米Intelは2023年2月15日(米国時間)に、ワークステーション向けの新たなCPUとして、Xeon W-3400シリーズならびにW-2400シリーズを発表しました。これは、Intel 7プロセスで製造される、「Sapphire Rapids」の開発コードネームで知られていたCPUのワークステーション版です。今回、発表内容そのものはあっさりしたものだったので、多少の補足も含めて紹介しましょう。
具体的に、今回、製品として発表されたのは「Intel Xeon W9-3495X」を最上位モデルとしたXeon W-3400/W-2400シリーズのCPUです。なお、追ってIntelの製品サイトの更新などに伴って公開されると思いますが、発表の中では細かなSKUのデータには触れられていませんでした。
「インテルは、20 年以上にわたり世界中のプロフェッショナルPCユーザーに、インテルの高性能コンピューティングと極めて堅実な安定性を兼ね備えた最高品質のワークステーション・プロセッサーを提供することに貢献してきました。今回リリースする最新のデスクトップ・ワークステーション向けインテル Xeon プラットフォームは、プロのクリエーター、アーティスト、エンジニア、デザイナー、データ・サイエンティスト、パワーユーザーのイノベーションと創造性における可能性を最大限に引き出すことに特化し、最も要件の厳しい現在のワークロードだけでなく、未来のプロフェッショナル・ワークロードへの対応も見据えて設計されました」と、クライアント・コンピューティング事業本部(CCG) クリエーター&ワークステーション・ソリューション担当副社長 兼 本部長 ロジャー・チャンドラー(Roger Chandler)がコメントしているように、ワークステーションをSapphire Rapidsベースの新世代のパフォーマンスに更新する目的を持った製品です。
最大56コア、チップレット構成のCPUがワークステーション用にも
最上位モデルのW9-3495Xは内部56コアで、このモデルを含むW-3400シリーズはXCCというCPUチップレットを結合したEMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)を採用しています。今のところ、サーバー向けのIntel Xeon CPU マックスのようなHBMによる追加メモリのあるSKUがあるかは言及がありませんでした。
また、サーバー向けの第4世代 Xeonスケーラブル・プロセッサーにはアクセラレーターの機能拡張がインテル オンデマンドで行えるのですが、今回のワークステーション向け製品では拡張に関して記載がなく、(サーバー向けでも標準で利用可能な)行列演算を高速化するAMX(Advanced Matrx Extension)とBfloat16によってAI学習・推論の高速化が行えます。
前世代製品と比べてみると、8チャネルのDDR5 RDIMMメモリ(最大4TB)と、最大105MBのL3キャッシュに対応したことで、シングルスレッド性能が最大28%、マルチスレッド性能では最大120%向上しているそうです(注:この比較はW9-3495XとW-3275を比べたもので、コア数が二倍あります)。
CPUから直接サポートされるI/OはW-3400で最大112レーン、W-2400では最大64レーンのPCIe Gen 5.0接続に対応し、複数のGPU/SSD/Network cardへの接続が行えます。さらに、Wi-Fi 6Eも内蔵。
さらにインテル ターボ・ブースト・マックス・テクノロジー 3.0により最大4.80GHzの動作周波数を実現。システム全体では安定性と運用性を高めるインテル vPro Enterprise テクノロジーに対応しています。
Sapphire Rapids-WSの登場、供給能力の改善も示唆?
Sapphire Rapidsは非常に難産でした。2020年8月のIntel Architecture Day 2020開催時には、2021年に発売と言われてましたが、翌2021年7月のIntel Accelerated開催時(リンクは参考記事)では2022年Q1にSapphire Rapidsの「量産が始まる」と発表。しかし、これも市販量産ではなかったようで、最初の納入先になると思われるアルゴンヌ国立研究所の「Aurora」やAPAC地域最初の大型事例である京都大学の「Camphor 3」でSapphire Rapidsが本格稼働開始したという発表はまだありません。
「難産の理由」をインテルが公式に説明する機会はないと思いますが、サーバー用の第4世代Xeonスケーラブル・プロセッサーとしてSapphire Rapidsの量産出荷のアナウンスがされたのは今年の1月(リンクは参考記事)のことでした。
難産が続いた経緯から、サーバー向けの提供が順調に進むのかも気にしていましたが、サーバー向けに続き、今回のワークステーション向けも発表されたことで、Sapphire Rapids世代の供給能力に、ようやく一定のメドが付いたと言えるのかもしれません。