Qualcommは10月25日、モバイルパソコン向けのSoC「Snapdragon X Elite」を発表した。

同社は長年、Windows PC向けにArmプロセッサを開発・提供してきたが、優れた電力効率を備えるものの、性能面でIntelやAMDの牙城を崩すことはできていなかった。一方でAppleは、同じArmベースのSoCであるApple Silicon(M1、M2)によって、パフォーマンス面でもIntel製チップを上回り、2020年末にApple Silicon搭載Macの提供を開始してからPC市場でシェアを伸ばし続けている。Apple SiliconのようなWindows PC用のプロセッサが渇望される中、Windows陣営からの答えの1つが「Snapdragon X Elite」だ。

シングルスレッドおよびマルチスレッドのCPUパフォーマンスでAppleのM2 Maxを上回り、30%少ない電力でピーク性能を発揮できる。対x86CPUでは、シングルスレッドのCPUパフォーマンスがi9-13980HXを上回る。また、i7-13800H(14コア)と比べて、同じ電力でマルチスレッド性能が最大60%高速で、i7-13800Hのピーク性能を65%少ない電力で出せるという。Qualcommによると、2024年半ば頃からX Elite搭載製品が登場する。

X Eliteは4nmプロセスで製造され、Qualcommが2021年に買収したNuviaのチップ技術を取り入れた自社設計のCPU「Oryon」を搭載する。NuviaはAppleでAシリーズやMシリーズのチップ設計を手がけたジェラード・ウイリアムズ氏が創業したArmベースのカスタムチップの設計会社で、同氏が独立した時からその動向が注目を集めていた。

Oryonは12個の高性能コアを搭載。クロック速度は最大3.8GHzで、1つまたは2つのコアを最大4.3GHzで動作させるブーストモードも用意されている。キャッシュ容量は合計42MB。高効率コアを備えないが、1回の充電で数日にわたって使用できるような高効率な動作が可能だとしている。メモリはLPDDR5xで、転送速度は最大8533MT/s、帯域幅は最大136GB/s。

グラフィックスはAdreno GPUを搭載しており、4.6TFLOPSの演算能力を備える。i7-13800HのIris Xeと比べて同じ電力で最大2倍、Ryzen 9-7940HSのRadeon 780Mとの比較だと最大80%高速なパフォーマンスを発揮するという。H.264、H.265/HEVC、AV1のビデオエンコーディングとデコーディング、そしてVP9コーデックのデコーディングをサポートする。

機械学習タスクやAI処理を担うHexagon NPUは、45TOPSの演算性能を備える。システム全体で最大75TOPSになるAIエンジンは、130億パラメータの生成AIモデルをオンデバイスで高速実行でき、PCユーザーの生産性、クリエイティビティ、オンラインコミュニケーションの可能性を広げ、より堅固なセキュリティを可能にする。

Qualcommの強みである「Snapdragon X65 5G」モデムを搭載。通信速度は下り最大10Gbps、上り最大3.5Gbpsだ。Wi-Fi/Bluetoothシステムは「FastConnect 7800」。Wi-Fi 6、Wi-Fi 6E、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4に対応する。

ストレージは、PCIe 4.0 NVMe、UFS 4.0およびSD 3.0に対応。USB4にも対応しており、USB4×4ポート、USB3.2 Gen 2×2ポート、USB 2×1ポートを装備することが可能。