某探偵風に言えば「見た目はガラケー、中身はスマホ」。そんなユニークな端末「Mode1 RETRO II」が、携帯電話販売店「テルル」などを展開するP-UP Worldから10月20日に発売されます。どんな人におすすめできる機種なのか、個性的な使い勝手を試してみました。
ガラケーのような見た目でも、中身はれっきとしたスマホ
はじめに、発表直後のSNSでの反応などを見ているとやや誤解されがちなように思えたので、そもそもどういった性格の機種なのかを説明しておきましょう。
Mode1 RETRO IIは二つ折りでテンキーを備えた典型的なフィーチャーフォンのような姿をしていますが、中身はMediaTek製SoCとAndroid OSを組み合わせた4G対応のスマートフォンそのものです。
少し詳しい方なら「そうは言っても、大手キャリア各社が販売している今時のフィーチャーフォン(のようなもの)はみんなAndroidベースだし普通では?」と思われるかもしれませんが、ベースは同じようなものでも見せ方に両者の違いが現れています。
キャリアの4Gフィーチャーフォンはあくまで、エンドユーザーに対しては従来と大きく変わらない操作体系、そしてアプリ追加などの拡張性を制限した安全な閉じた世界が構築されています。これまでと同じものを使い続けたい人のために提供を続けていくにはどうしたら良いかと策を練った結果、スマートフォンベースの技術でフィーチャーフォンを再現したものであり、その舞台裏でAndroidが動いていてほぼスマートフォンに近い作りであることはユーザーには意識させない・あえて見せない設計です。
それとは対照的に、Mode1 RETRO IIは中身がスマートフォンであることを隠しておらず、むしろその特異性をアピールポイントとしています。見た目とは裏腹にPlayストア対応でスマートフォン用のアプリを自由に追加できますし、画面サイズや形状による操作性の違いを抜きにすれば、基本的に一般的なスマートフォンでできることは一通りできます。
まとめると、キャリアの現行4Gフィーチャーフォンのような「スマホの技術で作られたガラケー」ではなく、Mode1 RETRO IIは「ガラケーの形をしたスマホ」という似て非なるものです。
スマートフォンへのステップアップに
言ってしまえば、フィーチャーフォンとして手に取っても、スマートフォンとして手に取ってもそのものズバリの使い勝手ではないわけで、人を選ぶクセの強い製品であることは否めません。裏を返せばハマれば他に代えがたい機種でもあり、発売から6年経つ先代のMode1 RETRO(MD-02P)もまだまだユーザーがいるとサポートや店頭対応を通じて認識しているそう。
この「ガラケーとスマホの中間」のような特徴が刺さるユーザー層として最もイメージしやすいのはやはり、フィーチャーフォンからの買い替えでスマートフォンへの移行を考えている層でしょう。
実のところ、Mode1 RETRO IIのメニューやアプリの操作はある程度まで物理キー(カーソルキー/OK/クリアなど)でこなせますが、すべてキー操作で完結できるかというとそうではなく、部分的にタッチ操作が必要、あるいはタッチしたほうがはるかに早い場面も少なくありません。
しかし、「困ったら赤い終話キーを押せば最初の画面(ホーム画面)に戻れる」「携帯を開いて数字を押せばすぐに電話をかけられる」といった最低限のラインは守られているので、高齢の家族のスマートフォンデビューなどに選ぶなら、いきなり普通のスマートフォンを渡すよりは安心感があると思います。
ユーザー補助機能の設定に「ふたを閉めて使用履歴消去」というものがあり、これをONにしておくと端末を閉じるたびにタスクキルが行われるようになっていました。スマートフォン特有のマルチタスクの概念は初心者が混乱しやすい部分でもあり、細かい点ながらよく考えられた仕様だと感じました。
もちろん文字入力は馴染みのあるテンキー操作でできますし、あくまでスマートフォンなので音声入力との併用も可能です。また、カーソルキー周辺には任意のアプリまたは連絡先を割り当てられるカスタムボタンが4つあり、試供品として付属するシールを貼っておけば「メールボタンを押したら受信メールを確認できる」といったフィーチャーフォンなら当たり前の直感的な操作を再現できます。
フィーチャーフォンからMode1 RETRO IIに乗り換えて少しずつスマートフォンの使い勝手に慣れていき、次は普通のスマートフォンに……という架け橋になる製品としてはオンリーワンに近い価値があるでしょう。
玄人向けのサブ端末としても利用価値あり
では、すでに普通のスマートフォンを使っている人には無縁の製品なのかというと、その限りではありません。複数台の端末を使い分けているガジェット通のサブ端末としても、案外捨て置けない魅力があると思います。
MediaTek Helio G85という2020年に発表された12nmプロセスのミドルレンジSoCと4GBのメモリを搭載しており、処理性能的には現在の基準ではローエンドに入るでしょう。ただ、画面が小さいので解像度も低め(1,440×720/HD+)に設定されていることやキー操作時にはスワイプやフリックなどのタッチ操作ほど操作のもたつきをダイレクトに感じにくいこともあって、カタログスペックから想像するより動作のストレスは少ない印象でした。
バッテリーは2,500mAhとフィーチャーフォンからすれば多め、スマートフォンとして見れば少なめの容量。1日あたりの消費率から考えると、電話やメールなどの待ち受けが中心の使い方なら1週間ぐらいは持ちそうです。
“玄人向け”の使い方としてまずおすすめできるのは、プライベートと仕事用の電話番号を使い分けている個人事業主の方など、電話用のサブ端末としての運用です。やはり久しぶりに使ってみても二つ折りは受話口・マイクともに適切な位置に来て通話しやすい、というのもさることながら、Mode1 RETRO IIはこう見えてもnanoSIM×2(DSDV対応)にUSB Type-C充電対応の現代的な仕様ですから、複数回線持ち・複数台持ちの方にとっても使い勝手が良いでしょう。
「4Gのフィーチャーフォン風端末で指紋認証に対応している」というのも意外とありそうでないポイントです。最近のスマートフォンに慣れた感覚だと、いちいちロック解除のたびに暗証番号を入力するのも、ましてやロックをかけないのも抵抗が大きいでしょうし、スマートフォンと併用する通話専用端末としてはうれしい仕様です。
また、FMラジオ機能にも実は隠れたこだわりが詰まっています。携帯端末のテレビ(ワンセグ/フルセグ)機能が廃止されるなか、通信回線に依存しない情報手段としてラジオだけは残しているというメーカーは少なくないのですが、スマートフォンではUSB-イヤホンジャック変換ケーブルに受信用アンテナの役割を持たせている機種が多く、肝心な時に変換ケーブルを持っていなかったり、そもそも有線イヤホンを使わない人なら存在を忘れていたりと、端末自体はラジオに対応していても結局受信できないケースが多々想定されます。Mode1 RETRO IIでは内蔵アンテナだけでFMラジオを受信できることにこだわったとのことで、実際に郊外の自宅で試してみたところ、屋内でも問題なく聴取できました。
「Mode1 RETRO II」のスペック・外観写真
- OS:Android 13
- SoC:MediaTek Helio G85
- メモリ(RAM):4GB
- 内部ストレージ(ROM):64GB
- 外部ストレージ:microSDXC(最大1TB)
- ディスプレイ:3.5インチ 1,440×720ドット IPS液晶(タッチ対応)
- アウトカメラ:約4,800万画素
- インカメラ:約1,300万画素
- バッテリー:2,500mAh
- 外部端子:USB Type-C
- SIM:nanoSIM×2(DSDV対応)
- 対応バンド(LTE):1/3/8/11/19/20/26/28/41
- 対応バンド(W-CDMA):1/6/8
- Wi-Fi:IEEE 802.11a/b/g/n/ac
- Bluetooth:5.0
- 生体認証:指紋認証
- 防水/防塵:非対応
- その他の機能:NFC対応(FeliCa非対応)
- サイズ:約112×52×20mm(折りたたみ時)
- 重量:約145g
- カラー:シープホワイト、ウルフブラック