その後、行為主体感の曖昧さの指標である傾きと、50%の確率で「Yes」と回答する主観的等価点(PSE)が、ロジスティック回帰曲線を用いて算出された。また、参加者の抑うつ傾向、統合失調症傾向、感覚過敏は各種質問紙を用いて調査された。実験の結果、同主体感を表すロジスティック回帰曲線の傾き、PSEに群間差はなかったという。つまり、感覚予測と感覚結果の不一致への非適応性が示され、感覚運動課題を用いた感覚運動レベルにおいては、不一致の受け入れが難しいことが示唆されたとする。

  • 行為主体感の変化。行為主体感の指標であるロジスティック回帰曲線の勾配(A)と、PSE(B)の群別の結果(平均±標準偏差)。検定の結果、交互作用と主効果はどちらも有意ではなかったという

    行為主体感の変化。行為主体感の指標であるロジスティック回帰曲線の勾配(A)と、PSE(B)の群別の結果(平均±標準偏差)。検定の結果、交互作用と主効果はどちらも有意ではなかったという(出所:畿央大Webサイト)

一方で、一致群のみで、曝露前後の行為主体感の変化が抑うつ傾向と有意な相関関係を示す果となった。この結果は、抑うつ傾向の場合、感覚予測と結果の一致経験によって同主体感を向上させる可能性が示唆するという。

なお、長期にわたる感覚予測と結果の不一致の曝露の影響は今回の実験では調べられていない。そのため今後は、長期間の曝露による思考の変化といった認知レベルが、感覚予測と結果の不一致といった感覚運動レベルにどのように影響するかを調べる必要があるとしている。

また、今回の研究における感覚予測と結果の不一致の曝露プロセスは、脳卒中後の片麻痺プロセスを想定しており、学習された不使用の原因に接近する可能性があると予想しているとする。一方、感覚予測と結果が一致する課題は抑うつ傾向を改善させる選択肢となる可能性が示唆されたことから、感覚運動水準の課題に文脈や思考などの認知水準の手続きを加え、柔軟に適応できるかどうかを調べる必要もあるとした。