シャープのミッドレンジスマートフォン「AQUOS sense8」は、イメージセンサーを大型化して高画質化したカメラを搭載。タフネス性能などバランスの取れたスペックと手頃な価格で、幅広いユーザーにおすすめの製品に仕上がっています。シャープからお借りした試用機で、その使い勝手をチェックしてみました。

  • AQUOS sense8

    AQUOS sense8

収まりのいいコンパクトサイズ

「AQUOS sense8」は、シャープ公式通販サイト「COCORO STORE」での価格が56,980円と、昨今のスマートフォンの中では比較的手の届きやすい価格です。ミッドレンジの位置づけで、高性能とは言えませんが、スペック的にはバランスが良さそうです。

NTTドコモ/au/楽天モバイル/UQモバイル/IIJmio/J:COMモバイル/mineoと、多くのMNO/MVNOが取り扱っているほか、SIMフリーモデルも用意されていて、幅広く購入できる点も特徴です。

画面サイズは約6.1型フルHD+(1,080×2,432)のIGZO OLEDを搭載。10億色表示、ピーク輝度1,300nit、コントラスト比1,300万:1で、リフレッシュレートは90Hzとなっています。

  • 製品正面

    6.1型という手頃な画面サイズ。横幅もスリムなので持ちやすいデザインです

  • 製品背面

    本体背面。カメラ周りのデザインは従来通り

本体サイズは約H153×W71×D8.4mm、約159gと収まりのいいコンパクトサイズ。大画面にはメリットもデメリットもありますが、画面がコンパクトなので持ちやすいのはメリットです。

  • 右側面

    右側面

  • 左側面

    左側面

  • 天面

    天面

  • 底面

    底面

  • 四方の側面。右側面の黒い部分は電源ボタン一体型の指紋センサー

OSはAndroid 13。OSバージョンアップは最大3回、セキュリティアップデートは5年とスペック表に明示されているのは珍しいところ。OSアップデートの内容にアップデートの可否が依存するので「最大3回」という表現になっているのでしょうが、長期間にわたって利用できるという期待が持てます。

  • スペック表のアップデートについての記載

    「AQUOS sense8」のスペック表。アップデート回数が明記されています

SoCはSnapdragon 6 Gen 1。メモリは6GB、ストレージは128GBで、最大1TBのmicroSDXCカードにも対応します。バッテリー容量は5,000mAhです。

ちなみにリフレッシュレートは最大90Hzとされていますが、“最大180Hz相当の滑らかな表示とスムーズな快適な操作感”も実現しているといいます。これはブラックフレームを高速挿入することで180Hz駆動を実現しているということなので、実際の表示は上位モデルほどではありませんが、パッと見は滑らかに見えます。

前述のとおり、キャリア版に加えてオープンマーケット向けのSIMフリー版もあります。基本的にスペックは同一。ネットワークの対応としては物理SIMとeSIMのDSDVもサポート。5Gはn1/n3/n28/n41/n77/n78/n79のSub6のみの対応です。

防水防塵、アルコール除菌シート対応、おサイフケータイももちろんカバーしていますし、基本的なスペックは網羅しています。背面はわずかに輝きのあるデザインで、さらさらした手触り。金属調でそれほど安っぽくは感じません。

2023年12月5日注記:記事初出時、背面素材について「金属調のプラスチック」という記載がありましたが、背面はアルミ製でした。お詫びして訂正させていただきます。
  • 背面の質感

    サラサラとして手触りのよい背面。手のひらにも収まりのいいデザインです

全体として、ミッドレンジのスマートフォンとして必要な機能は揃っているといえそうです。

サイズ感がちょうどいいので、手に持つのにはちょうどいい印象。手のひらの大きさにもよりますが、個人的には安定して持ちやすい限界のサイズです。他にもiPhone 15 ProやPixel 8などがこのクラス。バランスのよいサイズ感でしょう。

ミッドレンジ以上のカメラ画質

カメラは上位モデルの「AQUOS R」シリーズと同様、背面中央に円形のデザインで配置されています。デザインとしては従来通りのもの。

  • カメラ部

    出っ張りの少ないカメラ。左にあるのは超広角カメラです

メインカメラとして、有効画素数約5,030万画素1/1.55型CMOSセンサーを搭載。レンズの焦点距離は23mm(35mm判換算時)、F値はF1.9。電子式手ブレ補正と光学式手ブレ補正の双方に対応します。 センサーはピクセルビニングにも対応しています。

  • カメラのUI

    カメラのUI。従来と違いはなく、基本的には一般的なスマホカメラのUIとなっています

有効画素数約800万画素のCMOSセンサー、焦点距離15mm(同)/F2.4レンズを搭載した超広角カメラも備えたデュアルカメラとなっています。トリプルカメラやクアッドカメラも多い中、少し物足りないところではありますが、このクラスでは珍しいわけではありません。

  • カメラの設定
  • 動画の設定
  • カメラの設定(左)は従来通り。オートHDRとオートナイト、インテリジェントフレーミングは必要に応じてオン/オフを切り替えるといいでしょう。オートHDRとオートナイトは、カメラ左上にもアイコンが表示され、タッチで素早く切り替えられます。右は動画の設定。4K30fpsまでの動画撮影に対応します

スペックとしては、前モデルの「AQUOS sense7」と同等です。 画質エンジンがProPix4からProPix5に進化したことで、画像処理の改善は期待できそうです。上位モデルの「AQUOS R」シリーズ譲りのUIやカメラ機能を備えており。 基本的なカメラ性能は優れていると感じました。

  • メインカメラの撮影画像

    メインカメラで撮影。船舶の渾然としたケーブルの描写にやや怪しいところはありますが、十分なレベルの描写でしょう

  • デジタル2倍ズームの撮影画像

    同じ場所からデジタルズームで2倍。デジタル処理の影響は見えますが、そこまで気にはなりません

  • デジタル4倍ズームの撮影画像

    デジタル4倍になると甘い描写になって画質は低下します。スマホ画面(SNS投稿)ぐらいであれば許容範囲でしょうか

  • デジタル8倍ズームの撮影画像

    デジタル8倍。拡大しなければ文字も読めますし、画質にこだわらなければ使えそうです。ただ、望遠カメラを備える「Pixel 8 Pro」などのハイエンドでは20倍~30倍といった倍率でこれぐらいの画質。このあたりはスペック相当という感じです

オートHDRとオートナイト機能を備え、シーンに応じて最適な設定で撮影してくれます。 撮影直後、処理に時間がかかるので、必要に応じてオンオフを切り替えるといいでしょう。花や食事などのシーンも認識してくれますので、カメラ機能としては十分です。

  • 超広角カメラの撮影画像

    超広角カメラで撮影。800万画素なので細部は描写し切れていませんが、左のビルの描写は良好。ダイナミックレンジはそれほど広くなさそうです

昼間のよく光が回った時間帯だと優れた描写を見せてくれます。手持ちでも夜景撮影で実力を発揮してくれます。同条件であれば超広角カメラもそれなりによく写ります。

  • 料理の撮影サンプル1
  • 料理の撮影サンプル2

    ホワイトバランスは安定。食事モードは派手すぎもせず、自然な描写。全体的に傾向は変わらず、見た目通りに写ります

デジタルズームでは2倍のUIが用意されており、画質的にはそれなりの描写を維持。最大8倍までのデジタルズームに対応していますが、画質的にはかなり厳しいレベルです。基本的には広角、超広角、望遠(2倍)ぐらいのイメージで使うとよさそうです。

夜景の描写もまずまず。比較的暗めの場所でも見栄えのよい写真を撮影してくれます。画質面ではハイエンドスマートフォンほどではありませんが、通常のスナップ写真であれば十分問題ないレベルの写真を撮影出来ます。

  • 夜景モードの撮影サンプル1
  • 夜景モードの撮影サンプル2

    夜景モードも十分な画質。手持ちでも十分明るく撮影してくれます

  • 肉眼イメージ

    ちなみに肉眼だとこれくらいの明るさの場所ですが……

  • 夜景モードの撮影サンプル3

    「AQUOS sense8」はここまで明るく描写してくれました。これも手持ちです

高度なカメラ機能があるわけではありませんが、手軽にスナップ撮影に使うカメラとしては必要十分なカメラ機能だと感じました。

  • 朝焼けの撮影サンプル

    ハイライトからシャドーまで見たままの通りで、自然で破綻のない描写

  • 選択されたシーンモードは「朝焼け」

    シーンモードは「朝焼け」が自動的に選択されました。正しいシーン認識です

ゲームも問題なく動作するパフォーマンス

SoCとしてはSnapdragon 6 Gen 1を搭載。前モデルのSnapdragon 695という従来の“3ケタ”モデルから、上位モデルと同じ1ケタ+Gen表記のモデル名になっており、順当なパフォーマンスアップをしています。

3Dmark/GeekBench/GFXBenchでのベンチマークテストを実施してみたところ、以下のような結果となりました。

テスト AQUOS ense8 (参考)AQUOS sense7
3Dmark Wild Life 2381 1215
GeekBench Single-Core 941 667
Multi-Core 2647 1903
GFXBench マンハッタン3.1 2476 1851
マンハッタン3.1オフスクリーン 2812 2139
Aztec Ruins OpenGL High Tier 947.9 760.7
Aztec Ruins Vulkan High Tier 996.5 771.2
GeekBench ML CPU 319 228
GPU 665 551
NNAPI 331 3651

3Dmarkが大幅に向上しており、他も順当な性能向上が見て取れます。基本的に性能は向上しており、十分なパフォーマンスアップのようです。試したアプリなど困ることはなく、快適な動作を実現していました。

  • 3Dmarkのテスト結果

    3Dmarkのテスト結果

  • GeekBenchのテスト結果

    GeekBenchのテスト結果

ゲームなどもある程度問題なくこなせます。『原神』なども多少反応が遅れることもありましたが、おおむね普通にプレイできました。よほどのゲームでなければ困ることはなさそうです。

“ちょうどよい”スマートフォン

「AQUOS sense」シリーズは、定番のミッドレンジスマートフォンとして着実に進化を続けてきました。上位モデルのデザインを継承しつつ、コンパクトでコスパのよい端末としての位置づけ。「AQUOS sense8」までモデルを重ね、完成度も高まっています。

昨今はスマホの価格も高くなってきており、コストパフォーマンスが大事になってきています。その点で、ある程度低価格なこの「AQUOS sense8」は使い勝手の面と価格の面でバランスの良い製品と言えそうです。

ハイエンドまでは求めないけれども、 エントリーモデルでパフォーマンスに不満のある人にとってはちょうどよい製品でしょう。