Appleが発表したiPadの新ラインアップ。特に目を引くのが、薄さをわずか5.1mmに抑え、これまでより100g以上の軽量化を実現した13インチiPad Proです。薄型化、軽量化の背景には、これまでミニLEDバックライトを搭載してきた液晶ディスプレイを有機ELに変更したことがあります。
本体の大幅な薄型化に合わせて、iPadにドッキングさせてキーボードを利用可能にするMagic Keyboardも刷新されました。11インチモデル向けの新型Magic Keyboardは49,800円、13インチモデル向けは59,800円です。今回は、このMagic Keyboardに注目したいと思います。
さまざまな点が進化したMagic Keyboard
M4搭載iPad Pro向けに用意されたMagic Keyboardは、これまでのキータッチを踏襲しつつ、いくつかの改良が加えられています。
外側の素材は引き続きポリウレタン素材を採用しており、ホワイトモデルは汚れを気にすることになりそうです。これまでと異なるのが、開いた部分の内側で、キーボード面の素材はアルミニウムに変更されました。これまではパームレスト部分もポリウレタン素材で、耐久性が今ひとつだったこと考えると、歓迎すべき改善になりました。
トラックパッドの質感も高められており、新たに感触フィードバックも備えたことから、MacBook AirやProのような体験が得られるようになりました。
加えて、キーボードにはファンクションキーが1列追加されており、Escキー、画面の明るさ、検索、音声入力、再生コントロールなどにワンタッチでアクセスできます。ただし、キーボードには「fn」キーが用意されておらず、パソコンのキーボードのように「F1」「F2」といったキーは入力できないようです。
iPad Proの“重すぎ問題”に対処した
Magic KeyboardにiPad AirやiPad Proを装着すると、フォリオケースのように前面と背面を保護して持ち運べ、開けばちょうど良い角度でiPadを固定できる仕組みです。新モデルでも、この使い勝手に変更はありません。
しかし、これまでのiPad ProとMagic Keyboardの組み合わせはとても重たい、という非常に重要な欠点がありました。11インチiPad ProとMagic Keyboardの組み合わせは、本体471g+キーボード601gで、合計1,071gになります。12.9インチiPad ProとMagic Keyboardの組み合わせでは、本体682g+キーボード641gで、合計1,323gとなっていました。
ちなみに、MacBook Air 13インチモデルの重さは、カタログでは1.24kgとなっており、12.9インチiPad ProとMagic Keyboardの組み合わせの方が重たかったのです。
M4搭載iPad Proは、ディスプレイの技術を変更し、薄型軽量化を実現しました。11インチモデルで前作より22g、13インチモデルにいたっては前作より103gも軽量化しました。
本体が軽くなったことで、iPad Pro 13インチとMagic Keyboardの組み合わせは、MacBook Air 13インチより軽くなりましたが、さらに持ってみたところ、Magic Keyboard自体も軽量化が進んだことから、MacBook Airよりも軽快に持ち運ぶことができるようになったと考えられます。
MacBook Airと競合するか?
ここで気になるのは、普段持ち運ぶデバイスとして「MacBook Airを選ぶか」「iPad Pro + Magic Keyboardを選ぶか」という問題です。
iPad Proの軽量化によって、重量の面ではiPad Proに軍配が上がります。セルラーモデルを選択すれば、5G通信を単体で行うことができ、Wi-Fi探索やスマホのテザリングを気にすることなくネットにつながる点も、iPad Proならではのメリットです。
そこで考えるべきは、自身が利用するアプリや作業の内容です。
MacBook Airから離れられない人は、Microsoft OfficeやAdobeなどのビジネス系、クリエイティブ系のアプリケーションを多用している人かもしれません。iPad向けにもこれらのアプリは提供されていますが、必ずしも同じ機能や完全な互換性を期待することができず、iPad版に合わせたワークフローにならざるを得ません。
一方で、PagesやKeynoteといったAppleのアプリ、Googleドキュメントのようなクラウドベースのアプリを使っている場合、大きなストレスなくiPadでの作業を進めることができます。
あるいは筆者が愛用している、Mac、iPad、iPhone向けにアプリが提供されているMarkdownエディタアプリの「Ulysses」 のように、各プラットフォーム向けにアプリが提供され、iCloudなどでデータが同期されるアプリを用いれば、iPadでの編集結果をMacで加工するといった連携も可能となります。
また、Apple Pencilが利用できる大きなメリットが、iPadにはあります。例えば、メモやフリーフォーム、Goodnotesなどのアプリを使って手書きでメモを取ったりノートを書いたり、イラストや図などを描いて共有するといったことは、Mac単体では思うようにはいきません。Magic Keyboardから取り外してiPad単体を持てば、電子書籍にペンでマーカーを引きながら読んだり、ゲームや動画視聴などのシーンにiPadの手軽さを活かすことができます。
用いるアプリの作業によってiPadでも問題ない環境であれば、モバイル接続、ペン操作、タブレットとしての活用というiPadにしかできないメリットが際立ってくることになるでしょう。
残るは価格の問題
もし、iPadで仕事をこなせる環境が整ったとしても、次に来るのは価格の問題です。
軽量化されたiPad ProはiPadシリーズの上位モデルにあたり、11インチモデルで168,800円から、13インチモデルで218,800円から(いずれも256GBストレージ、Wi-Fiモデル)。さらにMagic Keyboardはそれぞれ49,800円、59,800円となっており、13インチモデルの組み合わせは278,600円からとなります。
これに21,800円のApple Pencil Proを追加すると300,400円と、30万円台の大台を突破。さらに、iPadならではのモバイル通信が可能なモデルにする場合、この価格はさらに上昇し、336,400円からとなります。
かたや、MacBook Air 13インチはM2モデルで148,800円から、M3モデルでも164,800円からの価格で購入できます。iPad Proは、最新鋭のM4チップと有機ELディスプレイを備えているとしても、MacBook Airの倍近い価格は大きな負担となります。
もし、13インチiPad Airで環境を組み立てた場合でも、本体は128,800円(128GB)から、Magic Keyboard(旧型)は 59,800円、Apple Pencil Proは21,800円で合計210,400円となり、価格の面でMacBook Airより有利になることはありません。