ワイモバイルから6月29日に発売されたモトローラ製スマートフォン「moto g53y 5G」を試用しました。オンラインストア価格で21,996円、MNPでシンプルM以上のプランを選択すれば一括1円と非常に手頃な価格で手に入るうえ、ワンランク上の機種と比べても見劣りしない機能を備えたお買い得な機種です。

  • moto g53y 5G

    moto g53y 5G

SIMフリー市場で磨かれた「日本仕様」モデルをワイモバイルでも提供

モトローラは2021年に折りたたみスマートフォン「razr 5G」をソフトバンクから発売しましたが、多くの人に届く“ふつうのスマホ”をキャリアモデルとして納入するのはかなり久しぶりのこと。

ここ数年はSIMフリー市場を主戦場としてきたメーカーですが、その間に日本での製品展開のスタンスも変わってきており、ミドルレンジ~ローエンドの価格帯で細かく刻んだ豊富な選択肢を用意し、そのなかでFeliCa(おサイフケータイ)や防水・防塵に対応する「日本仕様」のモデルも出すようになりました。

今回ワイモバイルから登場したmoto g53y 5Gには、メーカー版SIMフリーモデルの「moto g53j 5G」という姉妹機があり、どちらも性能的にはエントリークラスながら、先述の日本仕様へのローカライズを含めて、機能面では3~4万円クラスの機種と比べても見劣りしない充実した内容となっています。

  • メーカー版は「moto g53j 5G」、ワイモバイル版は「moto g53y 5G」として発売される(写真はg53y)

    メーカー版は「moto g53j 5G」、ワイモバイル版は「moto g53y 5G」として発売される(写真はg53y)

スペックやベンチマークスコアをチェック

先にスペックを紹介しておくと、moto g53y 5Gの主な仕様は下記のとおり。moto g53j 5Gとの違いは、ハードウェアとしてはメモリ容量が8GBから4GBに減っていること、ワイモバイル版専用のカラーが追加されたことの2点です。

  • OS:Android 13
  • SoC:Qualcomm Snapdragon 480+ 5G(2.2GHz+1.9GHzオクタコア)
  • メモリ(RAM):4GB
  • 内部ストレージ(ROM):128GB
  • 外部ストレージ:microSDXC(最大1TB)
  • ディスプレイ:6.5インチTFT液晶 1,920×1,080ドット(フルHD+)
  • アウトカメラ:約5,000万画素 F1.8(広角)+約200万画素 F2.4(マクロ)
  • インカメラ:約800万画素 F2.0
  • SIM:nanoSIM/eSIM
  • Wi-Fi:IEEE 802.11a/b/g/n/ac
  • Bluetooth:5.1
  • バッテリー:5,000mAh
  • 外部端子:USB Type-C、イヤホンジャック
  • 生体認証:指紋認証、顔認証
  • その他の機能:FeliCa、NFC
  • 防水/防塵:IPX2/IP5X
  • サイズ:約163×75×8.2mm
  • 重量:約183g
  • カラー:インクブラック、アークティックシルバー、ペールピンク(ワイモバイル限定色)

SoCはクアルコムの「Snapdragon 480+ 5G」を搭載。エントリーモデルに広く採用されたSnapdragon 480 5Gのクロックアップ版にあたり、8nmプロセスで製造され、CPUは2.2GHz×2+1.9GHz×6のKryo 460、GPUはAdreno 619という構成です。

メモリ容量に関してはメーカー版の8GBから4GBに半減した、という見方もありますが、言ってしまえばこのクラスのCPU/GPU性能で8GBほどの大容量メモリを活かせる場面はそう多くありません。前モデル比でメモリ容量だけでも性能面での進化を見せる必要があったメーカー版、価格を重視し現実的なメモリ容量に抑えたキャリア版といった考え方の違いが読み取れる部分で、実用上はこのクラスなら4GBでも問題ないと感じました。

  • モトローラらしくAndroid標準に近いシンプルなUIを採用。アニメーションなどのグラフィカルな要素のカスタマイズは少なく、動作に影響する負荷は小さそうだ

    モトローラらしくAndroid標準に近いシンプルなUIを採用。アニメーションなどのグラフィカルな要素のカスタマイズは少なく、動作に影響する負荷は小さそうだ

  • メモリ容量はg53jの8GBに対し、g53yは4GB。ただし、RAMブースト(仮想メモリ)機能で5GB相当に拡張できる

    メモリ容量はg53jの8GBに対し、g53yは4GB。ただし、RAMブースト(仮想メモリ)機能で5GB相当に拡張できる

ベンチマークアプリの測定結果を見ていくと、CPU性能を測る「Geekbench 6」ではシングルコア性能が「750」、マルチコア性能が「1807」。ゲームなどのグラフィック性能を測る「3DMark」の「Wild Life」モードでは「983」でした。

過去に筆者がレビューした端末のスコアと照らし合わせてみたところ、ワンランク上の中堅機種の多くが採用している「Snapdragon 695 5G」の場合、Geekbench 6でシングルコア900点/マルチコア2,000点程度、3DMark(Wild Life)で1,200点程度が平均的な数値でした(※Geekbench 5系ではもう少し低い値が出ます)。Snapdragon 4シリーズか6シリーズかという名称に惑わされがちですが、意外と性能差は小さいのではないかと思います。

  • Geekbench 6のベンチマークスコア

    Geekbench 6のベンチマークスコア

  • 3DMark(Wild Life)のベンチマークスコア

    3DMark(Wild Life)のベンチマークスコア

ミドルレンジ以上のスマートフォンを使い慣れた人には動作にストレスを感じる場面もあると思いますが、比較的新しいSoCなので通信面(モデム性能)などの足回りは良好ですし将来的なアップデートの不安要素も少ないため、生活必需品としてのエッセンシャルな用途でスマートフォンを使う人には十分な性能でしょう。

メーカー版の姉妹機を持つ機種ならではの長所として、キャリアモデルながらBand 18/26(au)やBand 19(ドコモ)など他キャリア向けのバンドも省略されずそのまま入っています。キャリア間の乗り換えのハードルを下げる働きかけがあるなか、こういった部分も少し気にして機種を選んでおくと将来的に回線契約を見直したくなったときの選択肢が広がります。

FeliCa対応以外の機能にも注目

基本性能だけで言えば2万円クラスの機種として突出したところはなく、価格相応の堅実なつくりです。しかし、機能面を見ていくとワンランク上の要素も含まれています。

まずFeliCa対応については冒頭で触れたとおり。ただ、SIMフリーの2万円台の機種では特筆すべき要素でも、キャリアモデルではほぼ必須要件のように入っているのであまり驚きはないかもしれません。防水・防塵についてはIP52レベルに留まり、IP67やIP68が多いキャリアモデルのなかでは低めの保護等級です。水に浸けても安全なほどではなく、雨に降られても安心ぐらいに捉えておくのが無難でしょう。

  • 約5,000万画素(画素ピッチ0.64μm)F1.8のメインカメラはPDAFに対応。約200万画素 F2.4のマクロ撮影用カメラも搭載する

    約5,000万画素(画素ピッチ0.64μm)F1.8のメインカメラはPDAFに対応。約200万画素 F2.4のマクロ撮影用カメラも搭載する

メインカメラには、クアッドピクセル技術やPDAFにも対応した約5,000万画素のセンサーを採用。ストレスなく撮影できる十分なAF性能があり、暗所での写りもまずまず。自然な色味で扱いやすいカメラだと感じました。サブカメラは約200万画素のマクロのみで、超広角や望遠レンズは備えていないため撮影の幅は限られますが、日常的なシーンをきれいに記録するには低価格帯のスマートフォンとしては期待以上といえます。

  • 過度に彩度を上げたり明るく仕上げたりはせず、ナチュラルな写り

    過度に彩度を上げたり明るく仕上げたりはせず、ナチュラルな写り

  • 料理もおいしそうな色味で撮れた。作例なのでオートで撮ったものをそのまま出しているが、やや暗めに写る傾向があるのでスライダー操作で露出を少しプラスに振ってあげるとグッと良くなる

    料理もおいしそうな色味で撮れた。作例なのでオートで撮ったものをそのまま出しているが、やや暗めに写る傾向があるのでスライダー操作で露出を少しプラスに振ってあげるとグッと良くなる

  • 夜間の作例。明るく光る看板も白飛びせず鮮やかに撮れている

    夜間の作例。明るく光る看板も白飛びせず鮮やかに撮れている

また、スピーカーの品質にも驚かされました。この価格帯ならステレオスピーカーを搭載している時点で十分なアドバンテージとなりますが、立体音響技術「Dolby Atmos」まで入っています。厚みのないスカスカな音だったり、あるいは低音ばかりが際立ったりといったこともなく、音楽・動画ともにスマートフォンの内蔵スピーカーとしては十分楽しめるものでした。

実は最近のモトローラ製スマートフォンは最安クラスのmoto eファミリーを除くほとんどの機種が同様にDolby Atmos対応のステレオスピーカーを備えており、ひそかに注力されている部分です。6.5インチと大きめの画面サイズや快適な5G通信とあわせて、さまざまなコンテンツを楽しむ上でうれしい要素です。

  • 端末上部にはDolby Atmos対応を示すロゴが入っている

    端末上部にはDolby Atmos対応を示すロゴが入っている

このほか、モトローラのスマートフォンといえば多くの機種に搭載されているジェスチャー機能も長所のひとつ。たとえば暗いところでスマートフォンを懐中電灯代わりにしたいときに端末を振り下ろすだけで背面のLEDを点灯させたりと、かゆいところに手が届くアクションがいくつも用意されています。

端末の外観は至ってシンプル。樹脂素材を多用したボディは価格相応のつくりですが、丸みを帯びたフォルムだった昨年の「moto g52j 5G」からテイストが変わり、フラットな背面をサイドフレームで囲い、過度な装飾を控えた落ち着いた仕上がりに。

  • 画面サイズは6.5インチと大きめだが、厚さ8.2mm/重量183gと薄型軽量で片手でも十分扱える

    画面サイズは6.5インチと大きめだが、厚さ8.2mm/重量183gと薄型軽量で片手でも十分扱える

  • 背面・側面ともに光沢を抑え落ち着いたトーンでまとめられている。指紋センサーは右側面の電源ボタンに内蔵する

    背面・側面ともに光沢を抑え落ち着いたトーンでまとめられている。指紋センサーは右側面の電源ボタンに内蔵する

  • 付属のTPU製クリアケースを装着した姿

    付属のTPU製クリアケースを装着した姿

グローバル版(moto g53)ベースのデザインなので必ずしも日本市場での受けを狙ったものではないはずですが、他社ではユーザー調査を行って「日本人好み」を追求した結果これに近い方向性となった事例もあることを踏まえると、偶然かもしれませんが日本人受けは良さそうに見えます。

SIMフリー版のmoto g53j 5Gはインクブラックとアークティックシルバーの2色展開で、ワイモバイル版のmoto g53y 5Gだけの限定色として3色目のペールピンクが用意されています。今回はペールピンクを主に試用しましたが、暖色寄りのシルバー、あるいは薄めのカッパーゴールドといった具合の絶妙な色味で、持つ人を選ばないカラーでした。

  • 今回はワイモバイル限定色の「ペールピンク」を主に試用した。ピンクと言っても派手な色味ではなく、ビジネスシーンでも違和感のない上品な色だ

    今回はワイモバイル限定色の「ペールピンク」を主に試用した。ピンクと言っても派手な色味ではなく、ビジネスシーンでも違和感のない上品な色だ

結論としては、「通常価格2万円・MNP1円」クラスのお買い得機種のなかでは、軽めのゲームも遊びたい人などCPUなどの基本性能を重視するならベストチョイスではないものの、おサイフケータイや高品質スピーカー、ジェスチャー操作など+αの機能や洗練されたデザインを重視するなら、選ぶ価値のある機種といえるでしょう。