マイナビとBrave groupが共同プロデュースする、大学生を対象としたeスポーツ大会「マイナビeカレ〜esports全国大学選手権〜」(以下、マイナビeカレ)が、現在開催されています。競技タイトルはタクティカルFPS『VALORANT』。2023年3月22日には、ベルサール秋葉原1Fホールにて有観客のオフライン決勝が行われます。

本大会では、大学生がeスポーツを楽しむだけでなく、仕事として携わる就業体験の場を提供するため、大会運営のインターンを受け入れています。そこで今回は、「マイナビeカレ」のインターンとして大会運営に参加している同志社大学4年生の丸小野亜門さんにインタビューしました。

丸小野さんは、『PUBG: BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)のプロ選手として4年間活動し、日本代表チームのメンバーとして世界大会や国際大会に出場した経歴を持ちます。選手としての活躍を経て、「マイナビeカレ」で大会運営メンバーとして裏方を経験し、どのようなことを感じたのか。そして、それらの経験を活かして、今後どのような道に進むことを考えているのかなどを聞きました。

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    選手時代の丸小野さん

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    大学生を対象としたeスポーツ大会「マイナビeカレ〜esports全国大学選手権〜」が開催中です

『PUBG』プロ選手として活躍し、世界大会の舞台を経験

――最初に、これまでのゲームに関する主な活動歴を教えてください。

丸小野亜門さん(以下、丸小野):僕は中学生のころ、『Counter-Strike』シリーズをプレイしていました。それがきっかけで大会を観るようになり、自分も上手くなりたいと思って、すごくやり込んでいたんです。でも、夢中になりすぎて親に怒られ、PCを捨てられてしまって(笑)。なので、中学3年生くらいからはゲームをしなくなり、高校生の間もゲームからは離れていました。

再びゲームに触れるようになったのは、PCを買った大学1年生のころ。そのときに始めた『PUBG』がおもしろくて、のめり込んでいたら、いつのまにかプロになっていました。2018年から2022年まで選手として活動して、日本代表として世界大会や国際大会に出場しました。今は選手を引退し、「マイナビeカレ」の運営にインターンとして携わっています。

――選手活動を続けていた4年間、大学生活とどのように両立していましたか?

丸小野:プロチームに誘われて本格的な活動を始めたのが、大学1年生の12月ごろ。授業が終わったらすぐ家に帰って、19時くらいから深夜2時くらいまでゲームする生活を続けていました。

ただ、学年が上がると授業が大変になってきて、体力的にも精神的にも両立が厳しくなってきました。そのため、大学3年生のときに休学することを決め、2年間は選手活動に専念していました。

――2022年5月に選手を引退されていますが、大学に戻るにあたっての決断だったのでしょうか?

丸小野:はい、復学と同時に選手を引退しました。もともとプロになった時点で、「選手活動は大学4年生まで」と決めていて、休学も1年か2年と決めていたんです。だから、ネガティブな理由があったわけではなく、辞めると決めていた時期がきたので引退しました。

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表舞台と裏方、両方を経験したからこそ感じること

――今回、「マイナビeカレ」のインターンに参加したきっかけを教えてください。

丸小野:大学に復学して時間に余裕ができたタイミングで、知り合いから声をかけてもらったのがきっかけです。選手としてeスポーツに携わることもすごく楽しかったのですが、自分の性格的には、自身が目立つよりも誰かを陰で支える方が好きなんです。なので、大会を運営する側の仕事を経験できると聞いて、参加を決めました。

――選手活動をしていたときから、裏方の仕事にも興味があったのでしょうか?

丸小野:選手になった当初は、それほど興味を持っていませんでした。ですが、選手として活動するなかで、国際大会の配信に解説として出演させていただく機会があり、そのときにスタッフの方々が働く姿を見て、裏方の仕事にも興味を持つようになりました。

――現在インターンとして、大会運営のどのような業務に携わっていますか?

丸小野:2つの業務に携わっています。1つ目は「マイナビeカレ」で行われる大会の審判。2つ目は、Discordコミュニティの運営です。Discordコミュニティは、大学生のeスポーツ活動を充実させるために設立されたもので、大会やイベントを進行するためのチャンネルのほか、さまざまなゲームで一緒に遊ぶ人を募集できるチャンネルや、持ち込み企画を提案できるチャンネル、インターン募集チャンネルなどがあります。

そのDiscordコミュニティを運営するスタッフとして、参加している大学生からのいろいろな声を聞きながら、定期的にイベントを開催したり、サーバーをより活性化させるための工夫をしたりしています。

――それぞれの業務について、まずは審判の仕事に携わってどう感じたか教えてください。

丸小野:例えば、試合当日の審判に限らず、大会のルールづくりや、出場者に向けたお知らせなど、必要な作業がいくつもあるんですよね。選手時代には気づけなかったのですが、それらの仕事を知ることで、自分が気持ち良く大会に出られていたのも、支えている人たちがいたからだと再確認できました。

大会ルールに関する話し合いにも参加しているので、試合後に出場者の方から「こういうルールがよかった」といった反応をもらうとうれしいですね。逆に、厳しい意見をもらうこともありますが、学生と運営で1つのものをつくり上げていく感覚があって、やっていて良かったなと思います。

――Discordコミュニティの運営については、携わってどう感じましたか?

丸小野:参加している大学生の声を聞くと、eスポーツサークルはあっても、大会やイベントが少なくてなかなか活動の場がないとか、ほかの大学生と横のつながりをつくるきっかけがないといった悩みが多いことがわかりました。なので、Discordコミュニティでは、そうした悩みの解消につながるイベントを企画しています。

そうすると、参加者からいろいろな反応をもらえるんですよ。Discordコミュニティで知り合った大学生同士が、一緒に大会に出ることになったとか、仲良くなって普段から遊ぶ友達になったという話も聞きました。誰かのためにがんばったことで、そう評価してもらえるのはとてもうれしいですね。

――表舞台に立つ選手と大会をつくる裏方、両方を経験したからこそ感じることはありますか?

丸小野:あります。選手になったばかりのころは、自分やチームさえ強くなれればいいと思っていたんですよ。でも、選手として活動していくなかで、だんだん考え方が変わっていって、eスポーツ大会は選手だけでなく、視聴者の皆さんや制作に携わるスタッフの方々、スポンサー企業の方々などがいてこそ、成り立つものだと思うようになりました。

そして、今こうやって実際に裏方として大会運営に携わってみると、それをより強く感じます。eスポーツ大会には、本当にさまざまな立場の方々が関わっていて、その1つでも欠けたら成り立たないんだということを、今すごく実感しています。

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eスポーツが文化として、もっと認められるために

――選手時代に感じていた、eスポーツシーンの課題があれば教えてください。

丸小野:僕が感じた国内のeスポーツシーンの課題は、PCゲームの選手層の薄さです。選手層が厚い海外では、トップチームの選手も入れ替わりが激しいですよね。でも、日本は選手が少ないから、入れ替わりが起きにくい。選手が増えるほど、どんどん国内での競争が激しくなって、日本のレベルがもっと上がっていくはずです。

それに、人口が増えれば増えるほど、日本でeスポーツがより認められることにもつながっていくと思います。今は少しずつ認められてきているものの、それでもまだゲームやeスポーツに対する偏見はあると感じます。そうしたネガティブなイメージを取り除くためにも、もっと人口を増やしていくことが必要だと考えています。

――PCゲームのプレイヤー人口自体が少ないのか、eスポーツシーンに興味を持つ人が少ないのか、どの段階に課題があると感じますか?

丸小野:PCゲームのプレイヤー人口の少なさですね。若い世代では、そもそもPCを持っている人が少ないので、もっとPCに触れる機会を増やす必要があると思います。

例えば、韓国であればPCバン(オンラインゲームを楽しむためのネットカフェ)があって、1時間100円くらいで気軽にプレイできる環境があります。最近は、日本でもPCゲームをプレイできるeスポーツ施設が増えてきているので、そういうPCゲームに触れるきっかけになる場が、もっと増えていったらいいなと思います。

――大学生大会があることで、選手層の薄さの解決にもつながっていくでしょうか。

丸小野:つながると思います。大学生大会をきっかけにプロを目指す人が出てくる可能性もあるし、強い選手がいればプロチームの目にとまる可能性もあります。「マイナビeカレ」が文化になって、プロへの登竜門的な大会になったらいいですね。ただ、それは1年や2年でできることではなく、長い時間をかけてやっと達成できることだと考えています。

――プロシーンへのつながりのほかにも、大学生大会の存在がプラスにつながると感じることを教えてください。

丸小野:今はコロナ禍の影響で、就職活動で学生時代に力を入れたことを聞かれても、うまく答えられない大学生が多くいます。でも、オンラインで参加できるeスポーツ大会でがんばっていれば、それに力を入れたと言えますよね。そういうところは、短期間でもプラスにつながる面の1つじゃないでしょうか。

長い目で見ると、「マイナビeカレ」が今後もずっと開催されていって、いつか箱根駅伝のような存在になったらいいなと。そうして文化として認められるようになれば、eスポーツでの活動を履歴書に堂々と書けるくらい、eスポーツが当たり前の世界になっていくのではないかと思っています。

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できる範囲でやるしかない。理想と現実の間での葛藤

――大学生にとって、大会に出場するプレイヤー側だけでなく、運営側を経験することで得られるものは何だと思いますか?

丸小野:企業の方々と一緒に運営していくので、楽しいことばかりではなく、例えば予算などの制限があるなかで、大会をゼロからつくっていく難しさを知ることができます。ただ、大会を成功させるためには、企業の方々の目線だけでなく、大学生ならではの目線も重要だと思っているので、いろいろな場面で積極的に大学生としての意見を言うようにしています。

――丸小野さんの意見が採用されて、実現したものはありますか?

丸小野:Discordコミュニティ内で、提案した仕組みが採用されています。Discordコミュニティは、大学生であることが参加条件になっているのですが、大学生以外の方が入ってくる可能性があるため、身分証明書を提出してもらう必要があります。

ですが、いきなり提出を求められると入りづらくなってしまうので、身分証明書を提出すると、サーバー内で参加できるチャンネルや機能が拡張し、イベントなどに参加できるようになる仕組みを提案しました。これは今、実際にそういった仕組みになっています。

――逆に、通らなかった意見はありましたか?

丸小野:ありました。やはり現実的に可能なことと不可能なことがあるので、できる範囲でやるしかありません。自分のなかで納得できていないところは、次回以降の大会に向けて考えていきたいと思っています。

――例えばどんなものがあったのでしょうか。

丸小野:賞金に関してですね。僕としては、出場してくれる学生のために、プロのeスポーツ大会のように賞金を出したい思いがあります。でも、先ほど挙げた箱根駅伝も含め、大学生のスポーツ大会には基本的に賞金がありません。それらのスポーツ大会と同じように、文化にしていくことを目指す「マイナビeカレ」では、賞金を出さない方針になっているんです。そうした自分の考えとは違う部分にぶつかったとき、折り合いをつけるのがすごく難しいですね。

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eスポーツを通して得た人間的成長、その価値を伝えたい

――現在大学4年生とのことですが、今後はどのような道に進むことを考えていますか?

丸小野:今、eスポーツに関わる企業への就職活動をしています。僕がプロ選手の活動を通じて学んだことは、単にゲームが上手くなっただけはありません。良い仲間たちに出会い、人間的な成長ができました。

1つのことを極める重要さだったり、仲間との時間を大切にする気持ちだったり、そういうeスポーツを通じて得られるものを、たくさんの若者に知ってほしい。そのためにも、より多くの人にeスポーツを認めてもらえるような活動をしていきたいと思っています。

――eスポーツに携わるなかでも、特にどのような仕事がしたいですか?

丸小野:一番興味があるのは、eスポーツの教育に関わる仕事です。僕が選手をしていたころ、ゲームで上手くなるには独学するしかありませんでした。なので、トッププロとして最前線で活躍した実績を持つ人が、教える場があることが理想だと思っているんです。

それから、プロシーンに限らず、例えば小学生向けのeスポーツ塾のような、これから始めたい人に向けた教育にも興味があります。本人がeスポーツに興味があっても、親御さんはネガティブなイメージを持っていて、不安に思うかもしれない。そういう人に、僕自身の体験談を交えながら、eスポーツの価値を伝えていく活動も、将来的にやっていきたいです。

――eスポーツ業界以外への就活でも、選手活動や大会運営の経験は活かせると思いますか?

丸小野:僕は今eスポーツ関連の企業に絞って就活していますが、もしまったくeスポーツに関連のない企業だったとしても、迷わずアピールします。1つのことをプロのレベルまで極めたことや、日本代表として世界大会に出たことは、なかなかない経験だと思うので、eスポーツを知らない人にもわかるように伝えれば問題ないと考えています。

実際に、選手経験がある周囲の友達から就活の話を聞くと、eスポーツに関係ない企業の面接でも、経歴について興味を持って話を聞いてもらえたり、ポジティブな反応がもらえたりすることが多いようです。

「マイナビeカレ」を長く続け、文化にしていきたい

――「マイナビeカレ」では、3月22日にオフライン決勝が控えていますが、どんな大会にしたいですか?

丸小野:自身がプロとして経験してきたことを活かして、決勝に出場する選手たちに「プロの大会みたいだ」と思ってもらえるような環境にしたいと思っています。選手たちにとっては、オフライン会場でプレイできるだけでもうれしいと思いますが、ゲーム以外のところでも満足感を得てもらえる会場をつくりたいです。

例えば、僕がプロとして大会に出ていたとき、オフライン会場には飲み物やケータリングのほか、手を温めるためのカイロなどが準備されていました。そういった会場の環境をできるだけ整えることで、選手たちにはより良い体験をしてもらいたいと思っています。

――それでは最後に、「マイナビeカレ」に興味を持つ大学生へのメッセージをお願いします。

丸小野:オフライン決勝は配信も行われます。「マイナビeカレ」は、同じ学校の人がチームを組んで出場する大会なので、大学対抗戦ならではの熱い試合を、ぜひ楽しんで観ていただきたいです。

また、今後も「マイナビeカレ」を第2回、第3回と長く続けていくことで、文化にしていきたいと思っています。そのためにも、参加者や視聴者の方々の意見を反映しながら、今後もより良い大会をつくっていきますので、今回は参加できなかった方も、ぜひ次回の参加をお待ちしています。

そして、Discordコミュニティでも、さまざまゲームで定期的に大会やイベントを開いています。興味がある方は、ぜひそちらもチェックしてみてください。

――丸小野さん、ありがとうございました!

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