筆者は10代のころに「若年性高血圧」と診断され、それからずっと最高血圧は130mmHg台。幸いなことに、いまのところ血圧を下げる「降圧薬」を処方されたことはありません。

フリーランスである筆者は身体が資本。1年に一度は人間ドック、半年に一度は簡易検査(血液検査など)を受けていますが、ひさしぶりに血圧を計測するときはすっごく緊張してしまいます。

本来ならまめに血圧を計測したいところですが、上腕式の血圧計はちょっと面倒。一応、上腕式血圧計をリビングの棚に常備していますが、計測し忘れたときに仕事部屋から移動するのが億劫。ついつい計測をさぼりがちです。

そこで今回試用を志願したのが「HUAWEI WATCH D2 ウェアラブル血圧計」。つねに手首に装着でき、もちろんスマホと連係可能。そのぶんちょっと値段はお高めですが、スマートウォッチ+血圧計と考えれば、納得感のある価格設定です。

今回9日間ほど試用し、本製品と上腕式血圧計の計測結果を比較してみました。WATCH D2がどの程度正確なのか気になる方はぜひ最後までご覧ください。

  • 「HUAWEI WATCH D2 ウェアラブル血圧計」(クラウドファンディング時の価格は48,224円~50,635円)

日本の管理医療機器認証を取得した血圧計を内蔵!

まずは手短かにWATCH D2の基本機能をお伝えします。

一言で表わせば本製品は「スマートウォッチ+血圧計」。iOS(バージョン13以上)とAndroid(バージョン8以上)搭載スマートフォンに対応しており、通知、Bluetooth通話、カレンダー、アラーム、天気予報、リマインダーなどに加えて、ウォーキング、ランニング、サイクリング、登山など合計80種類以上のワークアウトモードを搭載。もちろん睡眠モニタリング、心拍数、血中酸素レベル、皮膚温、ストレスレベルなどの健康管理機能も実装されています。

最大の売りはもちろん、日本の管理医療機器認証を取得した血圧計を内蔵していること。本体内部にはマイクロポンプが搭載されており、ベルトに内蔵された「カフ」に空気を送り込み、動脈を圧迫。血流を一時的に止めてからカフ内の圧力を下げていくことで、血流が再開する「収縮期血圧」と、血流が正常に戻る「拡張期血圧」を測定するという仕組みです。

血圧計には上腕式と手首式の2種類がありますが、WATCH D2は後者の製品。手首式の血圧計は現在では多くの製品が発売されていますが、そのほとんどが乾電池式。スマートウォッチのようなサイズではありません。

WATCH D2のボディーはアルミニウム合金製で、サイズは約38×38×13.3mm。IP68の防水防塵性能を備えていますが、水中でのワークアウトや、温水には対応していないため着用したまま入浴できません。バッテリー持続時間は通常使用で約6日間、24時間に渡って血圧を測定する新機能「自動血圧モニタリング機能」使用時は約1日間です。

  • WATCH D2の製品パッケージ

  • パッケージには本体、充電クレードル付きUSBケーブル、クイックスタートガイド、ウォッチの着用ガイド、ワランティーカード、Mサイズのカフ一体型ベルト、スケールが同梱されています

  • 1.82インチ有機ELディスプレイの解像度は480×408ドット。輝度は1500cd/m2が確保されています

  • 右が上ボタン(回転式クラウン)、左が下ボタン(機能ボタン)

  • センサーは、9軸IMU(加速度、ジャイロ、地磁気)、光学式心拍、心電図、環境光、圧力、温度、気圧、ホールセンサーを搭載

  • Lサイズのカフ一体型ベルトを装着した状態の重量は実測82.85g

日常的に測定し、血圧の変化をモニタリングする機器として実用的な精度

手首式血圧計として超軽量なWATCH D2ですが、どのぐらい正確に血圧を計測できるのか気になるところ。一般的に、上腕式のほうが手首式よりも正確に計測できると言われています。

日本高血圧学会のウェブページにも、「※手首カフ式の血圧計は使用が容易ですが,水柱圧補正が困難であることや、手首の解剖学的特性から動脈の圧迫が保証されない場合があるため、本集計からは除外しています」と記載されており、上腕式のほうが精度が高いことを示唆しています。

そこで今回は、まずは9日間、WATCH D2と、筆者の私物の上腕式血圧計で早朝の同じタイミングで計測し、その結果を比較してみました。

  • 9日間起床時の最高血圧の推移

  • 9日間起床時の最低血圧の推移

  • 9日間起床時の脈拍の推移

9日間起床時の結果については、ほぼ同じタイミングで計測しても、少しバラツキがありますね。最高血圧は最大12mmHg、最低血圧は最大11mmHg、脈拍は最大12拍/分のズレがありました。しかし、計測結果の平均値で比較すると、最高血圧は最大6mmHg、最低血圧は最大3mmHg、脈拍は最大6拍/分とズレの差が縮まります。

さらに細かく両者の値を比較するため、今度はWATCH D2と上腕式血圧計で、それぞれ交互に10回ずつ計測してみました。筆者はでかい身体に似合わず、緊張しやすい質です。連続して計測したほうが気持ちが落ち着いて、より結果が収束していくかなと考えて、追試したわけです。

  • 10回連続で計測時の最高血圧の推移

  • 10回連続で計測時の最低血圧の推移

  • 10回連続で計測時の脈拍の推移

10回連続で計測してみたところ、ちょっと予想外の結果となりました。最高血圧については回を重ねるごとにWATCH D2と上腕式血圧計の値のズレが小さくなっていったのですが、最低血圧は逆に大きくなっています。脈拍のズレは、9日間計測した平均値よりも、10回連続で計測した平均値のほうが小さくなっていますね。

とは言えグラフを見たかぎり、明らかに9日間起床時に計測したときよりも、10回連続で計測したときのほうがWATCH D2と上腕式血圧計の折れ線が近づいています。

もちろんWATCH D2と、病院で使用されている最新、かつ高価な上腕式血圧計と比較すると絶対値として誤差はあるでしょう。しかし、日常的に手軽に測定し、長いスパンでの血圧の変化をモニタリングする機器として、WATCH D2は実用的な精度を備えていると感じました。

なお、計測自体は簡単です。前回の血圧計測結果が表示されているパネルをタップしたあと、さらに「測定」ボタンをタップ。図解されるとおり「WATCH D2」を心臓と同じ高さに構え、もう片方の手で肘を支えて静止。あとは計測が終了するまで、動かず、声を出さなければオーケーです。

計測時間は筆者の場合は70秒前後でした。起床後、就寝前に、ベッドに座ってサクッと計測できますね。上腕式血圧計や、大きな手首式血圧計のように、装着する手間を省けるのは大きなメリットです。なお、前述の24時間に渡って血圧を測定する「自動血圧モニタリング機能」使用時は、正しい姿勢をとる必要はありません。

  • 4枚目の写真は、本体内部のマイクロポンプがカフに空気を送り込み、圧力が上がっているところです。血圧計即時、WATCH D2を胸の前で構えるので、この画面は自分では見られません

長時間装着していても肌が荒れにくいTPU樹脂のベルトが◎

個人的にスマートウォッチで重要視しているのが装着感。前モデルの「HUAWEI WATCH D」を着用した際、ベルトの裏面が布製カバーになっていたため、かゆみを感じたんですよね。その点、WATCH D2はベルトの裏面にTPU樹脂が採用されているので、長時間装着していても肌に違和感はなかったです。

ただTPU樹脂はかなり薄いようなので、耐久性という点ではちょっと心配。WATCH D2の資料にはカフ一体型ベルトの単体価格は記載されていません。できるだけ安価に交換できることを期待したいところです。

  • ベルト裏面はやわらかな感触のTPU樹脂が採用。長時間装着していても痒みなどは感じませんでした

  • 半日装着後の手首の写真。特に赤みや腫れなどはありませんね

  • ベルトの最厚部は8.6mm前後。PCのキーボードタイピング時は厚みが気になったので、パームレストがほしいところです

1.82インチの大画面、スマートウォッチとしても使いやすい

スマートウォッチとしての基本機能は実用上十分。1.82インチの有機ELディスプレイは直射日光下でも見やすく、解像度は480×408ドットが確保されているのでメールの本文もある程度確認可能です。

  • 解像度480×408ドットのディスプレイではメール本文も確認できます

インターフェースはファーウェイのほかのスマートウォッチを踏襲。左右スワイプで「スマートアシスト」、「文字盤」、「血圧」、「心拍数」、「活動記録」、「カレンダー」、「ワークアウト」、「月相」などのカスタムカードを切り替え、下スワイプでショートカットメニュー、上スワイプで通知、上ボタンを押すとアプリランチャー、下ボタンを押すと血圧測定が起動します。画面が大きいのでタップ操作もしやすいですね。

今回はiPhoneで試用しましたが、iOS、Android両対応というのも嬉しいところ。OS変更を伴う機種変更時にも、WATCH D2は引き続き利用できるわけです。

  • 左上から「スマートアシスト」、「文字盤」、「血圧」、「心拍数」、「活動記録」、「カレンダー」、「ワークアウト」、「月相」

  • 下スワイプでショートカットメニューを表示

  • 上スワイプで通知を表示

  • 上ボタン(回転式クラウン)を押すとアプリランチャーが表示

  • ウォーキング、ランニング、サイクリング、登山など合計80種類以上のワークアウトモードを搭載

普段は手軽なWATCH D2、数値に変化があったら上腕式血圧計で計測……が理想の使い方

今回、WATCH D2と上腕式血圧計で計測結果を比較してみましたが、数値が多少異なるのは当たり前です。病院で計測したとしても毎回同じ数字が出るわけではないのは、皆さんご存じのとおりです。

そういう意味では、今回の9日間の試用期間中、上腕式血圧計との比較で一定の精度を確認できました。また、個人的にはベルトの裏面が布からTPU樹脂に変わり、装着感が大きく向上したのが見逃せないポイントです。

日常的にこまめに計測し、血圧の変化を観察することが目的のデバイスとしては、十分実用的。普段はWATCH D2で起床後、就寝前に計測し、数値に大きな変化があったときに、上腕式血圧計で計測する……というような使い方が、個人的には合いそうです。

なお今回のレビューはあくまでも筆者が短期間試用した結果をもとにお届けしています。すでに高血圧をはじめとする、なんらかの病にかかっている方は、WATCH D2を購入したとしても、合わせて専門医に必ず相談するようにしてください