2023年2月23日、タクティカルFPSゲーム『VALORANT』の国際大会「VALORANT Champions Tour 2023 LOCK//IN サンパウロ」(以下、VCT LOCK//IN)にて、日本代表チーム「ZETA DIVISION」の初戦が行われました。

「VCT LOCK//IN」は、2月13日から3月4日まで3週間にわたり、ブラジル・サンパウロにて開催されるeスポーツ大会。インターナショナルリーグに所属する30チームと、招待された中国2チーム、総勢32チームが出場します。チームはAlphaとOmegaの2つのブラケットに振り分けられ、「ZETA DIVISION」はOmegaブラケットでラテンアメリカの強豪チーム「Leviatán」との試合を戦いました。

VCT史上最大のチーム数が参加する本大会では、一度負けたら敗退というシングルエリミネーション形式で実施されています。「ZETA DIVISION」は1マップ目を落とし、後がない2マップ目で追い上げを見せましたが、あと一歩及ばず。マップカウント0-2で、今大会敗退となりました。試合の模様と、試合直後のプレスカンファレンスの内容をお届けします。

  • ラテンアメリカの強豪チーム「Leviatán」と戦った「ZETA DIVISION」

■試合結果

ZETA DIVISION [0-2] Leviatán
1マップ:4-13(アセント)
2マップ:11-13(パール)

【アセント】スピード感や練度の高さに苦しめられる展開に

1マップ目は、「Leviatán」がピックしたアセント。両チームともに、ジェット・ソーヴァ・オーメン・KAY/O・キルジョイをピックし、現環境においてメタとなっているエージェント構成でのミラーになりました。

「ZETA DIVISION」は前半、「Leviatán」によるスピード感のある攻めや練度の高いセットアップに押され、苦しい立ち上がりに。なかでも、「Leviatán」Mazino選手の圧倒的なフィジカルとオーメンを活かした巧みな立ち回りに翻弄され、「ZETA DIVISION」はラウンド取得を阻まれます。

「ZETA DIVISION」はラウンド差を引き離される状況が続き、2-10での折り返しへ。後半の攻めではピストルラウンドを獲得するも、「Leviatán」がリードする流れを変えられず、4-12での敗北となりました。

  • Mazino選手の圧倒的なフィジカルと、オーメンでの巧みな立ち回りに翻弄された

  • ラテンアメリカのオールスターチームとも言われる強豪「Leviatán」

【パール】追い上げを見せるも、オーバータイムに持ち込めず

続く2マップ目は、「ZETA DIVISION」がピックしたパール。前半、堅い守りでラウンド差をつける「Leviatán」に対し、「ZETA DIVISION」はキルジョイのLaz選手がオペレーターを持つことによって、流れを変えることに成功しました。6-6の同点での折り返しを迎えます。

後半の守りでは、ラウンドを連取される展開となり、「ZETA DIVISION」はタイムアウトを取得。直後から、「Leviatán」の速いテンポでの攻めに対応し、4ラウンドを取り返します。その後は「Leviatán」がタイムアウトを取得し、重要なラウンドを取り返すなど、両チームともにタイムアウト後に大きく流れを変える展開が続きました。

先にマッチポイントに到達したのは「Leviatán」。これに対し、「ZETA DIVISION」はあと1ラウンドでオーバータイムに持ち込めるところまで追い上げますが、惜しくも届かず。11-13で敗北し、マップカウント0-2で敗れました。

  • 前半の攻めでの流れを変えることに成功した、Laz選手のオペレーター

  • 後半の守りでは、ショックボルトとフラグメントの合わせ技で設置を阻止する場面も

  • 「Leviatán」を率いるOnurコーチ。両チームともにタイムアウトで流れを変える展開が目立った

試合を終えた直後の「ZETA DIVISION」にインタビュー

「Leviatán」との試合直後、合同で行われたプレスカンファレンスに「ZETA DIVISION」の選手5名とXQQコーチが登壇。プレスカンファレンスでは、「Leviatán」との試合を振り返る内容や、これから開催されるパシフィックリーグに向けた質問などが投げかけられました。その模様をお届けします。

  • プレスカンファレンスに登壇した「ZETA DIVISION」

相手チーム応援の声が響く、アウェイで戦った「Leviatán」戦

――1マップ目のアセントでは、エリアコントロールなどで苦労されていたように見えましたが、「Leviatán」の上手かったところを教えてください。

XQQ:アセントのエリアコントロールは、練習では上手くいっていたのですが、実際に「Leviatán」の攻めを受けてみると、細々としたところの撃ち合いなどで、普段だったら守れている形で守れなくなっていました。その結果として、盤面上ではエリアも取られて、いいようにやられたと見えたのかなと思います。

――2マップ目のパールでは、タイムアウト後に逆転するなど、流れが変わったタイミングがありました。2回のタイムアウトでは、それぞれどのような話し合いをしましたか?

XQQ:敵の構成を見て、ある程度やってくることがわかっていたので、最初は自分たちのスタイルを押し付けつつ、タイムアウトで対応していくようにしていました。特に守りでは、いい感じに刺さっていたので、もう1~2ラウンド早くタイムアウトを取れればもっと良かったと、個人的には反省しています。

――マップのBANについて、アイスボックスをBANした意図や、相手のスプリットBANが予想通りだったかを教えてください。

XQQ:これに関してはパシフィックリーグが近いので、あまり語ることができません。ただ、スプリットやフラクチャーなど、僕たちが得意としているマップをBANしてくるだろうなと予想していました。

――今回対戦した「Leviatán」は開催地的にホームにあたると思いますが、アウェイのチームとして不利に感じた部分はあったでしょうか。

Laz:アウェイであることは間違いなく、歓声の差などもすごく感じましたが、試合が始まるとあまり気にならなかったです。環境面の差もそれほどなく、しいて言えば、湿気がすごかったくらいでしょうか。そう考えると、彼らは湿気にも慣れているはずだろうなと今思いました。

――試合前のインタビューで、会場の気温などに懸念があるという話が挙がっていましたが、実際の環境はどうでしたか?

Laz:暑さはそれほどなく、会場以外はエアコンがしっかり効いていて快適でした。会場は少し暑かったくらいで、自分はあまり気になりませんでした。本当は暑かったかもしれないですけど、わからなかったですね。

  • 配信上でも、現地の「Leviatán」ファンのかなり大きな声援が聞こえていた

  • 観客席のなかには、「ZETA DIVISION」を応援するファンの姿も

PACIFICリーグを、絶対に勝ち抜かなければならない

――現在チェンバーがメタから外れ、Laz選手のエージェントピックも変化していると思います。チェンバーの変更が、チームの構成やゲームプレイに、どのような影響を与えていますか?

Laz:今までのような動きはできなくなりましたが、前からサイファーやキルジョイを使っていたので、前に戻りつつ、今までにはなかった新しいメタにも対応していく感じです。もちろんチェンバーが自分に合っているのは知っていますが、キルジョイもそんなに悪くないと思っています。好きかどうかと言われると、あれですけど……(笑)。

――「ZETA DIVISION」のエージェント構成を見ていると、他の地域では見られない新しい構成がよく見られると感じます。新しい構成を試すことを意識しているのでしょうか?

XQQ:アセントはオーソドックスな構成なので、パールに関してだと思いますが、パールに関しても、現環境においてはポピュラーな構成になっています。ただ、アジアで使うチームが少なく、今大会のメタとしても2コントローラーが多いので、少し特殊に見えるのかもしれません。実際には、EMEAやNAなどのいろいろな地域でよく使われているので、メタ構成に近いのかなと思います。

――今大会ではPACIFICリーグチームの活躍が目立っていますが、「ZETA DIVISION」にとっては今後リーグで戦う相手になります。今大会でのPACIFICリーグチームの試合内容やレベルについて、どのように感じているか教えてください。

XQQ:アジアは、得意とするマップでアドバンテージを持っていると感じます。「DRX」のアイスボックスにおけるハーバー&ヴァイパー構成など、他の地域では見られないメタが刺さっていて、それによって先を行っているのが、アジア勢が勝ち進んでいる理由だと思います。PACIFICリーグのチームには、このまま勝ち進んで優勝して、「Masters」の枠を勝ち取ってほしいです。

――今大会を経て、次の「Masters TOKYO」までは少し時間が開きます。この時間を使ってどのような準備を進めていく予定ですか?

Laz:僕たちは「Masters TOKYO」に出るために、PACIFICリーグを絶対に勝ち抜かなくてはなりません。それが目の前にあるので、今大会でわかった自分たちの修正点をしっかりと直し、かつ新しいメタに対応しながら、PACIFICリーグを絶対に勝ち抜きたいと思います。

――今後に向けて、今大会ではどのような経験が積めたと感じますか。また、PACIFICリーグに向けてひと言お願いします。

Laz:大会で強敵に当たるのは、他では得られない経験です。今の状態で戦った結果を、何度でも見返せるし、悪いところを修正できるので、いい経験値になりました。ただ、もちろんもっとたくさん試合がしたかった気持ちもあります。東京で開催される「Masters」に絶対に出たいと思っているので、それに向けてみんながんばっています。

  • 試合を終えた「ZETA DIVISION」。次はPACIFICリーグでの戦いに挑む

2023年の幕開け「LOCK//IN」で、優勝を手にするのは?

現在「LOCK//IN」では、先に試合が行われたAlphaブラケットにて、韓国チーム「DRX」とブラジルチーム「LOUD」のセミファイナルへの進出が決定。このあとOmegaブラケットを勝ち上がった2チームが決定すると、それぞれのブラケットでのセミファイナルが実施されます。

そして、グランドファイナルでは、AlphaとOmegaの頂点に立った2チームがぶつかり、「LOCK//IN」優勝チームが決まります。本大会では、優勝チームの所属するリーグ(AMERICAS・EMEA・PACIFIC)に、次回の国際大会「Masters」の参加枠が1つ付与されるため、優勝チームがどの地域に属するチームであるかどうかも重要なポイントの1つです。

残念ながら、日本代表チームの「DetonatioN FocusMe」と「ZETA DIVISION」は、初戦敗退となってしまいましたが、両チームには「Masters TOKYO」への出場がかかったPACIFICリーグが控えています。「Masters TOKYO」への切符を勝ち取ってくれるよう、両チームのさらなる成長に期待しましょう。

  • 現在のトーナメント進行状況。左がAlphaブラケット、右がOmegaブラケット

  • 現時点で確定しているOmegaブラケットの試合スケジュール