警察官などを装って電話をかけ、金品をだまし取る特殊詐欺の被害が拡大している。この1年ほどの間に、詐欺電話の対象が固定電話ではなく携帯電話にシフトし、世代を問わず狙われる危険性が高まっている。東京都における特殊詐欺の被害金額も、5月の時点ですでに2024年を上回るなど、被害の拡大に歯止めがかかっていない。

「携帯電話が特殊詐欺の入り口になっている」という状況に危機感を感じた携帯電話キャリア4社と警視庁が5月23日、「ストップ!詐欺」共同宣言を発表。詐欺の手口を知って対策を講じることの大切さや、手持ちの携帯電話でできる被害防止対策をSNSや動画などを用いて広報することで、官民が協力して特殊詐欺の根絶に取り組むことを表明した。

  • 官民が協力して特殊詐欺の根絶に取り組むべく、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社が共同で「ストップ!詐欺」共同宣言を発出した。左端はピーポくん

  • 「ストップ!詐欺」共同宣言

特殊詐欺の電話が固定電話から携帯電話にシフトしている

電話をかけて巧妙な手口で金品をだまし取る特殊詐欺の被害は、年々拡大している。2024年、東京都内の特殊詐欺の認知件数は3,494件(前年比+576件)、被害総額は約153億1,000万円(前年比+71億7,000万円)と、いずれも過去最悪となったという。今年は、5月の時点ですでに2024年を上回る被害が出ているそうだ。

  • 特殊詐欺対策を担当する警視庁の鎌田徹郎副総監。特殊詐欺の被害が急拡大していることに危機感を募らせている

この要因の1つが、これまで固定電話にかかってきていた特殊詐欺の電話が、2024年夏ごろから急速に携帯電話にシフトしていること。これにより、在宅の機会が多い高齢者だけでなく、年齢層を問わずターゲットとなり、警察官を装う手口の巧妙化もあって被害が拡大したとしている。被害は10代や20代の若者にも及んでいるという。

この状況を受け、携帯電話を利用しているユーザーが特殊詐欺被害に遭わないよう、詐欺被害防止対策を提供するとともに、対策の広報・啓発活動を進めるべく、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社が共同で「ストップ!詐欺」共同宣言を発出した。

  • NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社が共同で特殊詐欺撲滅への取り組みを強化する

  • 共同宣言に出席した4キャリアの代表者

  • 各キャリアの代表者が、鎌田徹郎副総監に特殊詐欺撲滅への取り組みを説明

  • キャリアの担当者は、自社の通信サービスが特殊詐欺に悪用されていることは痛恨の極みとした

具体的な被害防止対策として、各キャリアは以下のような取り組みを進める。

迷惑電話、迷惑メール/SMSによる詐欺被害防止対策

フィッシング詐欺などに使われる迷惑メール/SMSを自動検知し、受信拒否をするサービスを提供。迷惑電話が疑われる発信者番号からの着信時には警告を表示したり、着信拒否ができる設定を提供する。

スマートフォンの機能の設定で防げる詐欺電話対策の周知

非通知や未登録の番号からの着信時は消音にする設定や、通話を自動録音する機能など、スマートフォンの機能を利用して詐欺電話から守る対策を店頭やホームページなどで分かりやすく案内する。

犯行ツール対策としての携帯電話の不正契約防止対策

犯罪グループが携帯電話を使わせないよう、契約時に契約者本人であることの確認徹底や1名義あたりの契約回線数の上限設定などの対策を実施。不正契約の防止を目的とした契約申込時の加入審査および加入後の調査のため、警察機関や事業者間で特定の顧客情報を交換していく。

詐欺電話の手口や対策の広報啓発活動

詐欺電話対策は、ユーザー一人ひとりが詐欺電話の手口を知り、対策を講じることが重要。特殊詐欺電話などの実際の事例を基に、注意喚起やそれらを防ぐ具体的な対策を、年代別のスマホ・ケータイ教室や、SNSや動画などさまざまな手法を活用して伝える。