NTTソノリティは、周囲の騒音を抑えてクリアな音声を通話相手に届ける独自技術を採用した、カナル型の有線イヤホン「nwm Voice Buds」を発表。3月1日から「GREEN FUNDING」でクラウドファンディングを開始した。ひと足先に実機に触れてきた印象をお伝えする。

  • nwm Voice Buds

NTTグループのコンシューマー音響ブランド「nwm」(ヌーム)の新製品で、自宅やオフィス、出先などで、オンライン会議や通話するときの周囲の雑音に悩むユーザーが主なターゲット。最大の特徴は、USB Type-C接続のリモコンマイク部に備えたノイズリダクションマイクと、NTTの特許技術「Magic Focus Voice」を活用し、騒がしい環境でも周囲の音をカットして通話相手にクリアな声だけを届けられるようにした点にある。

  • nwm Voice BudsをUSB-C接続で使うイメージ

クラウドファンディングの目標金額は50万円で、プロジェクト期間は2024年4月14日まで。定価の最大50%オフとなる9,790円の2個セットプランなど、複数プランを用意しており(同プランは3月1日時点で在庫切れ)、いずれも3月末から順次配送予定。支援募集の反応も見つつ、nwm Voice Budsの一般販売も検討する予定だ。

支援募集開始に合わせ、東京・世田谷にある「蔦屋家電+」では3月1日から3月31日まで、nwm Voice Budsの実機展示を実施。さらに3月中旬からは、都内4カ所にあるシェアオフィス「LIFORK」でも同製品を試せるようにする。

  • 右がNTTソノリティ nwmVoice Buds プロダクトマネージャーの長谷川潤氏。左は、シェアオフィス「LIFORK」などを展開するNTT都市開発で商業事業部 営業開発担当部長 オペレーショナルアセット担当部長を務める金子昌徳氏

  • GREEN FUNDINGで3月1日から4月14日までクラウドファンディングを実施へ

nwmブランドを展開するNTTソノリティでは、自分の声のみを通話相手に届けられるというオンライン会議向けマイク内蔵スピーカー「LinkShell」を2023年から展開している。同製品は、複数の内蔵マイクに届く音の時間差から音響空間を認識し、話者を特定するビームフォーミングと、不要な音を分離して必要な音のみを残すスペクトルフィルターのハイブリッド処理によって“音を仕分ける”「インテリジェントマイク」技術を投入しているのが大きな特徴だ。

今回のnwm Voice Budsには、同技術をMagic Focus Voiceという“より伝わりやすい”名前に変え、有線イヤホンで使えるサイズに落とし込んで採用。「指向性モード」と「全指向性モード」の2モードを切り替えて使えるようにした。具体的には、前者がメインのモードで、120度の範囲で収音して声のみを抽出しクリアな音質を追求。後者は360度収音することで、体の向きの変化にも対応可能となるが、そのぶん指向性モードよりもノイズ抑制が控えめになるという。

  • nwm Voice Budsのリモコンマイク部

  • 「指向性モード」と「全指向性モード」の2つのモードが利用できる

紛れ込んだ音声の推定が難しいスペクトルフィルターには、長年の研究から声の特性を熱知しているNTTのノウハウを凝縮。「音質を損なわずに人の耳に合わせるチューニング」を施すことで、自然なユーザーの声だけを取り出し、相手に届けられるようにした。

NTTソノリティが2月29日に都内で開催した製品発表会では、実機を使ったデモを披露。別室にいる、nwm Voice Budsを装着した説明員の音声をWeb会議ソフト越しに聞いた限りでは、説明員のいる環境が騒音下にあっても(別室で騒音を流していても)、聞き取りやすい声になっているように感じられた。

  • 騒音下にある別室にいる、nwm Voice Budsを装着したユーザーの声の聞こえ方を、Web会議ソフト越しに体験

会場ではほかにも、nwm Voice Budsと一般的なイヤホンマイクの通話音声品質を聴き比べられるデモコンテンツを展示。通話中にユーザーの至近距離で別の人が話していたり、掃除機を使っていたり、場所が駅構内であったりと3種類のシチュエーションがあり、イヤホンマイクを通すと声や騒音がどのように聞こえるか、イメージしやすくなっていた。

発話者の至近距離で、通話には参加していない他の人が話しているデモ音声では、nwm Voice Budsを通すとある程度他人の声が抑え込まれ、発話者の声に集中できる。これが一般的なイヤホンマイクを通すと、通話に関係ない人の話し声もけっこう入り込んで聞こえてくるので、発話者の話している内容に集中できない(オフィスでのWeb会議では、こういう状態は意外とありがち)。

また、発話者の至近距離で掃除機が使われているという、“Web会議の最中なのに配慮されていない状況”のデモ音声も。nwm Voice Budsでは、まったく掃除機のモーター音が聞こえなくなるわけではないが(ある程度甲高い音の成分は残る)、発話者の声は聞き取りやすい。一般的なイヤホンマイクだと壊滅的で、会話をさえぎらないように掃除機をオフにしてほしい、と頼みたくなる。

最後に、駅構内でWeb会議に参加することを想定したデモ音声も聞いてみた。これも前出の掃除機のパターンと似ていて、nwm Voice Budsを使っていても完全に周囲の雑音が消えるわけではない(特に構内のアナウンスなど)。それでも、ホームに入線したり発車したりする列車の走行音は、通常のイヤホンマイクと比べればかなり抑え込まれており、会話に集中できる印象だった。

いずれもあくまでデモ音声であり、Web会議で使うツールやネットワークの状態にも左右されるので、実際の通話環境とは異なる。それでも、nwm Voice Budsのマイク性能は一般的なイヤホンマイクよりも高いように感じられた。今後試用できる機会があれば試してみたいところだ。

  • 想定利用シーン

  • ビジネスユースを主眼に置いている

ちなみに、一般的な通話用マイク付きの有線イヤホンではマイク1基のみであることが多いが、nwm Voice Budsでは2基の全指向性MEMSマイクを使用。さらに前出のビームフォーミングとスペクトルフィルターのハイブリッド処理が行えるようなSoC(チップ)も積むことで、通常のマイク付きイヤホンよりもクリアな音声を届けられるようにしたという。

こうした処理にはそれなりの電力を必要とすることに加え、iPhone 15シリーズやノートPCなど、USB Type-C端子を採用したデバイスが増えていることも踏まえて、接続端子はあえて3.5mmプラグではなくUSB Type-Cを採用。ビジネスシーンでの利用を想定していることから、ワイヤレスイヤホンのように接続に手間取ったり充電切れの心配をしたりせずに済むよう、nwm Voice Budsは最初から有線イヤホンに仕上げることを前提として設計したそうだ。

  • nwm Voice Budsの主な特徴

  • リモコンマイク部にUSB Type-C端子がある

ビジネスユースを見据えた製品ではあるが、肝心の“カナル型イヤホンとしての音質”も抜かりはない。「会議もプライベートも音楽も、全部これ1本で済むようなイヤホンとしてありたい」というコンセプトのもと、独自開発した9mm径のダイナミック型ドライバーを搭載しており、声(中高域)にフォーカスを当てたチューニングを実施。音楽を聴くときも音のバランスが崩れないよう配慮しており、長時間聞いても心地よく聞き疲れしないサウンドチューニングになっているという。

再生周波数帯は20Hz~20kHz。本体のケーブルの長さは0.8m、重さは約12g(いずれも同梱のUSB-C to Cケーブルを除く)。USB-C to Cケーブルの長さは0.2m。XS/S/M/Lの4サイズのイヤーピースも同梱する。カラーはマットブラックのみ。

  • カナル型イヤホンのハウジングには、nwmのロゴがあしらわれている

  • nwm Voice Budsの主な仕様

なお前出のとおり、nwm Voice Budsをはじめとするnwmのオーディオ製品は、3月中旬からシェアオフィス「LIFORK」の都内4拠点で会員が体験できるようにすることも決定。LIFORKは、NTTグループでオフィス賃貸や不動産といったマンション事業などを手がけるNTT都市開発が展開するブランドで、シェアオフィスで働くビジネスパーソンにnwm Voice Budsを体験してもらい、音に関する悩みを解決するのに役立ててもらうことをねらいとしている。

  • nwmブランドがこれまでに送り出してきたオーディオ製品群