アドビは6月13日、同社の生成AIである「Adobe Firefly」を利用した機能が、新たにAdobe Creative Cloud製品群の「Adobe Illustrator」で使えるようになったと発表した。

ただし、該当の機能はIllustratorのベータ版に実装されたもので、現状は日本語版での提供時期は未定。つまり、英語版のIllustratorベータ版をインストールした場合のみ利用できる点に留意したい。

  • Generative Recolor

本稿では、Adobe Fireflyの概要をおさらいしつつ、Creative Cloud製品群への展開について、今回のアップデートの位置づけを俯瞰してチェックしたい。

アドビの生成AI「Adobe Firefly」とは

Adobe Firefly(アドビ ファイアフライ)とは、アドビが提供する生成AI機能の名称だ。2023年3月21日に発表したもので、当初は申し込みを経て利用できるプライベートベータ版のWebアプリとして提供を開始。現在はフリーアクセスのWebアプリとなっており、誰でもその機能を試すことができる。

Adobe Fireflyの最大の特徴は、「著作権上の問題がない素材から学習を行っており、生成物が商用利用可能」とされていることだ。

Adobe Fireflyでは、ユーザーは、生成物として表示される複数のバリエーションから適した結果を選択できる。また、プルダウンやスライダ操作などでパラメータを調整するように、直感的に微調整も行える。

具体的な機能としては、「文章から画像を生成する機能(画像生成)」と「文章からテキストフォントのデザインを生成する機能(テキストエフェクト)」の2種類から提供をはじめ、その後も機能を追加している。

今回、Illustratorベータ版に搭載されたのが、Adobe FireflyのWebアプリ版にも登場している、ベクター画像のカラーバリエーション生成機能「Generative recolor」だ。

最近のAdobe Fireflyの主なトピック

3月のAdobe Firefly発表後のトピックを追うと、5月11日には、Googleが提供する会話型AIサービス「Google Bard」に、Adobe Fireflyが組み込まれることが発表された。

また、Adobe Fireflyを活用した機能の、Adobe Creative Cloud製品群への搭載は、5月後半からスタート。まずは、5月23日から「Photoshopデスクトップアプリ(β版)」のなかで、「生成塗りつぶし」機能が提供された(※提供当初の表記は「ジェネレーティブ塗りつぶし」だった)。この機能を活用すると、例えば、写真のサイズを拡張した際に生じる余白を、生成AIによる処理で、自然に埋められる。

  • 広げた余白を、画像を少し被る部分まで選択して、「生成塗りつぶし」を実行すると……

  • AIが生成した画像で、余白が自動で埋まる

続いて、6月8日には、「Adobe Express」に、Adobe Fireflyを利用した機能が実装されることが発表された。まずは仕様を刷新した新しいWebアプリのベータ版上で提供される。具体的な操作としては、画像生成やテキストエフェクトの生成などの基本機能を、デザインツールとしてのワークフローの中で活用できる。

  • 「Adobe Express」において、Adobe Fireflyを活用した機能を利用し、ヤシの木があるビーチで、カニが歩いている写真を生成した様子。プロンプトは英語で入力されている

生成AI機能、Adobe IllustratorとAdobe Expressへ拡大

そして、こうした流れを踏まえて、アドビは6月13日、Adobe Fireflyを利用した機能を「Adobe Illustrator」に搭載する。

IllustratorにおけるAdobe Fireflyを活用した新機能は「Generative Recolor(ジェネレイティブリカラー)」という名称だ。今回のタイミングでは、英語版のIllustrator ベータ版のみに搭載される。日本語のベータ版では使用できない点に留意したい。

従来もカラーバリエーションの作成機能はあった。しかし、Generative Recolorでは、制作物のカラーバリエーションを、入力したキーワードから、簡単に生成できる点が異なる。例えば、「forest(森)」というキーワードを入力することで、森をイメージした制作物に合ったカラーに整えられるといった具合だ。なお、差し色に赤を入れるといった指定もできる。

  • Generative Recolorの使用イメージ

ちなみに、日本語版のIllustratorを利用している場合にも、WebアプリとしてのAdobe Fireflyにすでに実装されているGenerative Recolor機能を利用することはできる。この際には、SVG形式で出力しておいたファイルをアップロードして扱うことになる。

2023年後半にはビデオ製品への展開も予定

このほか、今年後半には、ビデオ製品群へのAdobe Fireflyの活用機能の搭載が予告されている。例えば、シーンにあったBGMの生成や、アニメーションの生成、脚本やストーリーボードの生成などが考えられているようだ。

Adobe Firefly関連のアップデート情報は、継続的に提供されていくことだろう。現在地点を見失わないよう、今後の展開もしっかりとチェックしておきたい。