Samsung Electronicsが発表した折りたたみスマートフォンの最新モデル「Galaxy Z Fold5」「Galaxy Z Flip5」。韓国ソウルにて開催されたUnpackedイベントで発表され、日本でも早々に発表されました。今回、「Galaxy Z Flip5」のグローバル版を試用することができたので紹介します。

  • Galaxy Z Flip5

    「Galaxy Z Flip5」。グローバルモデルですが、レビュー用にいわゆる技適(技術適合証明)が取得されていました

開いて大画面、閉じてコンパクトな折りたたみスマホ

「Galaxy Z Flip5は、「縦折り」の折りたたみスマホ。通常の大画面スマホを半分に折りたたみ、コンパクトなサイズにして持ち歩けるというのが特徴です。

開いた状態では約6.7型FHD+ディスプレイで、120Hz駆動のDynamic AMOLED 2Xを採用しています。このあたりのスペックは前モデル「Galaxy Z Flip4」と変わりはないので、スマートフォンとしての使い勝手はさほど変わりません。

  • 開いた状態

    開いて持つと普通のスマートフォン

  • 閉じた状態

    折りたたむと半分のサイズで持ち歩けます。手のひらにすっぽり収まるので、このまま自撮りするときも撮りやすいデザインです

ハードウェアとしての特徴は、ヒンジ部が刷新された点。フレックスヒンジがピタッと閉じるようになりました。フラットにすき間なく閉じられるようになったことで、折りたたんだ状態での厚みも薄くなり、より印象が良くなりました。

  • 閉じた状態の側面

    今まですき間の生じていた折りたたみ部が、ピタッと閉じるようになりました

  • 閉じた状態の側面、反対側

    閉じたところを別の方向から

  • 閉じた状態のヒンジの反対側

    閉じた状態のヒンジの反対側

  • 開いた状態の側面

    開いたところ。厚みが半分になるので通常のスマートフォンと同等です

開け閉めの感覚はこれまで通りという感じですが、自由な角度で固定できるフレックスヒンジは、机の上に置いて使う場合も便利ですし、自由な角度で撮影できるのも便利。ビューワーとして動画を視聴したりSNSを表示したり、見やすい角度で閲覧できるがいいところ。こうした使い勝手の良さは従来通りです。

  • 約45度程度に開いた状態

    開閉の角度の自由度は高く、途中で固定されるので使いやすい

  • 約120度程度に開いた状態

    開く場合はこれぐらいが限度で、これ以上傾けると頭が重くて転がってしまいます

  • 60度程度に開いた状態をフレックスディスプレイ側から見たところ

    カメラを固定して撮影できるのは強みです

本体サイズは、開いた状態でH165.1×W71.9×D6.9mm、折りたたみ時でH85.1×W71.9×D15.1mm。重さは187gとなっています。開いた状態ではちょっと大きめのスマートフォンですが、閉じれば単純に長さが半分になるので、持ち運びやすさは抜群。

大きなスマホを持ち歩きたくはないけれど、大画面スマホの方が普段遣いには便利。そうしたニーズに応えられるのがこの「Galaxy Z Flip5」です。

カバーディスプレイの大型化により閉じた状態で使いやすく

機能として最大のアップデートは、折りたたんだときの背面ディスプレイ(カバーディスプレイ)です。「Galaxy Z Flip4」では1.9型260×512ピクセルと小型だったのですが、「Galaxy Z Flip5」では3.4型720×748ピクセルと大型化しました。

  • サイズが大きくなったカバーディスプレイ

    「Galaxy Z Flip5」のカバーディスプレイは、背面の半分を覆うサイズになりました

  • カバーディスプレイにカレンダーを表示

    カレンダーを表示したところ。十分実用的なサイズです

  • 天気予報をカバーディスプレイに表示

    天気予報もグラフィカルで見やすい

  • 紫外線指数/湿度/風/日の出・日の入りを表示

    週間予報や紫外線指数なども表示できます

このサイズになると、カバーディスプレイだけで十分使えるサイズです。カバーディスプレイには時計やカレンダー、天気などの情報が表示されますが、よりグラフィカルで大画面表示が可能になりました。

  • カバーディスプレイの着信履歴から折り返しも可能

    着信履歴。このまま折り返しできますし、キーパッドを表示しての発信も可能

  • ウィジェットの一覧

    2本指でピンチインすると、ウィジェットの一覧になります

特にカレンダーの表示が実用的で、1カ月のカレンダーを表示し、タッチした日付の予定が見やすく一覧表示されます。天気も1日の天気/週間天気/湿度/日の出・日の入りといった情報が表示されて、本来を開くまでもなく詳細情報が見られて便利です。

大画面になったからこそ、このカバーディスプレイで使えるウィジェットもよりリッチになって、使いやすくなりました。実用的になったといっていいでしょう。ウィジェットとしては、スピードダイヤル/ストップウォッチ/タイマー歩数なども用意されています。

最も期待度が高いのは「アプリ」です。これは通常のアプリをカバーアプリで起動する機能ですが、「Galaxy Z Flip5」で起動できるアプリは限定されたもの。標準のメッセージアプリやGoogleマップ、YouTube、Netflixといったアプリに加え、Google Playからインストールしたアプリも一部利用できるようです。

  • カバーディスプレイで実行できるアプリ

    一部のアプリはカバーディスプレイで起動することも可能。LINEが使えるのは便利そうですが、決済系アプリは表示されませんでした

  • カバーディスプレイでYouTubeを再生

    YouTubeなどの再生も可能です

  • カバーディスプレイでマップを表示

    マップを表示してルート検索もできます。いちいち開かないでもルートを確認できるのは便利

たとえばGoogleマップでは、地図を見て、検索して、現地へのルート案内まで、そのままカバーディスプレイ内で実行できます。ルート案内をすれば、本体を開かない状態でも確認できます。

「本体を開く」というワンアクションが必要というのは、折りたたみスマートフォンの弱点ではあります。それに対して、カバーディスプレイである程度操作できれば、そのワンアクションが不要になり、コンパクトなスマホとして活用できるようになります。

さすがに3.4型という画面サイズはスマホとしては特殊ですが、実際に使ってみると手のひらへの収まりがいいサイズで、ビューワーとしては十分なレベル。Gmailの通知などは、本文までそのまま確認できるので、サッと内容を確認することができます。そのまま返信などもできればいいのですが、そこまではできないようです。

初期状態でインストールされているもの以外に、追加できるアプリとしてパッと見つけられたのはLINE。これは日本のユーザーにとっても嬉しいところ。素早くメッセージを確認、送信もできますし、ビデオ通話もそのまま閉じた状態で可能です。個人的にはさらにPayPayなどのQRコード決済も使えれば便利だと思うのですが、そのままでは使えませんでした。

少なくとも標準では、自由にアプリをカバーディスプレイで使えないのは残念なところ。今後、日本での発売以降の対応アプリの拡大にも期待したいところです。

安定して高画質のカメラ

カメラは、ハードウェアとしては従来とあまり変わらないようです。メインの広角カメラは、センサーが12メガピクセルでレンズのF値はF1.8、ピクセルサイズは1.8μm、デュアルピクセルAFに対応してOIS(光学式手ブレ補正)も搭載します。超広角カメラも同じく12メガピクセルで、F値はF2.2、ピクセルサイズは1.12μm。

  • メインのデュアルカメラ

    メインのデュアルカメラは従来通り。ハードウェア的な刷新は特にないようです

  • フレックスモードでの撮影

    置いた状態で撮影できるのがメリット

デュアルカメラのスペックは従来通りで、基本的にはSoCの刷新による画像処理プロエッサの進化とソフトウェアのアップデートが中心です。AI性能の向上により、同じハイエンドスマートフォンの「Galaxy S23」シリーズに搭載された「Nightography」によって夜景撮影機能が強化されています。

  • 撮影例1

    くっきりはっきりとした、Galaxyらしい表現。なお、今回掲載の撮影例はすべてHEICで撮影していたため、LightroomでJPEGにストレート現像しています

  • 撮影例2(超広角カメラ)

    こちらは超広角カメラで撮影。周辺画質が劣化していますが、まずまずの描写

色味が豊かで、派手めの色彩は従来通り。全体的にカメラ性能は優れており、安定した描写ができます。

  • 撮影例3

    明暗差の激しい被写体ですが、バランスよく再現。色のりは派手めでこってりしていますがインパクトはあります

  • 撮影例4

    暗部の再現が自然。細部もきちんと描写されています

  • 撮影例5

    ここまでくると不自然なHDRですが、背景の空や木々の緑も白トビしていないのはメリット

折りたたみスマートフォンという特徴を生かして自由度の高い撮影ができるのもメリットです。折りたたんで構えると、ディスプレイを見ながら自由な角度で撮影できます。ちょうどデジタルカメラでも、モニターが固定のカメラとバリアングルモニターの違いのようなものです。

  • 撮影例6
  • 撮影例7
  • 撮影例8
  • 撮影例9

テーブルなどに置いて角度を変えて撮影できるのもメリットで、こうした使い方は従来通りですが、特にカバーディスプレイが大型化したことで、自撮りでの使い勝手が大幅に向上しています。

  • フレックスモードでテーブルに置いた状態

    テーブルに置いての自撮りなどもしやすいのがメリットです

もともと「Galaxy Z Flip」では、カバーディスプレイにメインカメラのライブビューを表示することができました。ただ、従来は画面が小さかったため、ざっくりとして構図と映り方が見られるぐらいでした。「Galaxy Z Flip5」では、この表示が3.4型の大型画面に表示されるようになったので、見やすく、確認しやすくなりました。

折りたたんだ状態で電源ボタンダブルクリックするとカメラが起動するので、手のひらに収めた「Galaxy Z Flip5」で自撮りする、という動作が快適に行えます。当然、メインカメラなので画質も高く、自撮りを頻繁にする人には最高のスマートフォンと言えそうです。

  • 撮影例10
  • 撮影例11

ハイエンドスマートフォンのパフォーマンス

ハイエンドスマートフォンとして、SoCはSnapdragon 8 Gen 2 for Galaxyを搭載。Galaxy S23シリーズと同じ世代の最新SoCを採用しています。スペック面でも十分なパフォーマンスを期待できます。

ベンチマークを実行したところ、順当なアップデートとなっているようです。GFXBench/マンハッタン3.1の結果が奮わなかったのが少し謎ですが、基本的にはパフォーマンスは向上しているといえるでしょう。

ベンチマーク Galaxy Z Flip5 Galaxy Z Flip4
3Dmark Wild Life Extreme 3,730 2,848
GeekBench Single-Core 2,023 1,318
Multi-Core 5,113 4,173
GFXBench マンハッタン3.1 4,966 5,568
マンハッタン3.1オフスクリーン 5,755 6,042
Aztec Ruins OpenGL High Tier 5,446 2,107
Aztec Ruins Vulkan High Tier 3,480 2,356
GeekBench ML CPU 592 514
GPU 2,408 2,125
NNAPI 650 2,821

ストレージは256GBまたは512GB、メモリは8GB。日本モデルはFeliCaも搭載されていますし、防水防塵、eSIMを含むデュアルSIMなど、ハイエンドスマートフォンとしても間違いのないスペックで、折りたたみというだけでない魅力があります。

  • GeekBenchのテスト結果

    GeekBenchのテスト結果

  • 3Dmarkの結果

    こちらは3Dmarkの結果

日本での登場がスピーディに

こうして登場した「Galaxy Z Flip5」ですが、国内発表も8月22日に行われました。7月26日のグローバル発表から1カ月弱と、今まで以上にグローバル版から日本版発表までのタイムラグが短くなりました。ブランド方針の改定により、「Samsung」ロゴを「Galaxy」ロゴに変更するといった対応の必要がなくなったことが功を奏しているのかもしれません。

いずれにしても、国内販売が近づいたことで、期待度が高まる「Galaxy Z Flip5」。ヒンジの進化などは、触れてみて違いが分かる部分ですが、やはりカバーディスプレイの大型化は格段の進化です。

カバーディスプレイの使い勝手と持ち運び時のコンパクトさ、開いたときの大型ディスプレイの使いやすさは得がたい特徴で、多くの人に推奨したい製品です。