NTTと北海道大学(北大)の両者は3月16日、二次宇宙線として降り注いだ中性子の持つエネルギーごとの「半導体ソフトエラー発生率」について、これまで測定されていなかった低エネルギー領域(10meV~1MeV)での連続的な実測に成功し、その全貌を世界で初めて明らかにしたことを共同で発表した。
同成果は、NTT 情報ネットワーク総合研究所、北大大学院 工学研究院 応用量子科学部門の佐藤博隆准教授、同・加美山隆教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、IEEEが刊行する電離放射線の検出と測定のための機器に焦点を当てた学術誌「IEEE Transactions on Nuclear Science」に掲載された。
遠方の超新星爆発などによって生じる宇宙線は常に地球に飛来しており、大気圏に飛び込むと窒素分子や酸素分子などと衝突し、二次宇宙線を生じさせる。二次宇宙線にはいくつかの種類があり、中性子もその1つだ。中性子は地上付近まで降り注いで電子機器の半導体に衝突すると、保存されたデータを書き変わる現象の「ソフトエラー」を引き起こす可能性がある。ありとあらゆる場所に電子機器が採用され、人々の生活を支えている現代において、ソフトエラーは最悪の場合、通信障害などの重大なトラブルを起こす危険性もある。
電子機器におけるソフトエラー対策を行うためには、その機器ごとのソフトエラーによる故障頻度を考慮したシステム設計が重要となる。一方で、ソフトエラーの故障頻度は、その機器に到達する中性子が持つエネルギーにより大きく異なるため、ソフトエラー発生率のエネルギー依存性(中性子が持つエネルギーごとのソフトエラー発生率)の詳細なデータが不可欠だった。
そのためNTTは2020年、北大と名古屋大学との共同研究により、世界で初めて高エネルギー中性子(1MeV~800MeV)領域におけるソフトエラー発生率を測定したとする。さらにその後も研究は続けられ、今回は北大との共同研究で、1MeV以下でのソフトエラー発生率についても世界で初めて測定することに成功したとしている。