2024年9月26日から29日まで開催される「東京ゲームショウ2024(TGS2024)」のインディーゲームコーナーにて、株式会社ドリコムが出展中だ。ブースでは、開発中のピクセルアートアドベンチャー『Tokyo Stories』の試遊台を用意していた。実際にプレイしたインプレッションをお伝えする。
最新のプレイアブルデモで『Tokyo Stories』の世界観に触れる
『Tokyo Stories』は、ピクセルアートと3Dを融合させたビジュアル表現が魅力のアドベンチャーゲーム。主人公の少女「スズ」は、いつの間にか姿を消した親友の少女「ユノ」を探し、「誰もいなくなった東京」を彷徨い歩く。
「TGS2024」にあわせて用意された最新バージョンのプレイアブルデモでは、ゲームの冒頭部分を試遊できる。早速プレイしてみると、乗客のいない電車の中でスズが目を覚ますシーンから物語が始まった。
スズがふとスマホを取り出すと、「カメラロールを見る」と「あたりを見渡す」という2つの選択肢が表示される。どちらを選ぼうか悩みながら十字キーを動かすと、それぞれの選択肢の上下にいくつかのモノローグが浮かび上がった。
スズが今なにを想って、その行動を起こすのか。選択肢の裏にある細やかな心情をモノローグで補完してくれるので、プレイヤーはスズとシンクロしながら、より自分の気持ちに近い選択肢を選ぶことができる。丁寧な心理描写に、早くも物語の奥行きを感じた。
地下鉄の出口を出ると、スズは東京・渋谷へと辿り着く。時間は午後11:24。ぼんやり光る街灯の明かりに導かれるように、人気のない裏路地を進んでいく。
本作では、固定視点のカメラアングルを採用している。操作をしていると、まるで町中に設置された監視カメラでスズを追跡するような不思議な感覚になった。同時に、ピクセルアートで描かれた趣きのある夜の町の風景を、じっくりと観察しながら散策できて楽しい。
さらに路地の奥へ進むと、スズの探していた親友の少女「ユノ」がゲームセンターの前に立ちすくんでいた。どうやらここは、2人が初めて出会った大事な場所らしい。しかしユノはそれを思い出せず、「あなたは…誰?」とスズに訊ねる。すると、2人が光る蝶に包まれて画面がホワイトアウトし、別世界へと切り替わった。
目の前に現れたのは、壊れた建物が宙に浮かぶ灰色の世界。ネオンサインを光らせていたはずのゲームセンターにはツタが茂り、看板も朽ち果て、景色は一変する。
ふと辺りを見回すと、黄色い蝶が舞っていた。蝶に触れるとスズのあとをついてくるようになり、不思議な力で見えない道を作り出したり、ゲームセンターに絡まるツタを消してくれたりする。
すべてのツタが消え去ると、ゲームセンターは色を取り戻し、入口には「思い出の中のスズとユノ」が姿を現した。スズはユノと初めて出会った日の記憶を取り戻し、現実世界へと戻る。
現実世界の渋谷の町と、思い出を辿る記憶の世界。この2つを行き来しながら彷徨い歩くことで、物語は少しずつ核心に迫っていく。なぜユノがスズの前から姿を消したのか、2人の間に一体なにが起きたのか。今回のプレイアブルデモを試遊しただけでは、まだまだ多くの謎が残るが、そのミステリアスな余韻が本作への期待値をさらに高めてくれた。
開発者にインタビュー! こだわり抜いた完成品をプレイヤーに届けたい
ゲームプレイ後には、『Tokyo Stories』の開発を担うプロデューサー/ディレクターの池田佑基氏、デザイナーの寺島誠一氏にインタビューを行い、作品についてお話を伺った。
池田氏が本作で特にこだわったのは、「ストーリー」だ。「自分とどう向き合うのか」をテーマに主人公のスズが生まれ、試行錯誤を重ねながら物語を作り上げたと教えてくれた。
一方、デザイナーの寺島氏が重視するのは、「見た目の気持ちよさ」。ピクセルアートと3Dを融合させることで、作り込みすぎない、程よく密度のあるビジュアルを目指し、開発を進めているのだそう。
本作の舞台となる渋谷の景色も、ピクセルアートのレトロな魅力を活かし、「最新のピカピカした渋谷」というよりは、「ノスタルジックな雰囲気を感じる、少し昔の渋谷」をイメージして描いていると明かしてくれた。
また、本作の発売を待ち侘びるプレイヤーに向け、池田氏は「自分たちが納得できるものを作って皆さんに提供したいので、もうしばらくお待ちいただければと思います」とコメント。寺島氏も、「自分たちとしても早く完成させたい気持ちはあるけれど、ゲームの遊びごたえの部分をしっかりと突き詰めてからプレイヤーの皆さんにお届けしたいと思うので、ぜひお待ちいただけますと幸いです」と語った。
『Tokyo Stories』の発売日は未定ではあるが、「TGS2024」での試遊を通して世界観に触れ、続く物語を想像しながらリリースを楽しみに待ちたい。