LG電子(以下、LGエレクトロニクス)は、同社が展開するディスプレイ向けプラットフォーム「webOS」の年次イベント「webOS Summit 2024」を、2024年9月末に韓国で開催しました。LGエレクトロニクスがwebOSを買収し、2014年に同社版のwebOS 1.0をリリースしてから今年(2024年)で10周年を迎えます。webOSの今後の展望、そしてスピーカー新製品の注目モデルを、LG韓国本社で聞きました。

取材協力:LGエレクトロニクス

スマートテレビ・モニターの市場が拡大。成長事業のwebOS

webOSに関する最新情報や今後の展望が語られる「webOS Summit 2024」は韓国・仁川(インチョン)で開催されました。LGのテレビやスマートディスプレイを通じてコンシューマーに提供されているwebOSプラットフォーム事業は、家電メーカーからスマート・ライフ・ソリューション企業への転換を図っている同社にとって、成長を見込んでいる注力事業の1つです。

インターネットに接続できるテレビ・ディスプレイの市場は年々伸びており、LGは2027年には現状の1.5倍の規模へ拡大すると予想する調査会社のデータを紹介。webOSはこれまでの10年間で2億2,000万以上のスマートテレビにインストールされており、2021年にはLG以外のテレビメーカーへの搭載も果たしました。

現在は車載システムやサイネージ、プロジェクターなど、webOSエコシステムを拡大し180カ国以上へ提供、エンターテインメントやフィットネス、教育、ゲームなど4,000以上の対応アプリが登場しています。

  • LGのwebOS搭載製品は2014年にスタート。独自の動画ストリーミングサービス「LG Channels」は2015年に始まり、サードパーティ向けにwebOSを提供するwebOS Hubビジネスは2020年から始まっている

  • コネクテッドTV市場は年々拡大している

ユーザー体験を向上、AIを組み込んだ「AI webOS」へ

最新のwebOSはAIを組み込んだ「AI webOS」に進化し、対応チップを搭載したデバイスでは、AIによってさらに製品を便利に利用できるようになっています。LGが提唱するAffectionate Intelligence(愛あるインテリジェンス)の名前の通り、ユーザーがより便利にwebOSを使える手助けをする機能が追加されています。

例えば個人アカウントの視聴傾向と連動した(ユーザー好みの)コンテンツを提案したり、ディスプレイ輝度を部屋の照明の明るさに応じて調整したり、ユーザーの視聴位置や部屋のレイアウトに応じて最適なサウンドに調整したりできるほか、画質についてもユーザーの好みをAIが診断して設定を提案します。過去の音声検索履歴を学習しておすすめの検索キーワードを提案する「AIコンシェルジュ」も用意されています。

  • 「AIコンシェルジュ」の使用例

  • 2024年版LG製テレビの一部には会話形式でトラブルシューティングを行うチャットボットが導入されている

  • AI処理にも対応する、LGのテレビ向けプロセッサ「アルファ11プロセッサー」

  • 好みの画像をユーザーが選ぶことで、最適な画質をAIが見つけ出すパーソナルピクチャーウィザード機能

PINコードの入力で支払える簡易決済「webOS Pay」スタート

webOSの収益の柱は「広告」と「コンテンツ・サービス販売」。2024年にwebOS上の広告、サービスによって生み出される収益は、2021年から4倍となる1兆ウォン以上と予測されています。

広告事業では、多彩なチャンネルを提供する独自ストリーミングサービス「LG Channels」などで、ユーザーの好みに関連した広告を提案するAIベースのソリューションを搭載。また、コンテンツ販売事業ではwebOSで使用できる新たな簡易決済サービス「webOS Pay」を欧州市場に導入しました。ユーザーのアカウントに一度支払い情報を登録すると、以降はPINコードのみでコンテンツやサービスの購入ができるもので、LGのVODサービス「LG Movies & TV」と楽天グループの動画配信サービス「Rakuten TV」が連携し、6,000を超えるタイトルに対応。同社は「シームレスでパーソナライズされたショッピング体験が可能」としています。

  • webOS Payの概要

  • webOS Payを使った支払い画面の例。一度支払い情報を登録した後は、PINコードの入力でコンテンツを購入できるようになる

1msの超低遅延! BT ULL対応コントローラーを発見

最新のwebOSはゲームとの親和性も高めており、クラウドゲームサービス「GeForce NOW」や「Amazon Luna」などを通じて約4,500のゲームを提供。またwebOSのゲームカテゴリでも600近くのゲームが利用でき、その大半が無料といいます。リモコンのみでプレイできるゲームも用意され、スキマ時間で気軽にゲームを楽しめます。

webOS Summit 2024では最新のAI webOS体験ゾーンが設けられ、LG最新のテレビ製品や関連技術を直接見ることができました。 ここでなんと、LGエレクトロニクスがwebOS Summit 2024に合わせて展示した、世界初をうたうBluetooth Ultra-Low Latency(BT ULL)コントローラーを発見! RazerのBluetoothゲーミングコントローラーとLG webOSスマートテレビの組み合わせで、1msという低い入力遅延を実現したといいます。

  • 一般的なBluetooth接続のコントローラーと、BT ULL接続のコントローラーでクラウド経由のゲームを試遊できるスペースがあった

  • BT ULLコントローラーの展示機。BT ULLは確かに反応が速かったが、一般的なBT接続のコントローラーもそれなりに速い反応だった。日頃格闘ゲームや音楽ゲームなどをやりこんでいるプレイヤーなどが使うと違いがわかりそうだ

LGエレクトロニクスは今後、LG webOS搭載スマートテレビで動作することを保証する認証プログラムを、BT ULL対応コントローラー開発メーカー向けに提供予定。このほか、MediaTekのWi-Fiチップセット「MT7921」に統合されるBT ULL技術も共同開発しており、BT ULL技術を搭載したLGエレクトロニクスの最新OLEDテレビやQNEDテレビが2025年に登場予定といいます。

  • 個人ユーザーのエンタメ環境を支えるwebOS。今後ディスプレイを搭載するさらに幅広い製品に適用したい考えだ

CES 2025で新製品が出るかも。LGオーディオ注目製品が集合

さて、今回実施されたLGエレクトロニクスの韓国本社プレスツアーでは、同社のオーディオ注目製品をまとめて見られる機会に恵まれました。アウトドアでタフに使えるMIL規格準拠の小型スピーカー「LG XBOOM Go XG2」ほか、LG初の完全ワイヤレスイヤホン「LG TONE Free T90S」など日本では未発売のものも展示され、視聴では低音をしっかり効かせたパワフルな音を響かせていました。

LGの一部のオーディオ製品は、LG製テレビやディスプレイに接続すると、webOSのメニューに設定項目が追加されるものがあるほか、AIが音場を把握して立体的な音響空間を構築する機能、再生コンテンツのジャンルによって音を最適化する機能など、webOSに近しいAI機能を備えているものも。LGのオーディオ注目製品を写真で見ていきましょう。

  • まずはIP67等級の防塵防水性能を備えたアウトドア向けスピーカー「LG XBOOM Go XG2」。日本でも発売されている注目の小型スピーカーだ

  • 前面に電源ボタンを装備。MIL-STD-810Hにおける7項目のテスト(衝撃、高音、浸水、耐塵、耐水、振動、塩霧)をクリアする

  • 手のひらより少し大きい程の持ち運びやすいサイズ。重さも0.28kgと軽い

  • 左にある赤いつまみはボリューム調節ボタンだ。背面にはBluetooth接続ボタン、低音を含めサウンド全体の迫力を上げるSound Boostボタンを搭載

  • 本体背面

  • 充電インタフェースはUSB-C。バッテリー駆動時間は1回の充電で最大10時間音楽を楽しめる。左側から出ているひもはストラップで、テントの上に引っ掛けたり自転車に括り付けたりと、多彩な使い方が可能

  • 「LG TONE Free T90S」はLG初の完全ワイヤレスイヤホン。Dolby AtmosやDolby Head Trackingをサポートしたフラッグシップ製品で、高い没入感を得られるという。日本では未発売だが投入は「検討中」とのこと

  • ケースは有線接続にも対応(!)。Bluetooth非対応デバイスと充電ケースをプラグで接続すると、Bluetoothトランスミッターとして機能し、そのサウンドをT90Sで楽しめる。例えば飛行機のエンタメシステムに接続すると、移動中に使い慣れたT90Sで映画の音声を聴けるというワケだ。充電ケースにはUVライトが内蔵され、充電中のイヤホン本体を消毒できるというユニークな機能も搭載

  • パーティー向けの大型スピーカー、LG XBOOM XLシリーズ。中央にある背の高いモデルが最上位のXL9で、8インチウーファー×2、3インチツイーター×2から生まれる大迫力の低音を響かせていた。来年(2025年)のCES時期にシリーズ新製品の追加を予定

  • サウンドが360度均等に広がるリフレクター構造を採用したワイヤレススピーカー「LG XBOOM 360」シリーズ。中央の「XBOOM 360 XO3」、一番小さい「XBOOM 360 XO2」は日本でも発売している

  • いずれも空間全体を照らせるライティング機能を備え、部屋でゆったり音楽を楽しみたい人に適した製品だ。灯りの色はiOS/Android向けの「XBOOM」アプリで設定可能

  • 60W×2の大迫力サウンドを響かせる大型スピーカー「LG XBOOM Go XG8」(日本未発売)。取っ手付きでアウトドアシーンへの持ち運びも可能だ。側面にはLEDが光る演出を用意し、本機もSound Boostボタンを搭載している

  • 日本でも発売している、最大出力400Wの大型サウンドバー「SC9S」。webOS搭載ディスプレイと組み合わせると、webOSのメニューにサウンドバーの設定項目が現れる。コンテンツの特性に応じて音を最適化したり、空間を認識して立体的な音場を形成したりするAI機能も搭載。最大220Wの高出力サブウーファー1基も付属する