに移ろう。まずは、アップスケーラーやフレーム生成を使わずに試すタイトルとして定番FPSの「オーバーウォッチ2」、マルチフレーム生成のないタイトルとしてハンティングアクション「モンスターハンターワイルズ」の公式ベンチマークを試そう。オーバーウォッチ2はbotマッチを実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。

なお、今回DLSS SR/FSR SRという表記はSuper Resolutionの略で、モンスターハンターワイルズだけは画質プリセットの設定に従っている、それ以外のゲームではすべて「バランス」設定だ。FRはFrame Generationの略でフレーム生成を指す。MFGはMulti Frame Generationの略でDLSS 4のマルチフレーム生成を指し、1フレームに対して3枚の生成をMFG x4と表記している。

  • オーバーウォッチ2

  • モンスターハンターワイルズ(高)

  • モンスターハンターワイルズ(中)

オーバーウォッチ2は、従来からのラスタライズ性能比較と言える。RTX 5060 Tiに対して12~18%ほどフレームレートが低かった、しかし、モンスターハンターワイルズでは逆転する。22~40%もフレームレートが高い。RadeonやFSRへの最適化が高いタイトルでは余裕で上回れるということだろう。RTX 5060はビデオメモリが8GBしかないためか16GB以上の容量を求める画質ウルトラ設定では途中でフリーズしてしまう。ここもRX 9060 XT(16GB版)の強みと言える。一応RTX 5060との性能差を見るため、画質を中設定まで落とした結果も掲載する。その差は歴然だ。

続いてFSR 4およびDLSS 4のマルチフレーム生成に対応したゲームを実行していこう。「マーベル・ライバルズ」、「The Last of Us Part II Remastered」、「アサシン クリード シャドウズ」を用意した。また、重量級の定番として「サイバーパンク2077」も試す。このゲームはFSR 3/DLSS 4対応だ。

マーベル・ライバルズは訓練場の一定コースを移動した際のフレームレート、The Last of Us Part II Remasteredはジャクソンの一定コースを移動した際のフレームレート、アサシン クリード シャドウズはゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレート、サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定している。

GeForce系については通常のフレーム生成(1フレームに対して1フレームの生成)とマルチフレーム生成の両方を掲載する。マルチフレーム生成のないRadeonの条件に近い結果も見るためだ。

  • マーベル・ライバルズ

  • The Last of Us Part II Remastered

  • アサシン クリード シャドウズ

  • サイバーパンク2077

マルチフレーム生成を有効にするとRTX 5060 Ti/5060は、RX 9060 XTを上回れるが、通常のフレーム生成の結果では逆転するという傾向だ。マルチフレーム生成に対応しないゲームでは、RX 9060 XTとRTX 5060 Tiはかなりよい勝負になりそうだ。ただ、すべての光源の経路(パス)を再現するパストレーシング処理が入るサイバーパンク2077では、レイトレーシングに強いRTX 5060 Tiが通常のフレーム生成であっても上回っている。同じく重めのレイトレーシング処理が入るアサシン クリード シャドウズの4KでもRTX 5060 Tiは通常のフレーム生成でRX 9060 XTとフレームレートが並んでおり、どこまでゲームがレイトレーシング処理を入れているかで力関係は変わってきそうな気配はある。

RDNA 4で強化されたAI性能もチェックする

AI処理はどうだろうか。LLM(大規模言語モデル)の処理性能を見るProcyon AI Text Generation Benchmark、画像生成速度からスコアを出すProcyon AI Image Generation Benchmarkを試した。

  • Procyon AI Text Generation Benchmark

  • Procyon AI Image Generation Benchmark

RDNA 4でAI性能は強化されているが、Windows環境でのAI最適化が進んでいるGeForceには及ばないというところだ。画像生成ではRT 9060 XTはRTX 5060よりも時間がかかってしまう。ここはよりRadeonの性能を発揮できる環境が整うのを待つ必要があるだろう。ただ、AI Text Generationで大容量のビデオメモリを必要とするLlama-2-13Bでは、RX 9060 XTがRTX 5060を上回った。処理内容によっては16GBのビデオメモリが効くことある、というのが分かるポイントだ。

消費電力もRTX 5060 Tiと同クラス

ここからカード単体の消費電力をチェックしよう。ビデオカードの消費電力を実測できるNVIDIAの専用キット「PCAT」を使用した。サイバーパンク2077の各解像度での消費電力を測定している。

  • 消費電力

RX 9060 XTはカード電力が160Wなので、ほぼスペック通りと言える結果だ。消費電力についてもRTX 5060 Tiと同クラスと言える。RX 9070 XTはカード電力304Wだが、今回テストに使ったのが高OCモデルなので消費電力も高くなった。

と、ここまでがRX 9060 XTのテスト結果だ。“マルチフレーム生成を使っていない状況”という条件は付くが、RTX 5060 Tiと勝ったり負けたりと同クラスの性能を実現している。実際に発売されないと分からないが、これで実売価格は1万円程度は下回る可能性があり、ミドルレンジGPUとして人気が出そうな気配だ。ビデオメモリが16GBあれば将来的な安心感もある。RX 9070/9060シリーズでRadeonが盛り返しているのはうれしいところだ。