先日、東京ディズニーランドにほど近いシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルで開催されたHPのグレートアジア向けプライベートイベント「Future Ready, Better Together 2023」。内容はすでに小林哲雄氏のレポートで詳細に紹介していますが、実は同日、HPでパーソナルシステムズ事業担当プレジデントを務めるアレックス・チョウ氏に直接お話を伺うチャンスがありました。

パーソナルシステムズ事業担当プレジデントという役職をざっくり筆者の言葉で説明してしまうと、当日登壇されていた重役の方々の中ではコンシューマー寄りの製品も含む領域のこと。お忙しいところ時間をいただけたので、いくつか気になっていたことを直撃取材してきました。

ちなみに、アレックス・チョウ氏はこれまでHP勤続27年。スタンフォード大学で経営工学の学士号と産業経営学の修士号を修めており、HPではアメリカやヨーロッパ、ワールドワイドでPC・プリンティング・サービスにわたる広範な戦略およびオペレーションの要職を務めてきたスペシャリスト・ゼネラリストです。

  • 登壇されていたアレックス・チョウ氏(筆者撮影)

編集部 原(以下、原):本日はお忙しいところインタビューのお時間を割いていただき、ありがとうございます。まずはじめに、ご自分で担当されている業務内容についてかんたんにお伺いしてもよろしいでしょうか。

アレックス・チョウ氏:いきなり複雑なことを聞かれたらどうしようかと思っていたから、気楽に答えられる質問で助かりました(笑)。いまは個人向けを含むパーソナルシステム製品全般のプレジデントを務めていて、パソコンからキーボードやマウスなどの周辺機器、モニターなどのすべてを担当しています。もちろん、ゲーミングデバイスも含んでいます。

:ありがとうございます。さっそく現在の市場状況についてお伺いしたいのですが、現在新型コロナウイルスの大きな需要が一服して、PC業界は大きな谷にあるといわれています。いまの市場について、HPではどのように捉えていますでしょうか。

アレックス・チョウ氏:確かにPC市場は少し落ち込んでおり、これには2つの要因があると考えています。1つは大きな需要の波が過ぎ去り、去年と比べると市場の需要が安定化したこと。もうひとつは経済全体がやや軟調な局面に差し掛かっており、消費者の行動が弱まったことが挙げられます。しかし、この流れは段階的に回復していくものだと考えています。PCには買い替え需要が潜在的に存在していることと、顧客は常に新しい機能をPCに求めているからです。性能はもちろん、セキュリティやコラボレーション、AI機能も大きな買い替えを促進する要因になるはずです。

:ということは、今後のHPの製品にはやはり組み込みのAIであったり、これまでの製品よりも各側面において強化された新モデルが投入されるということなんでしょうか。

アレックス・チョウ氏:先のことについては詳しくお伝えしにくいですが、答えはYesです。HPからは性能、オーディオやビデオ、セキュリティ、AI、さらにサステナビリティの面でもたくさんのイノベーションを備えた製品を投入する予定です。これはグループ内の周辺機器ブランドであるPolyやHyperXと組み合わせることで、さらに強力なものになるでしょう。

:ありがとうございます。少しお話が変わるのですが、今出てきたゲーミングブランド「HyperX」の買収は成功だったと捉えていますか?

アレックス・チョウ氏:はい、私たちはHPファミリーにHyperXブランドを加えることができてとてもよかったと考えています! HPでは「OMEN」というゲーミングブランドを展開しており、PCでのゲーミング体験をHyperXのデバイスでさらに没入感の高いものにできました。HyperXはゲーマーにとって馴染み深いブランドで、ゲーマーのことをとてもよく理解しています。Omen Gaming Hub(筆者注:HPの独自ユーティリティ)でOmenのPCとHyperXのゲーミングデバイスをまとめて設定でき、さらに便利になっています。

:ありがとうございます。ところで、HPといえばOmenブランドでゲーマーにはかなり力が入れられているように感じられる一方、他社ほど「クリエイター向け」と銘打って展開される製品が少ないようにも感じます。これらの層にはどのようなアプローチがとられているのでしょうか?

アレックス・チョウ氏:私たちはクリエイターに対して、3つのアプローチをとっています。1つはクリエイティブを業務にしているユーザー、これに対しては強力なワークステーション製品を展開しています。2つはタッチ操作やペン入力などの操作を目的とするユーザー。これには軽量で高性能なHP Envyシリーズを展開しています。3つめは、昨今増えつつあるゲーマーでストリーミングを行うユーザー。この層にはOmen製品の広範なポートフォリオで対応しています。

:ありがとうございます。そのOmenのゲーマー向けアプローチとしては、先日開催されていた「VALORANT Champions Tour Pacific 2023」で公式パートナーを務めていた点がとても印象的です。どのような考えでスポンサー参加を決められたのでしょうか。

アレックス・チョウ氏:HPはOmenとHyperXをゲーマー向けに用意しており、今回のスポンサー参加はとても良い施策になりました。大会へのスポンサーを考えるにあたって、とても重要なのはやはりゲームタイトルがどういうものなのかという点です。そのゲームはどのようなエコシステムを備えているのか? どんな人がプレイしているのか? という点をしっかり精査して決定します。数年前には『League of Legends』にもスポンサーとして参加しており、このようなスポンサー施策でプレイヤー市場や地域の成長を促進し、ブランドの強化にもつなげたいと考えています。

:ありがとうございます、とても参考になりました。僕自身も『VALORANT』をよくプレイしているので、ぜひ同タイトルとコラボした公式ライセンスモデルの投入なんかがあるといいなと思います!

アレックス・チョウ氏:VALORANT、とても楽しいゲームですね。大きくマウスを動かして遊ぶゲームなので、大きなマウスパッドや軽いゲーミングマウスの需要がとても大きいです。コラボモデルの要望、しっかり心に留めておこうと思います(笑)。

PCデバイスメーカーとしてグローバルにおける超大手企業、そのコンシューマー製品を一手に担う人物にもかかわらず、終始非常に親しみやすく対応いただくことができました。HPが今後投入する製品がどんなものになっていくのか、どんなイノベーションが搭載されているのか楽しみです。