2023年6月29日22時、NVIDIAの新ミドルレンジGPU「GeForce RTX 4060」の発売がスタートする。それに先駆けてパフォーマンス情報が解禁となったのでさっそくレビューをお届けしよう。比較対象として一つ上のグレードとなるRTX 4060 Ti(8GB版)、前世代のRTX 3060、AMDのRadeon RX 7600を用意。パフォーマンスや消費電力をチェックしていく。

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    今回試用したのはMSIの「GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC」。執筆時点で価格は明らかになっていないが、NVIDIAによる国内価格の目安は“52,800円より”となっている

GeForce RTX 4060は、2023年5月にRTX 4060 Tiと同時に発表済み。7月発売予定としていたが、前倒しになった。ターゲットはフルHDでのゲームプレイ。NVIDIAでは多くの人気ゲームをフルHDで快適に楽しめるとしている。まずは、スペックをおさらいしておこう。

GeForce RTX 4000シリーズのスペック
GPU名 RTX 4070 RTX 4060 Ti RTX 4060
CUDAコア数 5,888 4,352 3,072
ベースクロック 1920MHz 2310MHz 1830MHz
ブーストクロック 2475MHz 2535MHz 2460MHz
メモリサイズ GDDR6X 12GB GDDR6 8GB/16GB GDDR6 8GB
メモリバス幅 192bit 128bit 128bit
RTコア 第3世代 第3世代 第3世代
Tensorコア 第4世代 第4世代 第4世代
アーキテクチャ Ada Lovelace Ada Lovelace Ada Lovelace
DLSS 3 3 3
NVENC 第8世代 第8世代 第8世代
カード電力 (W) 200 160/165 115
システム電力要件 (W) 650 550 550
電源コネクタ 8ピン×2または300W以上の12VHPWR×1 8ピン×1または300W以上の12VHPWR×1 8ピン×1または300W以上の12VHPWR×1

一つ上のRTX 4060 Ti(8GB版)からCUDAコア数を減らしたもの、と言ってよいだろう。ビデオメモリはGDDR6 8GB、メモリバス幅128bitと共通点は多い。コア数が減ったことでカード電力は115WとRTX 40シリーズでもっとも消費電力が少ないGPUになっているのもポイントだ。5.3万円からの価格で、低消費電力、それでDLSS 3が利用できる、というのがスペックから見えるRTX 4060の強みと言える。

24MBの大容量2次キャッシュを備えることで、ビデオメモリへのアクセス頻度を減らし、性能とワットパフォーマンスを向上させている点はRTX 40シリーズ共通の特徴だ(RTX 4060 Tiは32MB)。前世代で同じグレードに当たるRTX 3060は、2次キャッシュはわずか4MBでカード電力は170Wとなっている。

  • 大容量の2次キャッシュを備えることでビデオメモリへのアクセス頻度を下げてパフォーマンスを向上させているのはRTX 40シリーズ共通の特徴

なお、ハードウェアエンコーダーのNVENCはほかのRTX 40シリーズと同じく第8世代なのでAV1のエンコードに対応する。1基だけしか搭載していないので、2基備えるRTX 4090/4080/4070 Tiの同時使用することでエンコード速度を高める「デュアルエンコード」には非対応である点は注意したい。

そのほか、Ada Lovelaceアーキテクチャの採用など基本的な特徴はRTX 4090/4080/RTX 4070 Tiと同じだ。詳しく知りたい方はRTX 4090のレビュー「「GeForce RTX 4090」の恐るべき性能をテストする - 4K+レイトレで高fpsも余裕のモンスターGPU」で確認してほしい。

性能テスト前にMSIの「GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC」を見ていこう。ファクトリーOCモデルで、ブーストクロックを定格の2,460MHzから2,490MHzに向上させている。カード電力は定格と同じ115Wだった。

  • GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OCのカード長は199mmとコンパクト

  • 重量は実測で542gだった

  • 厚みはぴったり2スロット分だ

  • 補助電源は8ピン×1だった

  • 出力はDisplayPort×3、HDMI×1とGeForceでは一般的な仕様

  • GPU-Zによる情報。ブーストクロックは定格から若干アップの2,490MHz。なお、接続はRTX 4060 Tiと同じくPCI Express 4.0 x8だ

  • カード電力は定格通りの115W

RTX 3060より約4割の性能アップで消費電力は20~30W低下

さて、性能チェックに移ろう。テスト環境は以下の通りだ。Resizable BARは有効にした状態でテストしている。比較対象としてGeForce RTX 4060 Ti Founders Edition、GeForce RTX 3060(8GB版)、Radeon RX 7600(リファレンス)を用意した。CPUのパワーリミットは無制限に設定。ドライバに関しては、RTX 4060はレビュワー向けに配布された「Game Ready 536.20」、RTX 4060 TiおよびRTX 3060は「Game Ready 536.23」、RX 7600は「Adrenalin 23.5.1」を使用している。

【検証環境】
CPU Intel Core i9-13900K(24コア32スレッド)
マザーボード MSI MPG Z790 CARBON WIFI(Intel Z790)
メモリ Kingston FURY Beast DDR5 KF556C36BBEK2-32(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
システムSSD Western Digital WD_BLACK SN850 NVMe WDS200T1X0E-00AFY0(PCI Express 4.0 x4、2TB)
CPUクーラー Corsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、36cmクラス)
電源 Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
OS Windows 11 Pro(22H2)

今回はビデオカードの消費電力を実測できるNVIDIAの専用キット「PCAT」を導入しているので、ゲーム系のベンチマークではカード単体の消費電力も合わせて掲載する。

まずは、3D性能を測定する定番ベンチマークの「3DMark」から見ていこう。

  • 3DMark

RTX 4060は、一つグレードが上のRTX 4060 Tiに比べて2~3割のスコアダウンだ。その一方で、RTX 3060のFire StrikeやTime Spyのスコアと比べると約4割アップと前世代からは大幅に性能向上したと言ってよいだろう。価格的にはRTX 4060より安くなるRX 7600に対しては、レイトレーシングがからむPort RoyalとSpeed Way以外ではいい勝負となっているのは気になるところ。実ゲームではどうだろうか。