三菱電機といえばさまざまな家電を販売していますが、じつは地味にすごい製品がビルトインIHクッキングヒーター。最新の高機能IHクッキングヒーターは、どのメーカーも自動調理メニューをはじめとした賢い機能を搭載し、従来の「火力を決めて加熱するだけ」のコンロとは一線を画しています。
そんななか、三菱電機は「びっくリングIH」や世界初の「レンジグリルIH」という独自機能をもつ製品で多くのファンを獲得しています。その三菱電機が発表する前の最新IHクッキングヒーター(以下、発表前モデル)を一足先にお試し。埼玉県深谷市にあるIHクッキングヒーター工場も見学してきました。
三菱ならではの「ほかにはない」2つの機能
最新の高機能IHクッキングヒーターといえば、賢い機能が満載なのは当たり前。鍋を設定温度にキープした加熱や、吹きこぼれを予測しての自動火力制御、鍋を使った自動炊飯も可能で、この数年は「フライパンで焼き色を付けた後に、グリルでじっくり火を通す」といったリレー調理機能を搭載した製品も増えています。
三菱電機の高機能IHクッキングヒーターも、これらの機能をもちろん搭載。加えて、三菱ならではの「びっくリングIH」や「レンジグリルIH」といった特徴的な機能を備えています。
2011年から提供している「びっくリングIH」とは、通常「輪っか状」であるIHコイルを複雑に分割した製品。そもそもIHは、コイルから磁力線を発生させて、この磁力線が鍋を通る抵抗で鍋自体を発熱させます。
びっくリングは、中央と左右上下にコイルを分割して制御することで、鍋底の加熱部位を自動的に切り替える画期的な機能。鍋内部での対流方向を外向、縦向き、横向きにすることで、鍋内にある液体の対流方向を次々と切り変えてかき混ぜ効果を発生させます。これにより、長時間かかる煮込みでも、傍でかき混ぜることなくまんべんなく味を染み込ませるほか、焦げ付きを抑制できるのです。
2020年には、世界初となる電子レンジ機能付きIHクッキングヒーター「レンジグリルIH」を発売。魚焼きグリル部が、食材を内側から加熱する電子レンジとしても使えるようになりました。グリル調理と併用することで、調理時間を格段に短くできます。今回見せてもらった発表前モデルは、このレンジグリルIHシリーズです。
こちらの発表前モデルの最大の特徴がIoT対応。今まで、すべての操作を本体タッチボタンで行う必要がありましたが、音声やスマートフォンでの操作が可能になりました。面白い点は音声操作の起動方法。使用するヒーターの起動ボタンを長押しすると、AIアシスタントが自動で起動し、「火力を5にしてタイマー4分」などと声をかけることで設定できます。
冒頭で説明したように、最近の高機能IHクッキングヒーターは高性能なため、火力や温度・加熱時間の設定、グリル操作なら「グリル」「オーブン」「レンジ」どの調理方法を利用するかなど、操作が複雑になりがち。
しかも、IHクッキングヒーター本体は操作ボタンがそこまで多くないため、複雑な設定をするには何度もボタンを押し続ける必要があります。今回、音声操作やスマートフォン操作に対応したことで、操作の煩雑さを軽減できるようになりました。
ちなみに現在のところ、びっくリング機能とレンジグリル機能を両方搭載する製品はありません。これはびっくリングの制御パーツと、レンジグリルのレンジに利用するマグネトロンなどのパーツが大きいことが理由です。IHクッキングヒーターは本体サイズが決まっているため、両方の機能をひとつに内蔵することは今のところ難しいとのこと。
三菱の深谷工場に潜入、IHが生まれる現場とは
便利な機能が満載のIHクッキングヒーター、じつはすべて埼玉県深谷市にある三菱電機ホーム機器の工場で作られています。
この工場では、製造に必要なパーツを一台につきひとつの箱にキット化する「キッティング方式」を多くの生産過程で採用。一人で複数パーツを組み込む場合、パーツを組み忘れる可能性がありますが、必要なパーツをすべてキット化すれば、組み込み忘れたパーツが箱に残ります。つまり、箱が空になれば「すべてちゃんと組み込んだ」とわかるのです。
出来上がった製品は一台一台実際に動かしてすべて検査し、最後に傷やゆがみがないか外観検査をしてから梱包されます。工場のなかでも緑の帽子を被ったスタッフは、一定の試験をクリアした熟練の検査員なのだそうです。
世界的に見ると、メイドインジャパンの製品は不良品が少ないという印象がありますが、すべての製品をチェックする検査体制を見学すると、その理由もよくわかります。IHクッキングヒーターは毎日使うものだけに、日本で「ちゃんと作られている」ことがわかるのはうれしいポイントではないでしょうか。