続いて、ゼブラフィッシュの腸内容物DNAのメタゲノム解析により、腸内細菌叢が詳細に調べられた。その結果、細菌投与ゼブラフィッシュの腸内では、Xanthobacteraceae、Bradyrhizobiaceae、Rhodospirillaceae、Pirellulaceaeなどの細菌の存在割合が大きくなっていることが判明したとのことだ

各種細菌は、化合物の合成・分解といった代謝能力を有しており、明らかにされた腸内細菌叢情報から、その代謝機能を推定することが可能だ。これにより、細菌投与ゼブラフィッシュ腸内では、タウリン代謝能力が変化していることが推定されたという。

ヒトにおいて、神経伝達物質タウリンの脳内濃度と不安との間に負の相関関係があることがわかっている。またタウリンを投与することで、ゼブラフィッシュのストレス行動を抑制できることもすでに報告されていた。今回、細菌投与ゼブラフィッシュの脳内におけるタウリンが測定されたところ、その濃度が約3倍ほど上昇していることが確認された。また、脳内において特定のタウリン合成遺伝子の働きが促進されていることも明らかにされた。

今回の研究により、P. sabiaeを与えることでゼブラフィッシュの不安行動を軽減させられることが示された。また、この現象は腸内細菌叢の変動や脳内タウリン濃度上昇といった腸脳相関を介したメカニズムによって生じることが示された。研究チームは、今回の研究で明らかにされた知見をもとに、不安軽減に効果があるヒト腸内細菌を探索していくとし、また腸内細菌叢に着目した食事や生活習慣を提案することができる可能性があるとした。