3月18日から21日まで、アメリカ・カリフォルニア州のサンノゼでNVIDIA GTCが開催されました。新型コロナウイルスの感染拡大に伴ってオフライン開催を2019年から見合わせていたイベントで、フル仕様での実施は2019年へと遡ります。

今回ひさびさのフル仕様開催が行われるとあってか、NVIDIAは日本国内媒体をプレスとして招待しました。マイナビニュースも参加することができたので、この記事ではNVIDIA GTCへの参加について紹介しようと思います。

  • NVIDIA GTCに現地参加! AIブームに乗って沸くサンノゼ、巨大なBlackwellチップ現物も

NVIDIA GTC(GPU Technology Conference)

そもそもNVIDIA GTCとはGPU Technology Conferenceの略。どちらかというと消費者向けというより技術・産業向けの先端技術について紹介される発表会のことで、最近ではデータセンター向けのAI用チップであったり、車載向けデバイスに関する発表が多め。しかしAda Lovelace世代の「GeForce RTX 4090」と「RTX 4080」の発表が行われたこともあり、消費者向けにもたまに見逃せない回がやってくることがあります。

今回の目玉は、何といっても新アーキテクチャ「NVIDIA Blackwell」が発表されたこと。“fp4”での高速な推論に対応している点が最大の特徴で、fp8のNVIDA Hopper比で最大5倍もの圧倒的な性能を実現したとします。

  • 登壇し、2時間もの基調講演に自ら臨むジェンスン・フアンCEO

  • 「NVIDIA Blackwell」アーキテクチャ発表

  • 最大5倍高速。fp8とfp4なので単純比較ではありません

このNVIDIA Blackwellアーキテクチャ採用製品として、今回「NVIDIA GB200 Superchip」などが発表されました。GB200と型番にある通り、CPUにNVIDIA Graceを1個搭載し、2基のB100を組み合わせた超ド級仕様。このB100、なんと2つのダイを1つにまとめてパッケージングして単体で約2,080億個ものトランジスタを集積しています。

  • 向かって左側がBlackwell、NVIDIA B100の単体チップ。右側のNVIDIA H100と比べるととんでもなく大きくなっています

  • 会場ではモック展示を眺めることもできました

そのほかの発表はややバックエンド向けというか、これまでNVIDIAが開発・提供してきたデジタルツインプラットフォーム「NVIDIA Omniverse」を活用したシステムのマイクロサービス化が大きく取り扱われていました。API経由での利用に対応することでサービスへの組み込みがより容易になったり、エッジ側の環境を選びにくくなったとのこと。一例として、サーバー側で描画したNVIDIA OmniverseをApple Vision Proに連携して利用するようなユースケースも発表されています。

  • NIMとして包括的に提供

  • デジタルツインと現実世界を重ね合わせるのに便利そうなApple Vision ProもNVIDIA Omniverse対応

そのほか、車載向けシステム「Jetson」シリーズを人型ロボットに転用してみるというプロジェクトについても明らかにされました。これまでNVIDIA OrinやNVIDIA Thorとして展開されてきた製品で、強力なグラフィック性能・AI性能を生かして自動運転の基盤として利用されてきたもの。もちろんシミュレーションはデジタル空間上で行える「NVIDIA Isaac Sim」を活用しており、ロボティクス分野への投資も継続しています。

  • 安川電機のオートメーションシステム。隣接ホールでマニピュレーターの実動デモが行われていました

ホール展示も見てきた! Samsung・Micron・SK hynixが存在感

NVIDIA GTCにおける基調講演はSAPセンターで行われましたが、サンノゼコンベンションセンターのホールでパートナー企業含む各社の展示をも行われています。NVIDIA製品を採用するサーバーメーカーやクラウド事業者、ロボット開発企業などがぎっしり詰まっており、ブースでは来場者と熱心に話込んでいる様子をあちこちで見ることができました。

NVIDIA主催の展示だけがそうなのかは不明なのですが、個人的に印象的だったのは「飲食エリア」が大々的に設けられていた点です。通り道の中央に軽食と飲み物が大量に用意されており、参加者は通ったついでに適宜食べていくスタイル。それどころかなんとビアガーデンまで用意されており、ほろ酔い気分でビジネストークに臨むことすら可能です。

  • ホールで異彩を放っていた2階建てのDell Technologiesブース

  • 消費者向けだけでなく、ブレードサーバーの製造開発・販売も行うASUS

  • 大きなブースに巨大なレーシングコースを設置し、走り回らせていたLenovo

  • マニピュレーターをしゃかしゃか動かして飲み物を作り続けていたロボット

  • Google Cloudのブースはオリジナル転写シャツの配布に大忙しでした

中でも見どころかなと感じたのは、HBM3メモリの開発・製造を行う企業のブースです。HBM3メモリはNVIDIA H100やNVIDIA GB200などデータセンター向けの超高性能チップに搭載されているメモリで、消費者向けのものより広帯域である点がポイント。推論性能にはチップ・メモリ間の帯域が大きく影響するため、HBM3メモリの供給を担えるMicron・Samsung Electronics・SK hynixがAI向け製品への採用をかけてしのぎを削っています。

ちなみに最近では8層品が量産に入りつつある状態で、今後12層を積み上げた高密度モデルの出荷が随時行われていく模様。多層化するとチップ当たりの容量が増やせるため、同時処理数を増やしたり大きなモデルを用いることができるようになります。

  • 特にSK hynixはわかりやすい展示が行われていました。最先端のHBM3E 12層モデルのアピールに注力

  • 実物?かはわかりませんがサイズ感がわかります

  • HBM3Eメモリはパッケージの中に密着して統合した形で実装されています、と強調するMicron

  • Samsung Electronicsも12層モデルを展示

  • 8層なら24GB、12層なら36GBをチップ1個で実現

  • Samsung ElectronicsのブースにはGDDR7メモリもありました。まだ1個で2GBのモデルのみ

NVIDIA Hopper・Ada Lovelace投入から早2年

fp4における圧倒的な推論性能でAI用途に超絶特化した「NVIDIA Blackwell」アーキテクチャを発表し、NVIDIA Hopper発表から2年くらいでのリプレースを律儀に図っていくNVIDIA。NVIDIA Hopperの発表が2022年3月、Ada Lovelaceの発表が2022年9月だったことを思うと、次は消費者(ゲーマー)向け新アーキテクチャの発表がそろそろ楽しみになってくるタイミングです。今回はデータセンター向けの内容でしたが、いよいよ一般消費者的にも期待が高まってくる頃合いかもしれません。

  • 今回のジェンスン・フアン氏、トレードマークの“革ジャン”をよく見ると型押しがされているタイプでした。かなり珍しいことだと海外で報道されており、思い返すと確かにいつもつるっとしたデザインだった気がします