今回の研究としては、窃盗症患者11名と健常者27名の協力を得る形で、データが集められた。実験では、窃盗への渇望を引き起こすと考えられるスーパーマーケットの風景や販売されている商品、それらとは関係のない外の風景などの画像や映像を呈示。実験参加者がこれらの画像や映像を視聴している際に、アイトラッキング装置を用いて呈示中の視線追跡や瞬き、瞳孔の変化などの計測を行い、機能的近赤外線分光法を用いて、脳の前頭前皮質領域の活動を測定するという手法がとられたという。

その結果、窃盗症患者では、視覚的な手がかり刺激を含む画像に対して、視線の注視点、瞬き、瞳孔の変化などから構成される視線のパターンがほかの画像に対する視線パターンと異なることが示されたという。同様に、前頭前皮質の活動のパターンにおいても、窃盗症患者では視覚的な手がかり刺激を含む画像とそれ以外の画像では大きく異なっていることが判明したとする。一方、そのような特定の画像に対する特異的な視線パターンや前頭前皮質活動は健常者では見られなかったともする。

  • 窃盗症の概要

    窃盗症では、ものを盗む行為に関連した環境(手がかり)を不適応学習してしまうため、そのような刺激によって、繰り返し窃盗する行為の衝動や欲求が引き起こされると考えられるという (出所:京大プレスリリースPDF)

これらのことから、窃盗症患者では、窃盗行為に関連する視覚的な手がかり刺激を誤って学習してしまった結果、手がかり刺激を健常者とは異なる方法で知覚していることが考えられると研究チームでは説明する。これは、窃盗症も依存症である可能性が高いことを意味しており、視覚的な認識が通常と異なることが明らかになったことから、適切な治療が必要な状態であるともしている。

なお研究チームでは、行動依存症は近年注目されるようになった精神疾患だが、定義も新しく、先行研究が非常に少ないとしている。そうした先行研究からは、薬物依存症でも手がかり刺激に対する特異的な反応が報告されており、今回の研究成果により、窃盗症においても依存症と同様のメカニズムが関わっている可能性が示唆されたとするが、今回の研究におけるデータサイズは限られているため、今後は、より大規模な研究が必要となるとしており、研究チームでも今後、ほかの行動依存症との関連や薬物依存症との関連を追求する予定としている。