パナソニックは2022年末に、「自動計量IH炊飯器」という新しいジャンルの家電を発表しました。スマホアプリから食べたいごはんの量を選ぶと、水と米を内釜へ自動投入して炊飯する画期的な炊飯器です。

  • 「自動計量IH炊飯器(SR-AX1)」は、コンパクトでシャープなデザインも魅力のひとつ。コーヒーメーカーみたいですね

これまでにない製品だけに、パナソニックは独自の「Future Star Program」(以下、FSP)という仕組みを新た設け、まずは200人限定のモニター販売で自動計量IH炊飯器を世に送り出しました。フタを開けてみると、200台の定数に対して応募はなんと約1万件。約50倍の応募が殺到したのです。

そんな背景もあって、2023年7月上旬から自動計量IH炊飯器の一般発売が決定しました。価格はオープンで、推定市場価格は46,000円前後となります。メディア向けのセミナーからお届けします。別記事「お米も水も自動投入、夢みたいな自動炊飯器 - パナソニックの先行体験に応募してみよう」も合わせてご覧ください。

  • 本体サイズは幅17.6×奥行き33.6×高さ33.6cmとスリムでコンパクト。パナソニックの「キッチンポケット」アプリと連動させて便利に使えます

先行モニター販売で判明した「単身世帯」層の需要の高さ

一般的な炊飯器にも「予約炊飯」機能があり、最近はスマートフォンアプリと連動するIoT炊飯器も増えています。しかし、スマホアプリで炊飯を設定するときも、あらかじめ水と洗った米を内釜に入れておく必要がありますし、外出先からの炊飯量変更はできません。急な予定が入って朝に準備した炊飯をキャンセルした場合、帰宅後に炊飯器内の「水に浸かった米」の処理も問題ですね。

一方、自動計量IH炊飯器は本体に水と米(炊けるのは無洗米のみ)をセットしておけば、いつでもお茶碗1杯から4杯まで(0.5~2合)のごはんが炊けます。ユーザーが設定した炊飯時刻に合わせて、本体の水タンクと米タンクから、適切な量の水と米を内釜に投入して炊飯します。「外食予定だったけれど、残業がなくなったからやっぱり炊飯したい」「朝に1合(2杯)でセットしたけど、パートナーが残業で遅くなるから0.5合(一杯)に変える」といった、急な予定変更にも外出先から対応できるのです。

  • 自動計量IH炊飯器の水タンク容量は600mL

  • 米タンク容量は2kg。2kg以下サイズの米を購入すれば、米びつも必要ないんです

この便利さから、パナソニックは当初、自動計量IH炊飯器のおもなターゲットユーザーを「忙しい共働き2人世帯」としていました。しかし、実際に自動計量IH炊飯器の先行体験者の声を聞いてみると、想像以上に1人暮らしからの評価が高かったといいます。今回の一般発売に当たっては、コアターゲット層を夫婦2人世帯、サブターゲットとしてシングル層を想定することになりました。

  • 単身向け家電といえば、パナソニックは2023年初頭に1人向け食洗機「SOLOTA」を発売しています。自動計量IH炊飯器と並べても違和感のないデザインです

自動計量IH炊飯器を使ったしたナマの声は?

発売前に消費者の実際の声を聴いたことによって、パナソニックは自動計量IH炊飯器のメリットも再確認できたとのこと。なかでも多かったのは「ごはんを食べる頻度がアップした」という意見。米や水の計量から解放され、どこからでも、いつでも炊飯(を設定)できる手軽さから「パン食からごはん食に変わった」という世帯も多かったそうです。

  • スマートフォン用アプリの画面。スマートフォンからは時間を設定した予約炊飯のほか、「やわらか」「かため」といった好みの食感も5段階から選べます

  • 本体から操作する場合は、炊きたい米の量を選択して「START」ボタンを押すだけ。0.5合(一杯)ごとにお茶碗のアイコンがひとつ増えます。写真はお茶碗4杯なので、2合の炊飯です。予約などの複雑な操作はスマートフォンのみなので、液晶画面がなくスッキリした操作部分です

試食してみたよ

パナソニックによると「ごはん食が増えた」理由は、手軽さだけではなく「美味しさ」もあるといいます。多くの家庭は炊飯時に米の量をカップで計量し、水の量は内釜の水位線で量ることでしょう。

この方法は、実は適切な量の計測に誤差が出やすかったりします。対して自動計量IH炊飯器は、米と水の量を本体下部に配置した重量計で測ります。正確な米と水の割合で炊飯するため、メーカーが狙った「美味しさ」を再現できるのです。

  • 内釜と「おひつ」を兼ねるパーツを本体から外したところ。おひつをセットする場所の下にIHコイルや重量計を内蔵しています

今回のセミナーでは、実際に炊きたてのごはんを試食しました。炊飯したのは「つや姫」という銘柄の無洗米です。試食では「銀シャリ」「標準」の炊き方を設定していましたが、実際に食べてみるとごはん表面にプリッとした弾力を感じる食感でした。

パナソニックの高機能炊飯器(おどり炊き)は甘みと香りが強く出る印象ですが、自動計量IH炊飯器は比較的さっぱりとした味わい。無洗米の銘柄や「かため」「やわらか」といった設定でも変わってくるとは思いますが、どちらかというと、お米単体で楽しむよりはおかずに合うごはんです。

  • 自動計量IH炊飯器で炊いたごはんを試食するマイナビニュース +Digitalの林編集長。「少しかためで弾力のあるごはん。最近のトレンドでもありますね」(林)

ちなみに、自動計量IH炊飯器には洗米機構がないので、炊飯できるのは無洗米だけ。無洗米には抵抗があるという人もいるかもしれません。パナソニックが無洗米について調査したところ、無洗米が「精白米より美味しい」「精白米と同じくらい美味しい」と感じた世帯は全体の71%もありました。

筆者がセミナーで試食した感想としては、ごはん単品で食べると噛んだあとでかすかに鼻に抜ける独特の香りはするものの、塩昆布などのおかずと一緒に食べると気にならなくなりました。かつては「くさい?」という印象もあった無洗米ですが、いまは格段に美味しくなっているのがわかります。無洗米は手間いらずなだけでなく、「米を洗う必要がないので節水になる」「とぎ汁で水を汚さないのでエコ」といった理由から、無洗米を購入する人が増えているそうです。

  • パナソニックが調査した無洗米のイメージ

試食をしてみて実感できるメリットもありました。ひとつは当たり前ではありますが、「ごはんは炊きたてが美味しい」こと。単身世帯で自動計量IH炊飯器があれば、帰宅時間にあわせて毎日ピッタリ1杯分を炊飯できます。これはかなり贅沢な体験ではないでしょうか。

もうひとつは、自動計量IH炊飯器の「おひつ型 内釜」です。自動計量IH炊飯器は樹脂製の「おひつ」に内釜がセットされ、炊飯後は「おひつ」を外してそのまま食卓に持っていけます。おかわりしたいときも、家族の誰かがキッチンを往復する必要がありません。先行体験者の声では「娘がごはんをよそってくれるようになった」という声もあったそうです。

  • 旅館のおひつみたいに、食卓に置ける形状。樹脂製のおひつは熱くなりにくいため、炊飯直後でも素手で持ち運べる点も気に入りました

自動計量IH炊飯器は「全自動炊飯器」という新ジャンルの家電。いままで世の中に存在しなかった製品だけに、今後普及するかどうかは未知数。とはいえ、個人的には忙しい現代のニーズにぴったりの魅力的な製品だと感じました。

最近は炊飯器にもIoT製品が増えていますが、IoT機能があっても意外とスマートフォンと連動させていないユーザーも多くいます。自動計量IH炊飯器の先行モニターでは、アプリ連携率は96%と高く、遠隔操作の便利さがよくわかる数字です。また「便利さ」「美味しさ」のほか、デザイン面も見逃せません。幅17.6cmというスリムな本体は、米びついらず。炊飯器の置き場所に悩む狭めのキッチンでも、設置しやすいのではないでしょうか。