2024年7月31日、Samsungは最新の折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold6」と「Galaxy Z Flip6」を日本市場に投入しました。これに合わせて、韓国Samsungの研究開発総括でMX事業本部開発室長のChoi Won-Joon(チェ・ウォンジュン)氏が来日。日本の報道陣に対して新製品の特徴や今後の戦略について語りました。

  • Choi Won-Joon氏

    Samsungの研究開発総括でMX事業本部開発室長のChoi Won-Joon氏

さらなる薄型化、軽量化を続けていく

「Galaxy Z」シリーズは、他社に先行してSamsungが発売した折りたたみスマートフォンで、2019年以来着々と進化しています。最新モデルの「Galaxy Z Fold6」「Galaxy Z Flip6」についてChoi氏は、「洗練され、もっとも完成度が高くなり、Galaxy AIが利用できる史上最強の折りたたみAIフォン」だとアピールします。

ハードウェア面では、ディスプレイとヒンジを強化し、耐久性を大幅に向上させたと言います。放熱構造の改善、バッテリー容量の強化といった機能向上もあり、薄型化/軽量化も図られています。

折りたたみスマートフォンは各社が新製品を競って投入し、ラインナップが拡充されています。ハードウェア面で言えば、「Galaxy Z」より薄型軽量の端末も登場している状況です。Choi氏は「フォームファクターの完成度を高めることに注力している」としており、薄型化や軽量化の目標は依然として継続。「来年も再来年も、ハードウェアの進化を続けていく」と話しました。

  • Galaxy Z Fold6/Galaxy Z Flip6

    薄型化などの機能向上が図られた「Galaxy Z Fold6」「Galaxy Z Flip6」

ハイエンドからローエンドまでGalaxy AIを広める

そして「Galaxy Z」最新モデルの最大の特徴として挙げられるのがGalaxy AIの存在です。今年始めに登場した「Galaxy S24」シリーズから搭載されるようになったAI機能のGalaxy AIは、ハイエンドの「Galaxy S」シリーズと「Galaxy Z」シリーズに提供されており、「Galaxy Z Fold6」「Galaxy Z Flip6」でも利用できます。

Samsungでは、Galaxy AIを広く普及させることで他社との差別化を狙っており、年末までに2億台のGalaxy製品にGalaxy AIを展開したい考え。Choi氏は、Galaxy AIの展開がまずはハイエンド端末中心になる見込みとしつつ、ローレンジ~ミッドレンジの製品にも順次展開していくとしています。

Galaxy AIの特徴は「ハイブリッドAI」という点。クラウドベースとオンデバイスベースの組み合わせで、それぞれのユースケースに最適化されたAI体験を提供します。高性能を求める場合にはクラウド、プライバシーや低遅延が求められる場面ではオンデバイスという形で利用できます。

Choi氏は、「デバイスメーカーとしてオンデバイスの側面でしっかりと競争力を確保して差別化を図っていく」とコメント。さらに、「ユーザーがデバイスを使えば使うほど、そのデバイスはユーザーについての理解を深める」と言います。デバイス内に蓄積されたデータにもとづいて使用パターンからAIがよりパーソナライズ化されたAI体験を提供する、という意味です。

Galaxy AIはデバイスのソフトウェアとハードウェアで提供されるため、従来の機種でも利用できるのはメリットですが、その分、例えば「Galaxy Z Fold5」と「Galaxy Z Fold6」のように、新旧機種間の機能差が小さくなってしまうように思えます。

多くのユーザーにGalaxy AIを提供するためには従来機種への展開は必要ですが、特にハイエンドの最新機種では、SoCの性能向上により従来機種では実現できなかったAI機能が利用できるようになる可能性があります。オンデバイスAIではパフォーマンスが重要なため、そうした機能が出てくれば最新機種の差別化の1つになる、というのがChoi氏の考え方です。

  • Choi氏 別カット

オープンコラボレーション戦略で、Androidに足りなかった課題を解決

SamsungがAI機能をアピールする際、Android標準の「かこって検索」機能がしばしば紹介されます。この機能自体は「Galaxy」以外の端末でも利用できますから、他社との差別化に繋がらない部分です。

これについてChoi氏は、「Galaxy AIにおける開発戦略の重要な軸の1つがオープンコラボレーション」だと言います。Samsung独自開発の技術に加え、パートナーのソリューションも採用することで、「Galaxyユーザーに優れた体験を提供する」ことが目的だというわけです。

「かこって検索」は、「GoogleとSamsungが最初から一緒に協力して開発した機能」(Choi氏)であり、こうした協力は今後も拡張していくと言います。こうした協力の目的は「Android OS自体のプラットフォームとしての競争力を高めること」だとChoi氏は指摘します。iOSに対する競争力を高めて、Androidの利用を拡大するために開発されたのが「かこって検索」とのことで、これをAndroid OSの標準機能として他のデバイスにも広がることを目指します。

他社との差別化についてChoi氏は、独自UIのOne UIや独自アプリの存在を挙げます。Samsung Notesやカレンダー/ギャラリーなどの独自アプリの存在に加え、そこにGalaxy AIを組み合わせることで競争力を高めていると言います。

差別化の3点目としては、Galaxyエコシステムとしてスマートフォン/タブレット/スマートウォッチ/ワイヤレスイヤホンといった製品の組み合わせによる体験を提供することが差別化に繋がるとしています。

Googleとの協業を始め、オープンコラボレーションによって様々なソリューションも導入することでGalaxyの魅力を高めていく戦略だというChoi氏。「iOSとの比較でAndroidに足りなかったのは、一貫した体験をプラットフォームレベルで提供するということ」と指摘し、サードパーティーの管理や品質と完成度をプラットフォームレベルで高める努力が必要との認識を示しました。

Googleとのコラボレーションはこうした観点も踏まえ、「タスクフォースの形で、スペシャルチームを作ってここ数年間、努力を続けてきた」とChoi氏は話します。

Galaxy AIは、端末の性能向上に伴ってオンデバイスで利用できるAI機能が強化されます。さらにハイブリッドAIとしてクラウドを組み合わせることで、低スペックの端末でもGalaxy AIを利用できるようにしていくことを目指しています。

「Galaxy A」シリーズのようなミドルレンジ以下のスマートフォンでも、クラウドベースのAIを使うことで、「最大限、Galaxy AIが利用できるように努力していく」との考えです。

  • 「Galaxy Z Fold6」を手にしたChoi氏

    「Galaxy Z Fold6」を手にしたChoi氏