三菱電機といえばさまざまな家電を販売していますが、じつは地味にすごい製品がビルトインIHクッキングヒーター。最新の高機能IHクッキングヒーターは、どのメーカーも自動調理メニューをはじめとした賢い機能を搭載し、従来の「火力を決めて加熱するだけ」のコンロとは一線を画しています。

そんななか、三菱電機は「びっくリングIH」や世界初の「レンジグリルIH」という独自機能をもつ製品で多くのファンを獲得しています。その三菱電機が発表する前の最新IHクッキングヒーター(以下、発表前モデル)を一足先にお試し。埼玉県深谷市にあるIHクッキングヒーター工場も見学してきました。

  • まだ発表前の最新IHクッキングヒーターをお試し! 気になる最新機能とは?

    まだ発表前の最新IHクッキングヒーターをお試し! 気になる最新機能とは?

  • じつは三菱電機のIHクッキングヒーターはすべて埼玉・深谷市産。メイドインジャパンの現場もみてきました

三菱ならではの「ほかにはない」2つの機能

最新の高機能IHクッキングヒーターといえば、賢い機能が満載なのは当たり前。鍋を設定温度にキープした加熱や、吹きこぼれを予測しての自動火力制御、鍋を使った自動炊飯も可能で、この数年は「フライパンで焼き色を付けた後に、グリルでじっくり火を通す」といったリレー調理機能を搭載した製品も増えています。

三菱電機の高機能IHクッキングヒーターも、これらの機能をもちろん搭載。加えて、三菱ならではの「びっくリングIH」や「レンジグリルIH」といった特徴的な機能を備えています。

  • 1999年に発表された三菱電機初の200VタイプIHクッキングヒーター。20年以上前の製品ですが、今の形とそこまで大きな変化はありませんね。ちなみに「炎を使わない」という意味では、1974年に100Vタイプマグヒート方式の「三菱クリーンレンジ」という製品もありました

  • 今回、発表前の製品で実演してくれたリレー調理。フライパン調理で野菜や鶏肉に焼き色をつけ、その後グリル部でレンジグリル調理(後述)することで、中まで火を通しつつ、焼き色もつけます

2011年から提供している「びっくリングIH」とは、通常「輪っか状」であるIHコイルを複雑に分割した製品。そもそもIHは、コイルから磁力線を発生させて、この磁力線が鍋を通る抵抗で鍋自体を発熱させます。

びっくリングは、中央と左右上下にコイルを分割して制御することで、鍋底の加熱部位を自動的に切り替える画期的な機能。鍋内部での対流方向を外向、縦向き、横向きにすることで、鍋内にある液体の対流方向を次々と切り変えてかき混ぜ効果を発生させます。これにより、長時間かかる煮込みでも、傍でかき混ぜることなくまんべんなく味を染み込ませるほか、焦げ付きを抑制できるのです。

  • びっくリング搭載の現行IHクッキングヒーター「PT321Hシリーズ」(写真では手前二つに内蔵されているIHコイルを外に出しています)。手前左側が「びっくリングコイルP」(3.0kWタイプ)、右側は3.0kWのIHコイルで、コイルの形がまったく違います

2020年には、世界初となる電子レンジ機能付きIHクッキングヒーター「レンジグリルIH」を発売。魚焼きグリル部が、食材を内側から加熱する電子レンジとしても使えるようになりました。グリル調理と併用することで、調理時間を格段に短くできます。今回見せてもらった発表前モデルは、このレンジグリルIHシリーズです。

  • レンジグリルIHシリーズ最新の発表前モデル。型番・価格・発売日などはまだ非公開です

  • 26cmフライパンがそのまま置ける広いグリル部。レンジグリルIHは、電子レンジとしても利用できるため、冷凍ご飯をレンジで解凍しています。グリル・レンジで使える白いステンレス天板がオシャレ

  • 天板をはずしたレンジグリル内部。上下フラットヒーターを採用しているので、一般的な電気ヒーター式グリルにある管部品がなく内部がほぼフラット。掃除がしやすそうです。

こちらの発表前モデルの最大の特徴がIoT対応。今まで、すべての操作を本体タッチボタンで行う必要がありましたが、音声やスマートフォンでの操作が可能になりました。面白い点は音声操作の起動方法。使用するヒーターの起動ボタンを長押しすると、AIアシスタントが自動で起動し、「火力を5にしてタイマー4分」などと声をかけることで設定できます。

【動画】
使用するヒーターの起動ボタン長押しでAIが自動起動するので、「OK Google」や「アレクサ」などのウェイクアップワードを発話する必要はありません。動画ではAmazon Echo Dotを利用(音声が流れます。ご注意ください)

冒頭で説明したように、最近の高機能IHクッキングヒーターは高性能なため、火力や温度・加熱時間の設定、グリル操作なら「グリル」「オーブン」「レンジ」どの調理方法を利用するかなど、操作が複雑になりがち。

しかも、IHクッキングヒーター本体は操作ボタンがそこまで多くないため、複雑な設定をするには何度もボタンを押し続ける必要があります。今回、音声操作やスマートフォン操作に対応したことで、操作の煩雑さを軽減できるようになりました。

  • たとえば、レンジとグリルを同時に動かす「レングリ」ではレンジグリルとグリルの動作時間をそれぞれ設定しなければならず、何度もボタンを押す必要があります

  • IHクッキングヒーター用の専用アプリ。料理を選択して送信するだけで自動調理モードの起動が可能です

  • よく利用する設定は登録も可能です。こちらはやかんによる湯沸かしの設定を「いつもの加熱」に登録したもの。これもアプリならではの機能

ちなみに現在のところ、びっくリング機能とレンジグリル機能を両方搭載する製品はありません。これはびっくリングの制御パーツと、レンジグリルのレンジに利用するマグネトロンなどのパーツが大きいことが理由です。IHクッキングヒーターは本体サイズが決まっているため、両方の機能をひとつに内蔵することは今のところ難しいとのこと。

  • 新製品のカットモデル。インバーター基盤やマグネトロンで内部はギッチリ。開発者によると、グリルスペースを小さくすればびっくリング機能の搭載も不可能ではありませんが、「グリル部に(取っ手が外れる)フライパンをそのまま入れられる」機能を残すために今は排他機能となっているそうです

三菱の深谷工場に潜入、IHが生まれる現場とは

便利な機能が満載のIHクッキングヒーター、じつはすべて埼玉県深谷市にある三菱電機ホーム機器の工場で作られています。

  • 深谷市にある工場。手前が第一工場でコードレス掃除機「ズバQ」などを生産。奥が第二工場でIHヒーターや除湿器などを生産しています

この工場では、製造に必要なパーツを一台につきひとつの箱にキット化する「キッティング方式」を多くの生産過程で採用。一人で複数パーツを組み込む場合、パーツを組み忘れる可能性がありますが、必要なパーツをすべてキット化すれば、組み込み忘れたパーツが箱に残ります。つまり、箱が空になれば「すべてちゃんと組み込んだ」とわかるのです。

  • キッティング方式で作業しているようす。作業者の前ではレーンがねじれてキットの箱が斜めになるように調整されており、パーツが手に取りやすいように工夫されています

【動画】
使い終わったキットの箱は重力を利用した「ししおどし」のような仕組みで返却されます。このほか、パンツのゴムひもを使って作業台が作業員に追従する機構があるなど、意外とアナログな工夫が多くみられました(音声が流れます。ご注意ください)

出来上がった製品は一台一台実際に動かしてすべて検査し、最後に傷やゆがみがないか外観検査をしてから梱包されます。工場のなかでも緑の帽子を被ったスタッフは、一定の試験をクリアした熟練の検査員なのだそうです。

  • 流れてくるIHクッキングヒーターに鍋をのせて実際にお湯を沸かしているところ。このほか、小さな金属パーツを加熱しないか確認する作業などもありました

  • こちらは掃除機の外観検査ではじかれた製品。黄色いテープの上にうっすらと白っぽい傷があります。写真では拡大しているのでなんとか見えますが、筆者の肉眼ではかなりじっくり確認しないと見えませんでした。熟練の検査官のすごさがわかります

世界的に見ると、メイドインジャパンの製品は不良品が少ないという印象がありますが、すべての製品をチェックする検査体制を見学すると、その理由もよくわかります。IHクッキングヒーターは毎日使うものだけに、日本で「ちゃんと作られている」ことがわかるのはうれしいポイントではないでしょうか。