◆PCMark 10 v2.1.2704(グラフ3~8)

PCMark 10 v2.1.2704
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10

  • グラフ3

  • グラフ4

  • グラフ5

  • グラフ6

  • グラフ7

  • グラフ8

ではPCMark 10ではどうか? というと、ここではRyzen 7 9800X3Dの性能はRyzen 7 9700Xと大きな差は見られない(グラフ3)。EssentialsではRyzen 7 9700Xの方が僅かに上なのがPCMark 10では逆転するのは、グラフ4から判るように恐らくDigital Contents Creationのスコアが反映され始めるためだろう(Extendedでは更にGaming=3DMark FireStrikeのスコアも反映されるので差が大きくなる)。

そのEssentials(グラフ5)も比較的大きな差が付くのはApp Startupで、実データを見ると

Ryzen 7 7800X3D Ryzen 7 9700X Ryzen 7 9800X3D
Chromium(Cold) 0.434sec 0.410sec 0.426sec
Chromium(Warm) 0.284sec 0.277sec 0.276sec
Firefox(Cold) 1.049sec 0.950sec 1.013sec
Firefox(Warm) 0.832sec 0.773sec 0.790sec
Gimp(Cold) 1.795sec 1.545sec 1.647sec
Gimp(Warm) 1.603sec 1.362sec 1.448sec
Writer(Cold) 1.301sec 1.170sec 1.208sec
Writer(Warm) 0.854sec 0.735sec 0.758sec

という感じで、何かが特に遅いというよりも、全般的にちょっとRyzen 7 9700Xの方が速いという積み重ねである。この辺はMax Boost時の動作周波数の差が出た、という感じに見えなくもない。ただ実際のアプリケーション稼動の性能になると、こちらは常にMax Boostで動作するわけではないので、性能差は殆どないという感じだ。

Productivity(グラフ6)は、WritingはRyzen 7 9800X3Dが、SpreadsheetはRyzen 7 9700Xがそれぞれ最高速だが、差はごく僅かであり、これは実データでも同じである。実際グラフ4にある様に、Productivityのトータルスコアは大差ないレベルである。

ではDigital Contents Creation(グラフ7)では? というと、Photo Editingが比較的結果としては大きいが、実データを見てもこちらも大きな差ではない。強いて言えばサムネイル作成がRyzen 7 9700Xだと0.092sec/枚なのに対し、Ryzen 7 9800X3Dでは0.081sec/枚と13%強高速なことだろうか? ちなみにRyzen 7 7800X3Dも0.085sec/枚と結構高速で、これはやはりL3の容量が大きい事が効いていると思われる。ただその他はあまりL3が関係しているという感じの処理は無かった。やはり全体的にちょっとだけ高速になっているという感じだ。

Rendering&Visualizationに関しては、

Ryzen 7 7800X3D Ryzen 7 9700X Ryzen 7 9800X3D
Deshake CPU 33.0fps 42.0fps 40.0fps
Deshake OpenCL 156.0fps 171.5fps 168.0fps
Downscale CPU 72.0fps 98.0fps 94.0fps
Downscale OpenCL 493.5fps 514.5fps 564.0fps

となっており、CPUというよりOpenCL(つまりGPU)を使ってのDownscaleだけが妙に高速で、これが全体のスコアに影響を与えた感じだ。

最後にApplication(グラフ8)、つまりOffice 365を利用してのテストだが、Ryzen 7 9800X3Dのスコアは大体Ryzen 7 9700Xと同等なのにExcelだけが突出して高い。ただこれも実データを見ると

Ryzen 7 7800X3D Ryzen 7 9700X Ryzen 7 9800X3D
Building Design Recalculate 0.259sec 0.232sec 0.193sec
Close 0.127sec 0.129sec 0.119sec
Copy Compute 1 0.186sec 0.182sec 0.163sec
Copy Compute 2 0.121sec 0.139sec 0.117sec
Copy Data 0.133sec 0.147sec 0.125sec
Copy Formulas 0.107sec 0.119sec 0.101sec
Edit 0.542sec 0.505sec 0.521sec
Load 0.909sec 0.789sec 0.764sec
Resize 0.345sec 0.394sec 0.329sec
Save 0.463sec 0.414sec 0.436sec
Start 0.351sec 0.359sec 0.335sec
Stock History Recalculate 0.621sec 0.599sec 0.509sec

という感じで、比較的大きな差があるのは大規模なシートの再計算、つまり並列処理が効きやすいBuilding Design RecalculateとStock History Recalculateのみである。他はほぼ同等という感じだ。

◆Procyon v2.8.1352(グラフ9~15)

Procyon v2.8.1352
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/procyon

Ryzen 9000シリーズの時はAdobe Creative SuiteのバージョンとProcyonのバージョンが合わずに上手く動作しないテストがあったが、今回はちゃんと動作した。といってもやはりバージョンミスマッチはあり

Photoshop:25.12(最新版は26.0)
Lightroom Classic:13.5.1(最新版は14.0.1)
Premier Pro:24.6.3(最新版は25.0)
Media Encoder:24.6.3(最新版は25.0)

でテストを行っている。また今回からAI Inference TestではINT/FP16/FP32を選べる様になったため、この3つとも実施してみた。

  • グラフ9

  • グラフ10

  • グラフ11

  • グラフ12

  • グラフ13

  • グラフ14

  • グラフ15

さてOverall(グラフ9)を見ると、ほぼ全てのテスト(AI Overall FP16は僅差でRyzen 7 9700Xが上回っている)でRyzen 7 9800X3Dが最高速、という結果である。これ、以前Ryzen 7 7700XとRyzen 7 7800X3Dを比較した時とは全く異なる傾向である。まずOffice Productivity(グラフ10)では、なぜかWordが突出したスコアを叩き出している。こちらも実データを見てみると

Ryzen 7 7800X3D Ryzen 7 9700X Ryzen 7 9800X3D
Accept Comparison 0.219sec 0.193sec 0.186sec
Add Image 0.900sec 0.769sec 0.717sec
Add Watermark 1.020sec 0.824sec 0.296sec
Compare Documents 1.768sec 1.516sec 1.508sec
Convert From Pdf 5.973sec 5.319sec 5.082sec
Copy From Excel 0.093sec 0.092sec 0.094sec
Copy Paste 0.162sec 0.149sec 0.136sec
Cut Paste 0.130sec 0.116sec 0.115sec
Embed File 0.372sec 0.369sec 0.339sec
Export To Pdf 16.684sec 13.106sec 13.808sec
Find 0.099sec 0.082sec 0.087sec
Image Effect 0.228sec 0.183sec 0.187sec
Image Scale 0.024sec 0.032sec 0.019sec
Load 0.863sec 0.708sec 0.727sec
Save 0.216sec 0.178sec 0.183sec
Table Of Contents 1.123sec 0.778sec 0.634sec

となっており、圧倒的に高速なのがAdd Watermark、次がTable Of Contents(目次作成)で、それ以外は大きな差とは言えない。で、どちらの処理もRyzen 7 7800X3Dはそこまで高速では無いことで、単純にL3が大容量だから高速とも言い切れない処理である。ただ並列処理が効きそうな項目であり、これが効果的に作用したというあたりだろうか? Photo Editing(グラフ11)は、Photoshopの操作であるImage Retouchingではほぼ差が無し。違いがあるのはLightroom Classicを使ったBatch Processingのみである。またVideo Editing(Photo12)はもうエンコード速度の違いである。こちらはこの後示すTMPGEncなどと異なり並列処理が効かないので、状況としてはCineBenchのSingle Threadに近いと思うのだが、全てのケースでエンコードがRyzen 7 9800X3DがRyzen 7 9700Xより高速というのは、勿論喜ばしい事ではあるのだが、ちょっと不可解ではある。

グラフ13~15はAI Inferenceで、それぞれのモデルのInference Count(一定時間の間に実行したInferenceの回数)をまとめたものだ。結果が4桁もブレるので、グラフの横軸を対数にさせていただいた。とりあえずZen 4コアのRyzen 7 7800X3Dがやや見劣りするのは仕方ないとして、Ryzen 7 9800X3Dは概ねRyzen 7 9700Xより高速ではあるが、その差はごく僅か、というのは理解いただけるかと思う。

◆GeekBench ML 0.60(グラフ16~19)

GeekBench ML 0.60
Primate Labs Inc.
https://www.geekbench.com/ml/

  • グラフ16

  • グラフ17

  • グラフ18

  • グラフ19

同様にAI InferenceでGeekBench MLも。Overall(グラフ16)で見ると、これも微妙ながらRyzen 7 9800X3Dが最高速である。ただ、こちらは意外に結果の変動が大きい。例えばINT 8(グラフ17)、Image ClassificationとかText Classificationといった負荷が少ない処理では、Ryzen 7 9700Xが最高速であり、Ryzen 7 9800X3Dとの差も大きい。これだけ見てるとRyzen 7 9700Xが一番高速に思えてくるのだが、負荷の大きなPose EstimationとかStyle Transferといった処理では逆にRyzen 7 9800X3Dが最高速であり、全体としてはRyzen 7 9800X3Dが僅差で最高速といった結果になっている。これはFloat16(グラフ18)やFloat32(グラフ19)でも同じであるが、単にL3を増量しただけでここまで性能が変わるというのもちょっと不思議である。

◆TMPGEnc Video Mastering Works V7.1.0.35(グラフ20)

TMPGEnc Video Mastering Works V7.1.0.35
ペガシス
http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html

  • グラフ20

久々にバージョンアップがあったTMPGEnc Video Mastering Works 7だが、細かなバグフィックス程度で大きな性能上の差異はなさそうである。さて結果(グラフ20)だが、驚いたことにRyzen 7 9800X3DがRyzen 7 9700Xを17~19%上回るエンコード性能を発揮することが示された。これは先のCineBenchとかと同じ傾向で、マルチスレッド性の高いアプリケーションではRyzen 7 9700Xを大きく凌ぐ能力があることになる。何で、という話は後で見てみる必要があるが。

◆3DMark v2.29.8294(グラフ21~23)

3DMark v2.29.8294
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark

  • グラフ21

  • グラフ22

  • グラフ23

Overall(グラフ21~23)だと、明確に差があるのは負荷が軽いNightRaidとWildLifeのみで、あとはほぼ誤差の範囲といった感じ。ただしNight RaidではRyzen 7 9800X3Dが最高速だが、WildLifeではRyzen 7 9700Xが最高速、という具合にやや傾向がバラける。

ただ実際のゲームのフレームレートで比較すると? というとグラフ22の様にこのどちらのテストでもむしろRyzen 7 9700Xの方が高速なのである。実際のフレームレートで言えば

Ryzen 7 7800X3D Ryzen 7 9700X Ryzen 7 9800X3D
NightRaid Test1 735.57fps 998.74fps 930.81fps
NightRaid Test2 1353.79fps 1495.62fps 1405.19fps
WildLife 668.71fps 813.06fps 769.09fps

という結果で、文句なくRyzen 7 9700Xの方が高速である。何で? というのは筆者も感じる疑問だが、これはNightRaidなりWildLifeなりの中身を確認しないと判断が出来ない。では何でNightRaidではRyzen 7 9800X3Dの方がスコアが高いのか? というとこれはCPU Testの結果(グラフ23)が効いてくるためで、ここでRyzen 7 9800X3Dのスコアの方が高いためだ。WildLifeの方はCPU Testが無いのでフレームレートがそのままスコアに直結する格好である。

ただこれは負荷が低いテストの場合で、より負荷の高いSolarBayやSteelNomad、TimeSpy/PortRoyal/SpeedWayなどでは差はないに等しいし、WildLifeも負荷のあがるWildLife Extremeでは差が無いことを考えると、余程軽いゲームで無ければ性能差は見られないし、その軽いゲームの場合にはそもそもフレームレートが論外なほど高いから、ここで多少の差があってもそれを体感するのは不可能、とは言えそうだ。