ガートナージャパン(Gartner)は2月20日、2022年の半導体市場総括と2022年末時点の2023年見通しを明らかにし、2023年の半導体市場は2022年11月末の発表から下方修正され、前年比6.5%減の5627億ドルとなるとの予測を示した。

半導体メモリ価格の下落に振り回された2022年の半導体市場

2020年ころまでは4000億ドル規模であった半導体市場は、2021年に5000億ドルを一気に突破、2022年も後半に市場が失速したものの、前年比1.1%増の6017億ドルと初めて6000億ドルを突破したという。半導体の適用アプリケーション別に見ると、車載、有線ネットワーク、コンシューマ、産業分野が伸びた一方、PCやスマートフォン(スマホ)の生産台数の減少の影響もあり、コンピュータが同8.4%減、ワイヤレスが同8.3%減と下げたほか、ストレージもSSDの価格下落の影響から同4.3%減となり、明暗分かれる結果となった。また、メモリ関連はストレージのみならず、DRAMもNANDも価格下落が激しく、これらメモリを多く使う分野が落ち込んだ、という見方もできる。

  • 2022年の半導体市場の概要

    2022年の半導体市場の概要 (提供:ガートナー)

こうした市場の落ち込みは、半導体ベンダーの売上高ランキングにも表されている。市場トップを獲得したのはSamsung Electronicsだが、メモリの価格下落の影響から同10.4%減、2位のIntelもPCの不調から同19.5%減と大幅に売り上げを減らした。一方で、売り上げを伸ばした企業としてはQualcomm、Broadcom、AMD、Texas Instruments(TI)などが挙げられるが、QualcommはSamsungが、自社のスマホに自社製のExynosプロセッサではなくSnapDragonを多く採用したことが追い風に、Broadcomは、通信インフラに対する旺盛な投資意欲を背景に業績を拡大。AMDはゲームのほか、Xilinxの買収効果によるところが大きいという。10位に入ってきたAppleは、PCでの自社プロセッサの採用など、自社設計品の比率を高めているが、その影響もIntelの不調の一端にあるとガートナーでは見ている。

2022年を地域別に見ると、2020年以降、中国の苦戦が続いているという。背景には米中摩擦の激化があり、この影響で例えばHuaweiは半導体消費額で2021年は3位だったのが2022年には7位に後退するなど、中国の電子機器メーカーの半導体消費がこの数年で一気に減ってきているという。

  • 過去10年の地域別半導体需要の推移

    過去10年の地域別半導体需要の推移 (提供:ガートナー)

代わって存在感を増したのは日本や欧州だという。この動きについて、ガートナージャパンのアナリストでシニアディレクターを務める山地正恒氏は、「調子が良かったというより、欧州や日本は産業機器や自動車メーカーの存在が大きく、そうしたメーカーの半導体消費が伸びた結果」との見方を示している。

マクロ経済が相当厳しい見通しの2023年

2023年の半導体市場予測だが、前述のとおり同社は2022年11月末時点の予測では前年比3.6%減の5690億ドルと予測していたが、これが12月末の最新の予測では同6.5%減の5627億ドルまで下方修正されている。見通しを引き下げた要因として山地氏は、2022年末に向かうにつれて、グローバル経済が厳しくなってきているという雰囲気が出てきており、そうした風潮を受け、マクロ経済の見通しが、相当厳しいものになる判断しなおし、下方修正に至ったという。

  • 2022年末時点での2023年の半導体市場予測

    2022年末時点での2023年の半導体市場予測 (提供:ガートナー)

具体的には、この予測を作成する時期は、2022年末までの半導体メーカーの確定値の調査を進める段階にあったが、その調査中でメモリが思った以上に厳しいという見通しが出てきたためだとする。2023年春に新たな予測が示される見通しだが、2023年に入って、米国の金利が落ち着いてきたことや、中国のゼロコロナ政策の撤廃など、市場活性化という観点からはポジティブな要素がでてきており、さらなる大幅な下方修正は起きないのではないかとの見通しを示している。

市場予測がマイナス成長となっているため、各適用アプリケーション別の市場の多くが横ばい、ないしマイナス成長となっている。唯一、車載分野が同12.6%増と2桁のプラス成長が予測されているが、自動車(OEM)メーカーやティア1メーカーは、この数年の車載半導体不足を受け、1年以上先の発注を、キャンセルを行わないという約束のもと半導体メーカー各社に行っている模様で、それによって十分な在庫を確保しようと試みた結果だという。その一方で最近はティア1の在庫積み増しが進んできており、その結果、2022年に発注した分を終えた後は、発注控えが発生する可能性が生じているともされており、2023年の新規受注については低迷する可能性があり、結果として車載半導体だけ、2024年に市場の調整が生じる可能性が高いという。

また、仮に車載半導体市場が2桁成長を遂げたとしても、全半導体市場のうち10%あるかないかの規模であり、2大市場であるワイヤレスとコンピュータの落ち込みを支えるほどではないため、マイナス成長になると予測されるという。また、その成長率の度合いについては、2022年同様、メモリ市場の動向次第というところが大きいという。同社ではメモリ市場の回復は2023年後半からと見ているが、その回復の度合いがどの程度かは、現時点では確たるレベルで論じることは難しいとする。