Electronic Artsは、アクションハンティングゲーム『WILD HEARTS』を2023年2月17日に発売した。「無双」シリーズをはじめ、多数のアクションゲームを制作しているコーエーテクモゲームスのスタジオ「ω-Force」が開発を担当する。
ゲームの舞台は、中世の日ノ本「あづまの国」。自然との融合による独自の進化を遂げた「獣」たちが勢力を広げた世界で、人々は獣の脅威に怯えながら過ごしている。プレイヤーは、獣狩(ししがり)と呼ばれるハンターとして、大型の獣に立ち向かう。
獣を狩り、武器や防具を整えよう
ゲームでは、さまざまな武器を駆使して大型の獣と戦い、物語を進めていく。獣狩が扱う武器は全部で8種類。序盤は、中量級の近接武器「からくり刀」、重量級の近接武器「野太刀」、手数に優れる遠距離武器「弓」、最重量級の近接武器「槌」、獣の攻撃を受け流せる軽量級の近接武器「傘」といった5種類から制作する。メインストーリーを進めると、重量級の遠距離武器「大筒」、身のこなしに優れた最軽量の近接武器「飛燕刀」、5種類に変形させられる「変形棍」が解放される。
筆者はまず「弓」を手に取り、狩りに出ることにした。離れた場所から攻撃できるので、獣の攻撃モーションを観察し、パターンを覚えるのに向いていると思ったためだ。獣との戦いに慣れるのには、ちょうどいいだろう。
そもそも序盤に出てくる獣なんて、きっとチュートリアルの延長。初見でもノーダメージでクリアできる難易度はずだ。なんて思っていたら、あにはからんや。苦戦を強いられることになる。
ゲームを始めたばかりの段階では、当然、武器の操作方法も手探り。効果的な立ち回りがわからず、敵から距離をとり、チクチクと矢を放っていたら、「ヤマウガチ」と呼ばれるイノシシのような獣の討伐に30分以上もかかってしまった。達成感はあるものの、気力の消耗も激しい。
だが、試行錯誤を繰り返しているうちに、2種類ある「甲矢」「乙矢」の使い方をなんとなく理解してくる。なるほど、「甲矢」を何本も獣に打ち込んでから、「乙矢」を放つと、刺さっている「甲矢」が共振して追加ダメージを与えるわけだ。うまく決まると、「ガキーン」という効果音とともに、大量のダメージ値が表示されて、かなり気持ちがいい。
慣れてくれば、同じ武器でも「ヤマウガチ」の討伐時間が15分、10分と目に見えて減っていく。武器の練度が上がっている実感を味わえるのも楽しいものだ。
武器の強化も討伐時間の短縮に一役買う。同作では、武器種ごとにいくつもの武器が用意されているのではなく、獣討伐で手に入る素材を使って、1つの武器をスキルツリー形式で強化していくタイプ。たとえば、ベーシックな「大狩弓」を強化する場合、使う素材によって「鋭石の弓」や「初花の彩弓」などに分岐していく。
「樹」「火」「水」「風」「土」の属性があり、強化するルートによって将来付与される属性も変わる。同じ種類の武器を複数製作することはできるので、属性やスキル構成の異なる装備を用意しておくと、獣の弱点などに合わせて武器を変えられて便利だろう。獣をたくさん倒して素材を集め、目的の武器を作るのは、ハンティングゲームならではの醍醐味だ。
もちろん、武器ごとに操作性や求められる立ち回りもガラリと変わる。武器を変えれば、また新鮮な気持ちで狩りを楽しめるだろう。自分に合った武器を見つけて極めるもよし、さまざまな武器を使って楽しむもよし。個人的には「傘」と「変形棍」が楽しかったので、「弓」をマスターしたら練習してみようと思う。
防具は、頭、体、手、腰、足にそれぞれ装備する。武器と異なり、強化・アップグレードさせるのではなく、獣の素材を使ってそれぞれの防具を製作。特徴的なのは、同じ防具でも、通常のモデルのほかに「活人流改造」「獣道流改造」の異なるバージョンが用意されている点だ。ステータスが異なるうえ、デザインにも違いがある。
さらに、活人流もしくは獣道流の防具でそろえると、「流派」が変化。流派によって発動するスキルもあるので、どのような防具の組み合わせがいいか考えているだけで時間が過ぎてしまう。
からくりを駆使して、自分だけの狩場を創造する
多彩な武器を駆使して獣と対峙する『WILD HEARTS』だが、狩りで活躍するのはそれだけではない。「からくり」と呼ばれるユニークなシステムが獣狩をさまざまなシーンでサポートしてくれる。
「からくり」をざっくり分類すると、樹や岩から切り出した「天つ糸」を使ってクラフトする「基礎からくり」、基礎からくりを特定の形に連結して生み出す「連結からくり」、エリアの「龍脈コスト」を消費して建てる「龍脈からくり」の3種類。この「からくり」こそが、同作ならではの特徴であり、おもしろさでもある。
たとえば、「匣」と呼ばれる箱型の基礎からくり。設置するとエリアの移動時に足場として利用できるほか、獣とのバトル時にはジャンプ台として空中攻撃の起点にすることができる。
そして「匣」を縦に3つ、横に2列、計6個並べることで、連結からくりの「壁」に変化。獣が突進攻撃をしてきたときにタイミングよく「壁」を設置すれば、相手はそのまま壁にぶつかり、大ダウンするのだ。
実際にプレイしてみると、連結からくりの重要性がよくわかる。うまくいけば獣に大きなスキを作れるので、使いこなせるか否かが、バトルのカギを握るといっても過言ではないだろう。しかし、これがなかなか難しい。
獣を注意深く観察していると、「前足で複数回地面をけるそぶりを見せる」など、突進攻撃の予備動作がわかるのだが、当然敵はさまざまな攻撃のなかに突進を織り交ぜてくるので、モーションに気が付かないこともしばしば。また、バトル中は必死に動いていることもあり、設置する場所がズレて思い通りの形に連結できず、失敗することが何度もあった。
龍脈からくりは、バトルで使えるものもあるが、どちらかというと、エリアの移動経路を確保するなど、探索をより快適にするための装置が多い。
たとえば、ファストトラベル先として選べるテントの「幕屋」は、拠点としてなくてはならない存在だ。また、「飛蔓」と呼ばれる装置を設置しておけば、ジップラインのように遠く離れた場所に素早く移動できるし、地面から上空へ風を送る「旋風台」は、プレイヤーを高いところまで運んでくれる。範囲内の獣をサーチする「獣探しの櫓」も便利で、目的の獣の位置をすぐに特定できるため、エリアごとに複数設置するようにした。
獣に一定のダメージを与えると、逃げるようにエリア内を移動するため、バトルの途中で獣を追いかける状況が発生するが、そこでも龍脈からくりが役に立つ。「あとちょっとで倒せそう」というシーンで、逃げた獣のところまで到達できないとかなりストレス。エリア内はできるだけスムーズに移動できるようカスタマイズしておくべきなのだ。
しかも、一度設置すると、破棄しない限り、クエストが終わっても龍脈からくりは残り続ける。「どこに何を設置しようか」と、“自分だけの狩場”を試行錯誤して作り上げるのも楽しい。
ただし、好きなだけ設置できるわけでなはい。龍脈からくりを作るには、エリアごとの「龍脈コスト」を使う。龍脈コストの最大値は、「龍穴」と呼ばれる場所を解放していくことで増える。そのため、まずはあちこちを探索し、龍穴を解放。移動しにくい場所を見つけたらコストと相談しながら少しずつ龍脈からくりを設置していくのが大事だ。
なお、基礎からくりや龍脈からくりは、「からくりの種」と呼ばれるスキルツリーで開放して覚える。連結からくりも最初から使えるわけではなく、特定の獣との戦いの最中に閃く。
美しいあづまの国は隅々まで探索する価値あり!
ゲームに用意されているのは、「春霞の古道」「夏木立の島」「秋昏の峡谷」「冬塞ぎの孤城」といった四季を感じる4つのエリア。同じエリアでも、菜の花が咲き乱れる丘や、大きな桜の樹がある広場など、さまざまな絶景が広がる。昼と夜で表情を変える幻想的な風景は、狩りの緊張感を緩和してくれるだろう。
そんな美しいフィールドを歩いていると、奇妙な物体と出会った。自律移動型からくりの「つくも」だ。プレイヤーのパートナーとして戦いをサポートしてくれる「つくも」は、あづまの国のあちこちに隠れている。
見つけると、「つくも」の強化に必要な「古びた歯車」を入手できるので、当然探すに越したことはない。だが、1つのエリアに50体もいるうえ、「こんなところにいたのか」と驚くような場所にも潜んでいることもあるので、全部見つけるのはかなり苦労しそうだ。
「つくも」をアップグレードしていけば、戦闘中にHPを回復してくれるようになったり、基礎からくりを作る「天つ糸」の所持上限を増やしてくれたりと、どんどん頼もしくなる。ピンチのときにタイミングよく獣の注意を引き付けてくれる「つくも」には、何度も助けられた。
そのほか、装備することでスキルが発動される「護符」や、あづまの国の情報が記された「書簡」が見つかることもある。食べることでステータスを向上させられる「食材」もあちこちにあるので、「早く武器の切れ味を試したい」と一直線に獣のところに向かう戦闘狂もいるだろうが、ぜひとも寄り道をしてみてほしい。
最後に、協力マルチプレイの要素にも触れておこう。同作は最大3人までのオンラインプレイが可能だ。対応プラットフォームは、PlayStation 5、Xbox Series X|S、PC(Origin、EA App、Steam、Epic Games Store)。なお、PC版の推奨スペックは、OSが64ビット版Windows 10、CPUがAMD Ryzen 5 3600、Intel Core i7 8700K、メモリが16GB、グラフィックカードがRadeon RX 5700 XT(VRAM 8GB)、GeForce GTX 2070(VRAM 8GB)、DirectXが12、インターネット接続は512kbps以上、ストレージ容量は80GBだ。クロスプレイに対応しているので、異なるプラットフォームのフレンドとも狩りを楽しめる。
マルチプレイで特徴的なのは、味方による「蘇生」ができることだ。1回のクエストでプレイヤーが規定回数倒れてしまうと失敗になるのだが、HPがゼロになってもすぐに味方が蘇生すれば、死亡判定なしで復活する。拠点から再出発する時間的ロスもなくなるので、味方が倒れたら、優先的に蘇生するよう心がけたい。
実際に、複数人で獣に挑んだら、敵の注意が分散して、からくりを設置する余裕も生まれたし、だいぶ立ち回りやすくなる印象があった。ほかのプレイヤーが設置したからくりを使うこともできるので、連携戦術を試してみてもいいだろう。フレンドがどんな狩場をクリエイトしているのか、チェックするのも楽しそうだ。
レビューは、先行プレイ期間中だったため、「助太刀」を要請してもほかの獣狩はあまり来てくれなかったが、序盤の強敵「クロマトイ」を倒すのに、手伝ってくれた獣狩さんは、かなり頼もしかった。ソロでの討伐が難しいと感じたら、まずはマルチで素材を集めてるのもいいだろう。
ちなみに、マルチプレイに参加するにはいくつかの方法がある。龍脈からくり「獣狩の焚火」からはオンラインのセッションを作成可能だ。ホストがセッションを退出・終了するまでほかの獣狩と一緒にゲームをプレイできる。クエストごとに「助太刀を要請」してほかの獣狩に手伝ってもらう、もしくは、自分がほかの獣狩の要請に応じる方法もある。また、エリアにいくつもある「獣狩の門」からは、ゲーム進行状況に最も近いクエストが表示され、そこからもマルチプレイに参加可能だ。
頭に花を咲かせる「ハナヤドシ」、顔に草が生い茂る「コハクヌシ」、溶岩のような体の「ジゴクザル」など、『WILD HEARTS』は登場する獣もユニーク。無料アップデートで、獣の亜種や新しい獣が追加される予定なので、思う存分、自由でクリエイティブな狩りを楽しめそうだ。