ワイモバイルから2022年12月に発売されたAndroidスマートフォン「Libero 5G III」を試用してみました。ワイモバイルオンラインストアでの販売価格は21,996円、契約方法によっては割引が適用され、新規/MNPなら3,996円で購入できる非常に安価な機種ですが、あなどれない実力を秘めています。
基本性能やカメラの仕上がりをチェック
まずはスペックからチェックしていきましょう。Libero 5G IIIの主な仕様は下記のとおりです。
- OS:Android 12
- SoC:MediaTek Dimensity 700(2.2GHz+2.0GHz オクタコア)
- メモリ(RAM):4GB
- 内部ストレージ(ROM):64GB
- 外部ストレージ:microSDXC(最大1TB)
- ディスプレイ:6.67インチ 有機EL 2,400×1,080ドット(フルHD+)
- アウトカメラ:約1,300万画素(メイン)+約200万画素(深度)+約200万画素(マクロ)
- インカメラ:約800万画素
- 最大通信速度(5G):下り最大1.8Gbps/上り最大150Mbps
- 最大通信速度(4G):下り最大285Mbps/上り最大46Mbps
- SIM:nanoSIM/eSIM
- Wi-Fi:IEEE 802.11a/b/g/n/ac
- Bluetooth:5.1
- バッテリー:4,120mAh
- 外部端子:USB Type-C
- 防水/防塵:IPX5、IPX7/IP5X
- 生体認証:指紋認証
- その他の機能:FeliCa(おサイフケータイ)、NFC対応
- サイズ:約168×78×9.1mm
- 重量:約207g
- カラー:パープル、ホワイト、ブラック
同じくワイモバイルから同時期に発売された低価格スマートフォンである「Android One S10」を別記事でレビューしましたが、見比べてみると基本性能はほぼ互角。SoCはMediaTekのDimensity 700を採用しており、他キャリアのエントリーモデルでいえば「Galaxy A23 5G」なども同じチップを使っています。
オープンマーケット向けのSIMフリー端末であれば、低価格帯では割り切って4G端末を新規投入するメーカーもまだまだあり、そうなると自然とSoCの選択肢も広がってワンランク下のHelioシリーズを採用する機種も多いのですが、「5Gへのマイグレーションやネットワーク整備の都合を考えると4G端末の利用者は減らしていきたい」「割引規制が厳しいなか、販売戦略上なるべく元値が安い端末も用意しておきたい」というジレンマを抱えるMNO各社にとって、5G端末を可能な限り安く提供するにはこのぐらいのスペックが落としどころなのだろうと推察できます。
Geekbench 6と3DMarkでベンチマークテストを行ってみましたが、スコアは先述のAndroid One S10やGalaxy A23 5Gとほぼ変わらず、Dimensity 700搭載でメモリ4GBの機種としては平均的なパフォーマンスが出ていると考えられます。
実使用においては、スペックの近い機種と比べてもキビキビと動き、動作のもたつきを感じにくいよううまくチューニングされている印象です。もちろん「ゲームも快適にプレイできる」とは到底言えないまでも、日常利用なら不足なく使えるでしょう。
続いて、スマートフォンを選ぶ上で最重要ポイントという人も多いカメラの仕上がりをチェック。
約1,300万画素のメインカメラと約200万画素のマクロカメラ、ポートレートモードでの背景ぼかしなどに使われる深度センサー(約200万画素)という構成のトリプルカメラを搭載しており、超広角や望遠に画角を切り替えて撮ることはできませんが、基本となるオート撮影では鮮やかで見栄えの良い写りです。
このクラスの機種では省略される場合が多いマニュアルモードも搭載されているほか、モノクロ背景で特定の色だけを抽出して際立たせる「モノカラー」など遊び心のある撮影機能も楽しめました。
おサイフケータイに画面内指紋認証、eSIM対応……機能の充実ぶりに驚き
基本性能だけを見ればキャリアのエントリークラスの5Gスマートフォンとしては平凡な内容ですが、付加機能に目を向けると意外なほど充実しており、2万円クラスの機種としてはなかなかの芸達者です。
海外メーカーの廉価機でありながらIP57レベルとはいえ防水・防塵仕様、FeliCa/おサイフケータイにも対応させしっかりと日本向けに作り込まれていますし、まだ低価格帯のAndroid端末では普及率が低いeSIMも利用できます。
また、この価格帯で画面内指紋認証を盛り込んだことも驚きです。一般的な光学式センサーで速度・精度は特別秀でたものではありませんが、同クラスの機種からの買い替えなら画面内指紋認証は初体験というユーザーが多いはずで、画面に指をかざすだけでロックが解除されるという動作は先進性を感じさせるでしょう。指紋認証後にそのまま指を決まった方向にスワイプするだけでよく使うアプリを開ける「クイック起動」という拡張機能も便利でした。
画面下に指紋センサーを搭載する以上は、構造上ほぼ必須となる有機ELディスプレイを採用するということでもあります。有機ELのイメージが強いサムスンでさえ、同クラスのGalaxy A23 5GではHD解像度の液晶ディスプレイを採用しているくらいで、フルHD解像度の有機ELによる高画質な映像体験も競合機種に対するアドバンテージといえます。
一時期は大手3キャリアへの納入を果たしSIMフリー市場にも参入したりと日本市場で活発な動きを見せていたZTEですが、ここ2~3年はスマートフォンに限ればワイモバイル向けのみと存在感が薄れてしまっています。実際に使ってみるとコストパフォーマンスや完成度は高く、ダークホース的な良機種だと感じました。