現在劇場公開中の、スタジオジブリ最新作『君たちはどう生きるか』。その上映形態のひとつとして、通常のスクリーンよりも画質と音質にこだわった「Dolby Cinema」(ドルビーシネマ)バージョンがある。今回スタジオジブリの担当者が、同作を対応作品として制作するなかで感じた利点などを報道陣に説明した。

  • 左からスタジオジブリの奥井敦氏、古城環氏
    (C)2023 Studio Ghibli

登壇したのは、『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年公開)以降のスタジオジブリ作品すべてで撮影監督・映像演出に参加し、現在は執行役員 映像部長 エグゼクティブイメージングディレクターを務めている奥井敦(おくい・あつし)氏と、『千と千尋の神隠し』(2000年公開)からポストプロダクション班に参加、さまざまな作品で編集作業から音響作業までの制作管理を担当している古城環(こじょう・たまき)の2名。

ドルビーシネマは、広色域による鮮明な色彩と幅広いコントラストを表現するハイダイナミックレンジ(HDR)を特徴とする「Dolby Vision(ドルビービジョン)」の映写システムと、立体音響技術「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」を採用し、映像と音響を最適なシアターデザイン(内装設計)で上映している点が通常スクリーンとの大きな違いであり、ユニークなポイントでもある。

奥井氏は、『君たちはどう生きるか』のドルビーシネマバージョンを作るにあたって映像的にこだわったポイントについて、具体的な場面をあげて説明。アオサギが太陽に重なってそこから降りてくる明るいシーンや、逆に冒頭で描かれる戦時中の灯火管制下の非常に暗いシーンなど、“HDRらしさ”が求められるシーンがいくつかあるが、そういったところで「SDRの画や仕上げとの差別化はしなきゃいけないけれども、かけ離れてもいけない。そこの調整がすごく今回シビアに感じた」と振り返った。

  • 主に『君たちはどう生きるか』映像にまつわる部分を説明した奥井敦氏

サウンド面でこだわったポイントについては古城氏が説明。『風立ちぬ』では音の演出面でモノラル音声を採用していたが、「今回はDolby Atmosを採用したことで『うるさい』って言われない塩梅をどうしていくかがまずひとつ(笑)」と語り、報道陣の笑いを誘った。

古城氏によると、今回の音響チームの合言葉は「引き算、迷ったら外しましょう」だったという。「基本的にアクション映画みたいに派手なシーンがあまりなく、特に前半は(劇場で)隣の人の鼻息も気になるぐらい静かなので、画と音のバランスを音響演出の担当者と相談しながら進めた。オブジェクトを動かしてどうこうというよりは“空間の広がり感”重視で、作品の仕込みをお願いした」(同)。

  • 古城氏は、『君たちはどう生きるか』のサウンド面について説明

古城氏はまた、ドルビーの技術をジブリ作品で使うことの意義について、報道陣からの質問に答えるかたちで「わかりやすくいえば没入感だと思う。製作者側というか、我々がこういう状態、品質でみて欲しいという最高峰のところに(ドルビーシネマ版が)あるので、それがより一層物語に沁みてくるような効果を持っているんじゃないか」とコメント。「もっとああなれば良かった。こうなれば良かったっていうことも含めて、その完成までに試行錯誤している部分が一番素直に表現されている状態がドルビーシネマなのではないか」と持論を語った。

なお、宮﨑監督からはドルビーシネマ版に関するコメントは特段なかったようだが、ドルビーの技術を使った表現には満足しているようだ、とのこと。

  • (C)2023 Studio Ghibli

7月14日の劇場公開からひと月以上がたった今も注目を集めている『君たちはどう生きるか』は、公開から34日間で観客動員数439万人を突破(8月16日時点)。翌々日の18日には場面写真と声優陣を公開した。同作は「第48回トロント国際映画祭」や「第71回サン・セバスティアン国際映画祭」、「第61回ニューヨーク映画祭」といった海外映画祭への出品も決定している。

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