AI機能をスマートフォンの中核に統合し「AIフォン」を謳うSamsung Galaxy Sシリーズ。今回GalaxyのAI機能を体験できる韓国取材ツアーが実施され、韓国・亀尾市にあるフラッグシップ端末の製造工場や同社の歴史を紹介するS/I/M(サムスン・イノベーション・ミュージアム)を見学してきました。

  • 韓国・亀尾(クミ)市にあるSamsung Smart CityにそびえるGalaxy看板

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[取材協力:サムスン電子ジャパン]

サムスン歴代端末がずらり、クミ工場のS/I/M

韓国・亀尾(クミ)市は韓国の南東部に位置する工業都市。大手企業の工場が立ち並ぶ一角に、Samsung Smart Cityと呼ばれるエリアがあり、その中にサムスン端末の一部を製造する亀尾工場も位置しています。

サムスン亀尾工場内にあるS/I/M(サムスン・イノベーション・ミュージアム)では、同社の初代携帯電話「SH100」といったSamsungの歴代端末や事業内容、また韓国の通信端末の歴史について実機を交えて見学できます。関係者だけでなく一般の人も予約すれば無料で入館可能だそう。

S/I/Mはこのほかに、水原(スウォン)本社でも大規模な展示室があり、観光名所としても知られていますが、亀尾工場のS/I/Mでは歴代スマホ実機を柱状に展示したエリアがあり、こちらも迫力満点。首都ソウルから車で約3時間と遠い場所にはなりますが、Galaxyファンにはおすすめの博物館です。

サムスン亀尾工場のS/I/Mにて、歴代サムスン端末が展示されているエリア

  • 亀尾工場のS/I/M入口で出迎えるのは韓国最初の磁石式電話機

  • 韓国初の電気式電話交換機「M10CN」。最大10,000回線をスイッチングできる当時としては大規模なシステム

  • 初期の一般向け電話(左)と、Car Phoneの名前の通り車載できる移動可能な電話機(右)。据え置き電話にサムスンのロゴが入っていることが新鮮

  • サムスンが発売した初の携帯電話「SH-100」。同社のマイルストーン的な1台だ

  • 家庭用の高性能ワイヤレス電話機(右)

  • タッチスクリーンに対応した「SPH-M1000」やCDMA技術を採用した携帯電話「SCH-100」、同社Anycallブランド初の携帯電話「SH-770」

  • スマートフォンに近い大型タッチパネルを備えたHaptic、カメラや音楽プレイヤー機能などを載せたBlueBlackなど

  • 初代Galaxy S、そして“エッジスクリーン”を備えたGalaxy Note Edge

  • 柱状のショーケースが来館者を取り囲むように配置

  • 端末は年代別に並べてディスプレイされている

  • 展示されている最新端末はS24 Ultra、Z Fold6、Z Flip6で、S25シリーズの展示はこれから。空いている右下の空間に今後どんな端末が展示されるか楽しみだ

  • サムスンは1998年の長野冬季オリンピックに無線通信機器部門のワールドワイドパートナーとして正式参加し、以降長らくオリンピックとパートナーシップを結んでいる。2024年開催のパリ五輪では「Galaxy Z Flip6 Olympic Edition」を発表、選手は表彰台でのセルフィーが可能になった

ほぼ自動で組み立てが進むGalaxy製造ライン

同社はグローバルで複数の生産拠点を持ちますが、今回見学したサムスン亀尾(クミ)工場ではGalaxy S/Fold/FlipシリーズといったSamsungのフラッグシップ端末を製造しています。フラッグシップ端末の開発製造を担うため技術開発に加え品質管理も重視。開発時にハードウェア・ソフトウェアの機能を検証するエリアも備えています。

同社のスマートフォン製造は8段階の工程がありますが、第1~3段階は別の場所で、基板を端末に組み込むアッセンブリ工程から始まる第4~8段階は今回見学したエリアで行います。なお、検証エリアと合わせて工場内は全て写真撮影禁止でした。

主な組み立て工程は基板やカメラ部品の(筐体への)組み付け、アンテナ等の組み付け、SIMスロットの組み付け、ディスプレイの組み付けといった形。合間にきちんと組み付けられているかの自動検査も行われます。一通りの組み立てが終わると後半ではオーディオや通信、ディスプレイ、カメラ、防水性などの機能検査も実施。その後、検査用にインストールされたプログラム等を初期化し、パッキング(梱包)作業を経て出荷エリアへ集荷されます。

  • サムスン亀尾工場の外観

昔は製造の各工程を人が担当していたといいますが、現在の工場内は部品を運ぶ自動搬送車が行き交い、組み立て工程でも自動化を進めているとのこと。アッセンブリ工程や目視検査はロボットと人の両方が担当しますが、これを除くほぼ全ての工程はロボットのみによる自動製造が行われていました。ロボットアームが精密な動きでSIMスロットを組み付けたりディスプレイを組み込んだり、端末を次の工程へ移動したり保護シールを貼付/剥離したりするさまは圧巻です。

工場を案内してくれた担当者は「人は詳細な品質チェックが可能ですが、その検知能力には差があります。一方ロボットは品質を均一にチェックできるので、両方のよい点を組み合わせています」と話しました。

マネキン12体で顔認証テスト、知られざる検証エリア

サムスン亀尾工場には開発中の端末に組み込む各種機能を検査する品質管理エリア(Automation Lab)も存在。主にスマートフォンやスマートウォッチに搭載する機能をテストする場所で、ここもほぼ全ての検査工程が自動化されていました。人の手が入るのは検査する端末をセットする時やテストが終わって端末を回収する時、そして得られた検査結果データをエンジニアが分析する時程度だそうです。

1フロア内にAndroidの通信テスト、Wi-Fiローミングテスト、NFCタグのテスト、ディスプレイ表示品質のテスト、温湿度テストなどのほか、ソフトウェアの動作検証、Galaxy Budsと各種CPUとの接続テスト、Galaxy Watchをマネキンが着用し自転車の振動を再現するテスト、1週間着用しバッテリー駆動時間をチェックするテストなど多種多様なテスト工程が集結。

個人的に興味深かったのが、スマートフォンの指紋認証テストと顔認識テストです。いずれも小部屋で区切られ実際のテストを見ることはできませんでしたが、指紋認証テストでは110個ほどの指紋(レプリカ)を用意し、角度を変えながら端末で認証させ続けるとのこと。また顔認識テストでは、12体のマネキンを用意し、顔の角度や端末までの距離、室内の明かりを変化させながら認識テストを繰り返すといいます。

このエリアでは基本的に開発中の端末をテストしますが、1割ほどは既に発売済みの端末においてユーザーから上がった不具合を再現し原因を探るテストも実施。このほか、サードパーティが遠隔でGalaxyスマートフォンを操作し、アプリが動作するか検証できるスペースもありました。アプリ製作者が複数のGalaxy端末を所持していなくてもGalaxy向けアプリを開発でき、また折りたたみ式の“Fold”や大画面のタブレットで動作するかもまとめて確認できる点がメリットです。