エンコード性能はRTX 4060 Tiと変わらず

ここからはクリエイティブ系の処理をテストする。まずは、3DCGアプリの「Blender」を使ってGPUによるレンダリング性能を測定する「Blender Open Data Benchmark」を実行しよう。

  • Blender Open Data Benchmark

一定時間内にどれほどレンダリングできるのかをスコアとして出すベンチマーク。すべてのテストでRTX 3060を上回った。そして、RX 7600より2.5倍以上のスコアを出している。

次はベンチマークアプリの「Procyon」に追加された「AI Inference Benchmark」を実行しよう。これは、GPUを使ってさまざまなAI処理を行いスコア化するもの。Windows上で機械学習を行うためのAPIである「Windows ML」とNVIDIAの機械学習を高速に実行するためにSDKである「TensorRT」の両方で試した。なお、RX 7600はTensorRTに対応していないので、Windows MLだけ実行している。

  • Procyon AI Inference Benchmark

このテストでもRTX 3060に対して約1.4~1.5倍のスコアを出しており、AI処理についても最新世代のGPUのほうが強いのが分かる。

続いて、GPUのハードウェアエンコーダーによる動画エンコード性能をチェックしてみたい。動画編集アプリの「DaVinci Resolve STUDIO 18」でApple ProResの4K素材を使ったプロジェクト(約2分)をそれぞれH.264、H.265、AV1に変換する速度を測定してみた。RTX 4060/4060 Ti/3060は品質:80Mbps/Rate Control:固定ビットレート/Preset:速度優先の設定で、RX 7600は品質:80Mbps/Rate Control:固定ビットレート/Preset:Prefer Speedの設定でエンコードを実行している。

  • DaVinci Resolve STUDIO 18

RTX 4060とRTX 4060 Tiは第8世代のNVENCが1基だけなので、エンコード速度もほぼ同じだった。その一方で、RTX 3060のNVENCは1世代古いのでH.264/H.265のエンコード速度はかなり遅くなり、AV1のエンコードには対応していない。RX 7600はハードウェア的にはAV1のエンコードに対応しているが、DaVinci Resolve側がまだ未対応となっている(ベータ版では対応)。

「xxx60」シリーズとしては優秀だが、価格は高め

最後に温度とクロックの推移をチェックしよう。サイバーパンク2077を10分間プレイした際の温度と動作クロックの推移を「HWiNFO Pro」で測定している。GPU温度は「GPU Temperature」、クロックは「GPU Clock」の値だ。室温は24度。バラック状態で動作させている。

  • 温度とクロックの推移

ブーストクロックは2,685MHz前後で推移。仕様上のブーストクロック2,490MHzなので、ゲーム中はそれよりも高クロックで動作していた。温度は最大69度、67度前後で推移と2スロット厚のクーラーとしては十分な冷却力だ。

と、ここまでがGeForce RTX 4060のテスト結果となる。軽~中量級のゲームならフルHDで高いフレームレートが出せて、重量級ゲームもDLSS 3に対応していればレイトレーシング有効&高画質でも快適に遊べるだけのパワーがある。GTX 1060、RTX 2060、RTX 3060と歴代人気GPUとなっている「xx60」シリーズの最新モデルとして優秀な性能だが、52,800円スタートという価格は高いと言わざるを得ない。海外では299ドルなので、もう5,000円安ければと思うところ。DLSS 3がより身近になったのはうれしいが、フルHD解像度での消費電力がほとんど変わらず、より高いフレームレートを出せるRTX 4060 Tiがもう7,000円プラスで買えるという状態を考えると非常に悩ましい。RTX 3060/3060 Tiがまだまだ市場にあり、人気が高いことを考えると、普及するにはちょっと時間はかかりそうだ。