去る11月11日・12日、東京は皇居近くの科学技術館にて「東京楽器博2023」が開催されました。楽器メーカーや関連企業が出展し、実際の楽器に触れて弾いて試せるイベントです。

デジタル技術を駆使したシンセサイザーや機材、ギターとエレクター、ドラムなどがところ狭しと展示され、プロのミュージシャンやアーティストによるデモンストレーション、セミナーも豊富でした。リアルな楽器イベントは久しぶりということで、会場はどこもかしこも大盛況。東京楽器博2023に出展していたカシオ計算機のブースを取材しました。

  • 東京楽器博2023のカシオブース(その1)、展示と試奏はキーボードの「CT-S1000V」

カシオというと時計のG-SHOCKや電卓のイメージが強いかもしれませんが、古くから電子楽器にも力を入れています。スリムでスタイリッシュな電子ピアノ「Privia PX-S7000」シリーズや、ドイツの老舗で名門ピアノメーカー「C.ベヒシュタイン」とコラボレーションした電子ピアノ「CELVIANO Grand Hybrid」、鍵盤が光って演奏をサポートしてくれる「カシオトーン 光ナビゲーションキーボード」などは、近年のヒット作です。

そんなカシオブースのメイン機材は、キーボードの「CT-S1000V」。ハイアマチュアからセミプロ、プロのミュージシャンをターゲットにした高機能モデルです。ブースには6台のCT-S1000Vが並び、自由に試奏できました。音の出力はそれぞれに接続されたヘッドホンです。ちなみにソニーのモニターヘッドホン(MDR-CD900ST)でした。

  • 「ボーカル音色」を内蔵したキーボード「CT-S1000V」を体験。鍵盤を叩くメロディに乗せて、CT-S1000Vが歌をうたいます

この日のためにカシオが用意したCT-S1000V用のコンテンツは、ボーカル。CT-S1000Vは独自の「Vocal Synthesis」という技術を搭載しており、鍵盤を弾いて「歌」を生み出せるのです。

Vocal Synthesisは音声合成の一種。はきはきとした聞き取りやすい発音ではないものの、不自然さは感じません。スマホやタブレットの専用アプリで歌詞を入力し、CT-S1000Vの鍵盤で自由にメロディを奏でます。すると、プレイヤーが弾くメロディに合わせて、入力した歌詞をCT-S1000Vがボーカルとして歌う仕組みです。音符と歌詞(単語)が対応するイメージでしょうか。CT-S1000Vは多彩なボーカル音色を内蔵していて、曲のテンポや音程も自動で合わせてくれます。

  • 用意されていたデモ曲は「蛍の光」……。音楽系のイベントでは著作権に配慮する必要がありますが、もう少し明るい曲でもよかったのでは?(たぶんボーカル音声が分かりやすい曲だったのでしょう)。例えば著作権が切れた、つまりフリーで使える童謡などはたくさんあるし……

ブースで「CT-S1000Vの歌声」を体験した来場者はみな一様に驚いた表情。一言目には「おぉ~!」が聞こえてきます。子どもたちにも好評です。CT-S1000Vはプロも使う本格的な機材ですが、ここはお祭り。CT-S1000Vにつながっていたタブレットでは自由に歌詞を入力できたため、好きな歌のフレーズを入力して演奏を楽しんでいました。

カシオのWebサイトでは、CT-S1000Vのデモ映像やミュージシャンの解説映像が公開されているので、ご覧になってみてください。

【動画】"Let them know you are here" by 江夏正晃(MASAAKI Enatsu)featuring Casiotone CT-S1000V
※カシオのデモ映像から。音声が流れます。ご注意ください

もうひとつのカシオブースはギター用の「DIMENSION TRIPPER」

会場のギターエリアの一角には、カシオがもうひとつブースを出展。ここでは、ギターのストラップに取り付ける機材の「DIMENSION TRIPPER」を体験できました。

  • エレキギター用のアイテム「DIMENSION TRIPPER」

DIMENSION TRIPPERは、ストラップに取り付ける送信機と、送信機とペアになる受信機で構成されます。ギターのプレイ中、送信機がギターの動きを検知して受信機にワイヤレスでコントロール信号を伝えると、受信機を接続したエフェクターが機能します。

例えば、ネックを上下してディストーションの効きを調整するといった操作です。エフェクターをワイヤレスで(しかもギターの動かし方で)コントロールでき、ステージ上での自由度が増します。別記事『カシオ、ギターストラップからワイヤレスでエフェクターを操る「DIMENSION TRIPPER」』でも開発秘話を交えて詳しく紹介しているので、ぜひご一読を。

【動画】DIMENSION TRIPPERのデモプレイ(音声が流れます。ご注意ください)

このDIMENSION TRIPPER、2023年11月30日までクラウドファンディングサイトの「GREEN FUNDING」で支援を募集しています。製品一式がリターンとして届く最安の支援額は31,680円です。2023年11月20日の時点では、目標金額の745万円に対して支援額は464万円と苦戦中。クラウドファンディングが成功でも未達でも、正式に製品化、事業化されるかどうかは一切未定とのこと。少々高価なのは否めませんが、ギターをプレイする人は要チェックです。

ブースには、GREEN FUNDINGのプロジェクトページやデモ映像を見て、興味がわいて実際に試したくなって来たという人が入れ代わり立ち代わり。自分のギターを持って訪れた人も多く、はじめのうちはいつもと違うエフェクターの操作感に戸惑う様子ながらも、ギターを扱い慣れた人ならすぐにコツをつかめるようです(筆者はギターを弾かないのでこの辺りの感覚が分からず残念……)。

  • DIMENSION TRIPPERの開発者、カシオの藤井さん(写真右)はギタリストでもあります

  • 「GREEN FUNDINGで支援しました!」というギタリストも何人か来てくれたとのこと。ブースを切り盛りしていた藤井さんは感激していました

大盛り上がりだった東京楽器博20023、公式サイトには「また来年お会いしましょう!」とあることから、2024年も開催するようです。楽器の展示にはある程度のスペースが必要ですし、ステージプログラムでは大きな音も流れることから、今回の賑わいからすると科学技術館は手狭な印象でした。大きな展示会場となるとコストと運営が大変ですが、次回はグレードアップした東京楽器博に期待です。