その結果、磁場をかけると、燃料の温度が40%上昇し、核融合反応の効率が3倍になることが確認されたとする。このような温度上昇は、大規模実験における磁場支援型核融合の最初の実証で、核融合反応の頑強性と核融合エネルギーの出力を向上させるための一歩となると研究チームでは説明している。

  • NIFのターゲットベイ

    NIFのターゲットベイ。NIFは192本のレーザーが備えられており、同時照射で青い球体の中心に設置される水素燃料ペレットを爆縮させる (C)Damien Jemison (出所:NIF Webサイト)、(左下)磁場支援型レーザー核融合の模式図。核融合燃料の周囲にコイルを巻くことで、プラズマに強い磁場が印加された (出所:阪大Webサイト)

なお、磁場はホットスポットを周囲の冷たい燃料から断熱する働きを持ち、加熱の効率を高め、最終的には反応の収率を向上させるとする。磁場が存在すると、プラズマ中の電子は磁力線に沿ったらせん状の軌道しか取れなくなる。その結果として、周囲の冷たい燃料への熱の流れが遅くなり、ホットスポット内に多くの熱が溜まることになるという。

今回の研究により、NIFのレーザー核融合において、大きなエネルギーを生み出すために磁場を加えることで、カプセルの表面に小さな欠陥が存在していたり、レーザーの照射タイミングがわずかでも狂ってしまったりすると、核融合反応がすぐ停止してしまう「敏感さ」を緩和させることに成功したことから、今後、レーザー核融合による安定なエネルギー発生を実現することで、同方式に関わるほかの重要物理の理解が加速するとしている。