3月18日、19日に、大阪府にある「インテックス大阪」にてタクティカルFPS『VALORANT』の公式大会「VALORANT Challengers Japan 2023 Split 1 -Playoff Finals」が開催されました。
『VALORANT』は、5対5のチーム戦で、「スパイク」(爆弾)を設置するアタッカーサイドと、それを阻止するディフェンダーサイドに分かれて戦います。12ラウンドで攻守を交代し、13ラウンド先取したチームがそのマップで勝利。大会は3マップ先取のBO5で行われました。なお、マップカウントが12-12になった場合は、オーバータイムに突入し、2ラウンド差がつくか、どちらかが25ラウンドを獲得するまで勝負が続きます。
今回のPlayoff Finalsに出場したのは、Playoffで1位のCrazy Raccoon、2位のSCARZ、3位のFENNELの3チーム。Day1はSCARZ対FENNELの試合からスタートしました。
両チームが1マップずつ取り合ったあと、3マップ目では12対12となりオーバータイムへ突入します。この接戦を17-15でSCARZが勝ち取り、流れをつかんだと思いきや、4マップ目で逆転勝利したFENNELが5マップ目も連取し、決勝戦へ進出しました。
そして迎えたDay2の決勝戦。Playoffで圧倒的な強さを誇ったCrazy Raccoon優勢という予想を覆し、3マップ連取したFENNELがストレート勝ちで優勝を決めました。
藤本恭史社長/CEOに聞いた、大阪開催の経緯
今大会で注目したいのは、大阪という開催地です。『VALORANT』公式大会初の大阪開催にもかかわらず、チケットは即完し、多くの人が足を運びました。
大会終了後のエンディングでは、6月に開催予定の「VALORANT Challengers Japan 2023 Split2 Playoff Finals」も大阪で行うことが発表されました。今度は「エディオンアリーナ大阪」での開催となるので、Split1よりも大規模となり、より盛り上がることでしょう。
さらに、その1週間後に始まる「MASTERS TOKYO」は、「TIPSTAR DOME CHIBA」と「幕張メッセ」での開催を発表しており、今後も東京以外での『VALORANT』オフライン大会が定着していく可能性があります。
そこで今回、ライアットゲームズ日本の社長/CEOを務める藤本恭史氏にインタビュー。今大会を大阪で開催することにした経緯や、今後の展望について聞きました。
――今回のPlayoff Finalsが大阪開催になった経緯を教えてください。
藤本恭史CEO(以下、藤本):これまで、VALORANT Challengers Japanをはじめ、さまざまなオフラインイベントを開催してきました。地方開催も視野に入っていたのですが、首都圏以外の開催に踏み切れませんでした。
そのなかで、大会配信の視聴者の増加やオフラインイベントの来場者数の多さから、固定ファンができつつあることを実感したんです。さらに、来場していただいた方々の意見を聞いてみて、いよいよ地方への進出の時期ではないかと考えました。
もし、今大会の来場者のほとんどが首都圏在住者だったなら、地方開催の意義が薄れてしまうと思っていましたが、Twitterなどの反応を見ていると関西圏の方々が多く来場してくださったようで、その点は杞憂でしたね。
――大阪以外の開催も考えているのでしょうか。
藤本:どの地域でも開催する可能性があります。eスポーツを取り巻く環境は刻々と変化しており、ファン層の拡大がeスポーツの新しいカルチャーを構築しています。ゲームそのものを楽しむことから、コミュニティ活動などの周辺シーンまで楽しむようになってきました。とりわけ、2022年のVALORANT Challengers Japanのさいたまスーパーアリーナが転換期となった気がします。
地方発祥のコミュニティも出てきており、地方色が豊かになっています。そいういった状況を後押しする意味でも、地方開催にはチャレンジしていきたいですね。
――今大会のチケットは即完売、2022年のオフラインイベントも概ね完売と、会場の規模感やチケット価格などのバランスはみえてきたのでしょうか。
藤本:観客の多くは若年層なので、チケットの価格はできるだけ抑えたいと思っています。ただ、大会運営にはコストがかかりますし、できるだけ豪華にもしたい。今回のインテックス大阪は、さいたまスーパーアリーナや横浜アリーナほどのキャパシティはないですが、国内戦の決勝らしく熱狂を感じられる規模感だと思います。チケット価格と同様に会場の規模感もこれから模索していきたいですね。
――ありがとうございました!
大会システムの簡素化と国内リーグの発足が必要か
もう1つ注目したいのが、『VALORANT』の大会システム。VALORANT Challengers Japanは1つの大会でもありますが、インターナショナルリーグ「VCT PACIFIC」へ参加するチームを決めるための大会でもあります。
VALORANT Challengers Japan自体もSplit1とSplit2の2つに分かれており、Split1で上位入賞したチームはSplit2で優位な状況で参加可能。Split2の結果で、その上の大会である「VCT Ascension PACIFIC」の参加権を得ることができます。
さらに、その「VCT Ascension PACIFIC」は、アジア地区のPACIFICの各国の代表が参加する大会。優勝するとインターナショナルリーグの「VCT PACIFIC」へ参加することになります。
かなり複雑なシステムなうえ、VALORANT Challengers Japan、VCT Ascension PACIFICを勝ち抜いてVCT PACIFICへ参加できた場合は、チームの主戦場が韓国へと移ります。つまり、応援しているチームが強くなって、勝ち続けた結果、海外へ行ってしまうわけです。
VALORANT Challengers Japanなど、各国の国内大会からインターナショナルリーグに参加したチームは2年間のみの参加権しか得られず、例え優勝などの好成績を残しても、3年目はまた国内大会を勝ち抜かなければ、インターナショナルリーグでプレイできません。2年間海外でプレイしたチームが国内に戻ってきて、同じように応援されるかは未知数と言えます。
オンラインでの視聴のみで観戦シーンを完結させるのであれば、このシステムも問題ないと言えますが、今後オフライン大会が増えることを考えると、国内で応援し続けられるリーグが必要ではないでしょうか。
2022年12月に開催された「Riot Games ONE」で、「MASTERS JAPAN」の発表が行われ、日本での国際大会の開催に大いに沸きました。しかし、これもAMERICAS、EMEA、PACIFICの3地域によるインターナショナルリーグの上位チームと、ブラジルで行われた「LOCK//IN」で優勝したチームのみが参加できるようなレギュレーションです。
つまり、VCT PACIFICに出場する日本のプロチーム「ZETA DIVISION」と「DetonatioN FocusMe」が好成績を残せないと、日本開催ながら日本チームが出場できない事態も起こりえます。そもそも、国内でがんばっている日本チームには参加権すらありません。ちなみに「ZETA DIVISION」が大躍進した「2022 Stage 1 Masters Reykjavík」は日本からの出場枠が1枠あったため、出場が叶いました。
フィジカルスポーツも、国内リーグ人気あっての国際大会です。日本国内のチーム、日本人選手の活躍が観られる場がやはり必要に感じます。
ただ、eスポーツは既存のファン活動とは別の次元に到達し、国内リーグよりも地域リーグの人気が高くなり、人種、国籍を超えた新たな応援の仕方が生まれるかもしれません。なんにせよ、ファンにわかりやすく、より楽しめるシステムになることを期待します。
藤本氏に、「国内独自のリーグの構想はあるか」と聞いたところ、「日本の『VALORANT』競技シーンは、世界的にみても特に盛り上がっていると感じます。さまざまなプログラムを用意し、選択肢の幅を持たせるのは良いことだと思っていますので、今後も大会の在り方については考えていきます」と回答していました。