iPadのクリエイティブな活用法のYouTubeで知られる、人気クリエイターのamity_sensei。8月初旬、母校である京都市立美術工芸高等学校(以下、京都市立美術工芸高校)を訪れ、講師としてiPadアプリ活用の特別授業を実施しました。同校は、2016年に1人1台のiPadを導入して、美術教科と普通教科のすべての授業で活用。「美術系の学校は就職先がない」といった考えが広まるなか、iPadは「デザイン思考をもとにこれからの社会で通用する学生の育成」を後押ししていました。

  • 母校の京都市立美術工芸高校でiPadアプリ活用の特別授業を実施した、人気クリエイターのamity_sensei

  • 夏休み中にもかかわらず、特別授業には12名の生徒が参加。参加は強制ではなく、みんなamity_senseiの授業を見たいと自発的に集まった

amity_senseiが母校で凱旋授業を実施!

amity_senseiが特別授業を実施したのは、京都駅から徒歩10分ほどの好立地にある京都市立美術工芸高校。かつては銅駝(どうだ)美術工芸高等学校(以下、銅駝美術工芸高校)という校名でしたが、2023年4月に新校舎に移転するとともに校名を変更しました。

銅駝美術工芸高校のOGであるamity_sensei。現役当時は「授業をサボりまくっていて落第寸前だった」そうですが、iPadを用いたクリエイティブ活用で一躍人気クリエイターとして知られる存在に。銅駝美術工芸高校在籍時の先生が今でも京都市立美術工芸高校で教鞭を執っていることがきっかけで、今回の特別授業が企画されました。夏休み期間中ながら、12名の学生が自前のiPadを持参して登校し、いつもは画面越しに見つめるamity_senseiを目の前にして直接レッスンを受けました。

  • 高校時代に美術を専攻していたamity_sensei。iPadを活用し始めたのは社会人になってからとのこと

  • 生徒は自分のiPadやApple Pencilを持参。すべて個人所有の端末なので、ケースも好みのものを装着している

今回は、アドビシステムズの無料アプリ「Adobe Fresco」を利用し、デジタルペインティングの基本やアニメーション作成に挑戦。Webサイトを検索して見つけた寿司ネタの画像を見ながらデッサンして色を付け、回転寿司のように回るアニメーションを作成する、という流れでした。学生はふだんからiPadを使いこなしているだけに、デッサンや色付けもお手のもの。授業をのぞきに来た先生たちは「iPadだとこんな簡単にできるんやねぇ」と驚いていました。

  • ネットで見つけた寿司ネタの写真を見ながら、Adobe Frescoで描画していく。ふだんAdobe Frescoを使っている生徒は少なかったが、ちょっとコツを教えてもらうとすぐさま使いこなしていた

  • iPadの機種はさまざま。スタイラスはApple Pencilを使っている生徒がほとんどだった

  • amity_senseiは教室内を精力的に回って、生徒のiPadを見ながら直接アドバイスしていた

  • amity_senseiの授業を受けたいと、先生も数人飛び入りで参加。笑顔あふれる楽しい授業となった

学びの改革に合わせて導入したiPadの効果は予想以上

今回訪れた京都市立美術工芸高校は美術系の高校ですが、同校の名和野新吾校長は「美術を学ぶだけでは社会で通用しない、という考えが社会や保護者の間に広まってきた」と危機感を感じたそう。「これからの時代に必要な美術教育とは何か?」と考え、「“美”で未来への希望を創る学校」を目指す学校像に、「しなやかに、新たな自分を描く人へ」を育てる生徒像に掲げ、デザイン思考でみずから課題を発見して解決できる生徒を育てる教育方針にしたといいます。

  • 京都市立美術工芸高校の名和野新吾校長。銅駝美術工芸高校から引き続いて校長を務める

学びの改革に合わせて、探究的な学びへの活用を目的に2015年に導入を開始したのがiPadです。先進校への視察を経て、まず学校で40台のiPadを導入して学生に貸し出す形で運用を開始。導入の効果が見込めたため、2016年からは個人で購入したiPadを用いた1人1台の環境を構築しました。

渡邉野子副校長は「学習意欲や関心が高められること、知識自体が深まること、他者と共同で学ぶ力が高まること、課題設定力や解決力が身につくことを目指してiPadの活用を開始したが、どれも想定以上だと感じている。生徒たちの様子を見ていると、やってみて分からないことを楽しむ余裕が出てきたり、失敗することを認める学びの様子も見られた」と手応えを語ります。現在は、学外との連携学習を含め、すべての教科でiPadを活用しているといいます。

  • 京都市立美術工芸高校の渡邉野子副校長

近ごろは、iPadで3DスキャンをしてMacと連携させて3Dデータを作成しているほか、生成AIのMidjourneyも導入する予定があるそう。「高校生の時にさまざまな体験をさせることが重要だと感じている。グローバル化する社会の中で、表現者として自分の人生をよりよく生きてほしい」と語る渡邉副校長。

「芸術家の草間彌生さんや『宇宙兄弟』の小山宙哉さん、無印良品のベストセラーであるレトルトカレーを開発した日向桃子さんなど、本校を卒業した人が各界で活躍していてうれしい。もちろん、今回来てくれたamity_senseiもそうだ」と語る名和野校長。iPadで学びの改革を進めた学校に、iPadで世界に羽ばたいたOGが凱旋して生徒によい刺激を与えてくれたことに目を細めていました。

  • 銅駝美術工芸高校在籍時からamity_senseiのことをよく知っているという名和野校長。iPadを武器に世界で知られる存在となったことを誇らしく感じていた

【amity_sensei プロフィール】

iPadクリエイター / アートディレクター。iPadのクリエイティブな使い方をYouTubeで発信しており、チャンネル登録者は34万人を超える。「iPadやデジタルアートの面白さを世界に伝えたい」という想いで活動を続け、Today at Appleをはじめとするさまざまなイベントに出演。2022年、小学生向けのiPadクリエイティブスクール「iPadmate kids」を京都市上京区に創設し、未来のクリエイターを育てる活動も行っている。

  • YouTubeのチャンネル登録者を34万人も抱える人気クリエイターのamity_sensei

  • amity_senseiが運営する小学生向けのiPadクリエイティブスクール「iPadmate kids」