ソニーは2月22日、撮影からコンテンツ制作全般までクリエイターをサポートするクラウド制作プラットフォーム「Creators’ Cloud」を個人向けに提供開始すると発表。5GBのクラウドストレージを無料で使用でき、ソニー製カメラを登録すると無料で使える容量を25GBまで拡大できる。

  • Creators’ Cloud

個人向けには、カメラで撮影した動画・静止画をクラウドサービスへアップロードするスマホアプリ「Creators’ App」、カメラメタデータとクラウドAIを活用した動画編集クラウドサービス「Master Cut(Beta)」、クリエイター同士がつながって作品を発信できるコミュニティ機能「Discover」などを新たに提供する。用途に合わせて4プランを選べ、前出の無料2プランに加えて有料の100GB、500GBプランも用意する。

  • 国際放送機器展「Inter BEE 2022」のソニーブースにあった、Creators' Cloudの展示コーナー

ソニーはこれまでCreators’ Cloudを、主にメディア業界における効率的なコンテンツ制作のニーズに対応するため、クラウド上での効率的なコンテンツ制作・共有・配信を実現するクラウド制作プラットフォームとして法人顧客向けに提供してきた

一方で企業に属さず、フリーランスとして活動するクリエイターが増え、企業からコンテンツ制作を受注したり、制作コンテンツをSNSで発信したりすることで評価を獲得したいというニーズも増えている。こうした背景から、ソニーでは新たにアプリを提供しつつ、個人向けにもサービスを開始したかたちだ。

スマホアプリ「Creators’ App」

Creators’ Appは、カメラで撮影した動画・静止画をクラウド上へアップロードするスマホアプリで、2月下旬以降に提供予定。Creators’ Cloudのクラウドストレージには、PCやスマホ、後述の「Master Cut(Beta)」などからアクセスでき、手軽にファイルの閲覧や管理が可能になるという。

なお、個人向けのCreators’ App提供開始に合わせ、これまで法人向けに提供してきたクラウドゲートウェイアプリ「C3 Portal App」は、名称を「Creators’ App for enterprise」に変更する。

  • Creators’Appの画面イメージ

動画編集クラウドサービス「Master Cut(Beta)」

新たに導入する「Master Cut(Beta)」では、撮影する動画だけでなく、撮影時に収録されるカメラとレンズのさまざまなメタデータを、クラウドAI技術を活用してクラウド上で高速・高精度に動画を補正。「最終制作前の高品質な下地作りを簡単に行える」とする。

Master Cut(Beta)の対応機種は、Cinema Lineの「FX3」、「FX30」と、ミラーレスカメラ「α1」、「α7R V」、「α7S III」、「α7 IV」、「α7C」、Vlog向けカメラの「ZV-E10」、「ZV-1」、「ZV-1F」、コンパクトデジカメ「RX100 VII」、「RX0 II」(2023年2月時点)。

  • Master Cut(Beta)の画面イメージ

具体的な機能としては、撮影時のメタデータを活用してカメラの揺れを検出し、短時間で高精度な手ブレ補正を実現。加えて、クラウドAIの画像解析が類似するシーンごとに自動でグルーピングするため、クリップを仕分ける手間が省け、より効率的に動画を選びやすくなるという。

カメラで付与したメタデータは、クラウドとシームレスに同期。撮影の際に、重要なシーンにカメラでマークを付けてクラウド上にデータを取り込むと、Master Cut(Beta)上でもマークしたシーンを確認できるようになる。

音源分離による音ノイズ除去と音声レベルの最適化も実現。動画に含まれる音源をクラウドAIで高精度に分離し、マイクの風切り音や環境音のノイズなどを個別に取り除ける。複数クリップの不ぞろいな動画音源からノイズと音声を分け、クラウドAIを使って一括で音声レベルをクリップ間で合わせるなど、作業の効率化も図れるという。音声の補正後に、各ノイズの強度を任意に手動で調整することもできる。

Master Cut(Beta)は、まずはベータ版として無償で提供開始し、ユーザーの声を取り入れながら今後もアップデート。クリップの明るさや色合いの補正、S-Log3(ダイナミックレンジの広いガンマカーブ)で撮影した動画コンテンツへの対応や、データサイズが軽いプロキシーファイルを活用した迅速な映像制作ワークフローへの対応、といったアップデートを予定している。