速報版をお届けしてからだいぶ時間が経ってしまったが、Ryzen 7000シリーズの完全版レビューをお届けしたい。といっても、実際はRyzen 9 7900Xのデータを加味しただけである。SandraとかRMMAなどのDeep Diveに関しては、こちらの冒頭でも書いたように、Raptor LakeベースのCore i9-13900Kと併せてお届けする事になるので、もう少々お待ちいただきたい。
評価機材と余談
■表1 | |||
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CPU | Ryzen 9 5950X | Ryzen 9 7950X Ryzen 9 7900X Ryzen 7 7700X Ryzen 5 7600X |
Core i9-12900K |
M/B | ASRock X570 PRO4 | ASUS ROG CROSSHAIR X670E HERO | ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO |
BIOS | Version 4.20 | Version 0604 | Version 0237 |
Memory | Micron 16ATF2G64AZ-3G2E1×2 DDR4-3200 CL22 |
G.Skill Trident Z5 Neo DDR5-6000 16GB×2 DDR5-5200 CL44 |
T-Force Delta RGB DDR5 16GB×2 DDR5-4800 CL40 |
Video | NVIDIA GeForce RTX 3080 Ti Founder Edition GeForce Driver 516.94 DCH WHQL |
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Storage | Seagate FireCuda 520 512GB(M.2/PCIe 4.0 x4) (Boot) WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data) |
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OS | Windows 11 Pro 日本語版 21H2 Build 22000.978 |
評価機材と言っても表1に示すように前回と全く同じで、ここにRyzen 9 7900Xを追加しただけである。OS VersionもDriverも全て同じである。Ryzen 9 7900Xも特に問題なく認識された(Photo01,02)。
ちなみにグラフ中の表記は
i9-12900K:Core i9-12900K
R9 5950X :Ryzen 9 5950X
R5 7600X :Ryzen 9 7600X
R7 7700X :Ryzen 9 7700X
R9 7900X :Ryzen 9 7900X
R9 7950X :Ryzen 9 7950X
となっている。また解像度表記は何時もの通り
2K :1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K :3200×1800pixel
4K :3840×2160pixel
とさせていただく。なおベンチマーク入手先のURLやテスト設定などは完全に前回と同じなので、今回は割愛する。
これで終わるのもアレなので、ちょっとだけ余談を。そもそも今回のRyzen 7000シリーズでは、なぜか7800Xがスキップされた。「何で?」を直接David McAfee氏(AMD CVP&GM, Client Channel Business)に伺ったところ、「そもそもこの話はRyzen 3000シリーズに遡る。Ryzen 7 3800Xは、TDP 105Wの製品だった。で、Ryzen 7 3700Xは65Wだった。実を言えばRyzen 7 3700Xは当初X無しのRyzen 7 3700として発売予定だったんだが、あまりにも性能が高いのでXを付けた格好だ。これが次のRyzen 5000シリーズにも引き継がれ、Ryzen 7 5700XはTDP 65Wで提供される一方、Ryzen 7 5800XはTDP 105Wで提供された。つまりXが付きながら65Wの製品と105Wの製品が混在していた訳だ。今回Ryzen 7000シリーズの発表にあたり、我々は名前を整理することにした。Ryzen 7 7700Xは、Core i7-12700Kとかi7-13700Kが競合となる。これに合わせた格好だ。また今後TDP 65Wの製品を発売する場合は、そこにXは付かない事になると思う」という返事が来た。要するに省かれたのはRyzen 7 7800Xというよりも、TDP 65WのRyzen 7 7700Xであり、TDPが105Wになるにあたり競合と数字を合わせるべくRyzen 7 7700Xになったという訳だ。その意味では、これまで800X番台が担っていた「シングルダイ最速」の座は、今後は700X番台に切り替わった、という格好である。
◆CineBench R23(グラフ1)
CineBench R23
Maxon
https://www.maxon.net/ja/cinebench
Ryzen 9 7900XのMulti Thread性能は、CineBenchで言えばCore i9-12900Kと同等レベルであり、Ryzen 9 5950Xと比較しても負けていない(そしてSingle Thread性能ではRyzen 9 5950Xを大きく引き離す)というあたりは流石というべきか。予想は出来た結果だが、悪くないと思う。
◆PCMark 10 v2.1.2563(グラフ2~7)
PCMark 10 v2.1.2563
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
こちらも概ね順当と言うべきか。Overall(グラフ2)を見ると、ほぼ製品のポジショニング通りで、Core i9-12900Kと互角以上の性能になっている。Test Group~Contents Creation(グラフ3~6)もほぼ想定通り。Application Score(グラフ7)も悪くない。後で出てくるが消費電力はその割に低く、少なくともRyzen 9 7950Xよりはまともと言うか、現実的な消費電力に収まっている。それでいて価格も安い訳で、普通に高速なマシンが欲しい、というのであればRyzen 9 7900Xあたりが一番現実的かもしれない。
◆Procyon v2.1.459(グラフ8~11)
Procyon v2.1.459
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/procyon
Overall(グラフ8)を見ると、概ねRyzen 9 7950Xに若干及ばない程度で、悪い結果ではない。Detailを見ると、なぜかOffice Productivity(グラフ11)のWordが妙に数字が悪い(その代わりExcelは最高速、というのも妙である)が、大きな問題になるほどの違いでもない。概して言えばOverallの評価そのままという感じだ。
◆POV-Ray V3.8.2 Beta2(グラフ12)
POV-Ray V3.8.2 Beta2
Persistence of Vision Raytracer Pty. Ltd
http://www.povray.org/
こちらの結果はCineBenchに近い結果になる。厳密に言えばAll CPUの結果でRyzen 9 7900Xのスコアが微妙にCore i9-12900Kに及ばないのは、動作するバイナリの違いのためかと思うが、傾向としてはほぼ同じと見て良いかと思う。One CPUではRyzen 9 7900XがRyzen系列の中で最高速、というのもどうかと思うが。
◆Stable Diffusion UI(グラフ13)
Stable Diffusion UI
cmdr2
https://github.com/cmdr2/stable-diffusion-ui
こちらで利用したバージョンは古いので、Raptor Lakeのベンチの際に利用したv2.28とは傾向が大きく異なるので注意。こちらは所要時間だから短いほど高速な訳だが、御覧の通りRyzen 9 7900XのスコアはほぼCPU性能を反映していると見て良いかと思う。
◆TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.23.25(グラフ14)
TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.23.25
ペガシス
http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html
H.264からHEVCへのトランスコード(4K)の処理性能だが、御覧の通りRyzen 9 7900XはRyzen 9 7950Xに次いで2番目であり、Core i9-12900Kを上回っているあたり、きちんと性能が出ている事は疑う余地はない。消費電力も考えると、かなりバランスの良いスコアだと思う。
◆3DMark v2.22.7359(グラフ15~18)
3DMark v2.22.7359
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
当然ながらCPU差の影響が少ない3DMarkで、大きな違いが見いだせるかというと難しく、実際Ryzen 9 7900XのスコアはRyzen 9 7950Xと大きな差は見いだせない(グラフ15)。強いて言えば一番差が出やすいPhysics/CPU Test(グラフ17)の結果を見るとそれなりに差があり、ここでは概ねCore i9-12900Kと同等程度(Timespyではちょっと負けてる)だが、この結果が実際のゲームに反映される可能性が少ない事を考えると、概ね大差なしとしてしまって良いのではないかと思う。