OPPOブランドのスマートフォンなどを展開するオウガ・ジャパン。直近では、日本市場向けの5G対応モデル「Reno7 A」がヒットしています。同社の専務取締役である河野謙三氏に、OPPO製品のこれまでの動向や日本市場への取り組みなどについて話を聞きました。

  • 日本のニーズに合わせた機能や装備、デザインを採用した5G対応スマートフォン「Reno7 A」

    日本独自モデルのOPPO Reno7 A

日本のデザイナーを交えてデザインやカラーを決定

2022年6月の発売以来、好調に推移しているReno7 Aについて、河野氏は「日本のニーズに特化した、求められる機能や魅力を盛り込んだ機種」と説明。発売初動の動きは、前モデルのReno5 Aに比べて155%の伸び率だったといいます。実は、同時に同社のオンラインショップもリニューアルしており、売上が200%伸びたそうです。

  • オウガ・ジャパンの河野謙三専務(中央)。インタビューはオンラインで行ったため、写真はReno7 A発表会の時のものです

店舗スタッフからも「売りやすい端末」というフィードバックを得ているというReno Aシリーズ。2019年からスタートした日本専用モデルですが、型番が奇数番号になっており、4年目ながら「7」という型番になっています。

日本市場向けのモデルということですが、「特定のターゲット層は設定していない」と河野氏。幅広いユーザーのニーズに応える端末という位置づけですが、「2019年のReno Aの発売当時は40~50代の男性の購入者が多かった」(河野氏)といいます。

スマートフォンを日常的に使っている人が多く、2019年時点でOPPO製品を購入するということで、詳しい人が多かった模様です。ただ、Reno3 A、Reno5 Aと世代を重ねていくごとに女性ユーザーが増えてきたそうで、20代だけでなく10代にも拡大していったと河野氏。

OPPOの中国本社では、いわゆるF1層(20~34歳の女性)がメインターゲットだといいます。河野氏は、「我々も、最初は日本で同じようなマーケティングをしようとした」ということで、いくつか施策も打ち出していたそうですが、「結果からいうと失敗した」と河野氏は率直に認めます。

日本ではF1層の購入が増えないなか、40~50代男性のユーザーが増え、Reno A発売前にはマーケティング手法を「1からやり直した」と河野氏。中国での成功体験をそのまま適用するのではなく、日本独自のニーズとウォンツがあるということで研究を行い、その結果として独自端末のReno Aを展開することになったそうです。

それが防水防塵、おサイフケータイといった機能で、結果としてReno7 Aでは背面加工としてOPPO Glowを採用し、日本独自の2色カラーも取り入れてデザイン性も高めることで、幅広いユーザーの獲得を目指しています。

このReno7 Aは、グローバル端末をそのまま持ってきたわけではなく、OPPO日本現地のインダストリアルデザイナーと、中国本社のデザイナーも含めて協議をして開発しています。日本在住の人が求める美意識をデザインに反映させることを「徹底的に磨き込んだ」。それをグローバルに輸出したのがReno7 Aだと河野氏。「日本発のデザインがグローバルモデルとして展開されている」そうです。

ちなみに、本社のデザイナーからは「日本は他の国とデザインに求めるものがまったく違う」という声が寄せられたそう。河野氏によれば、東南アジアでは力強いデザイン、くっきりとしたカラーが好まれますが、日本では淡い色を好みつつ、派手な色も嫌いではない、という傾向があるそう。「2つの矛盾したものがどう両立されているか。そこに美を感じる傾向が強い」ということで、河野氏は例として浮世絵を挙げます。

そうしたセンスを重視して、Reno7 Aでは日本独自色を採用しつつ、海外モデルのReno 7ではカラーの彩度を上げているそうです。

スマートフォンの背面処理にも流行があり、Reno Aシリーズを見ていると光沢のある背面だったのが、今年に入ってマットな処理に変わってきました。これは、各社に共通した傾向で、河野氏は「ファッションの世界では糸を紡ぐところで染めるので今年の色を決めるが、スマートフォンメーカーはそれができない」と指摘し、誰かが決めた流行というよりも「たまたまだと思う」とのことでした。

  • OPPO Reno Aシリーズ。反射の強い光沢のある背面から、OPPO Glowの輝きつつもマットな背面処理に移り変わっています

流行という意味では、ディスプレイの縁がカーブしている3Dガラスは、一時期ハイエンド端末で共通したものでした。最近は、ハイエンドでもフラットディスプレイが復調しています。「市場のニーズを各国でヒアリングすると、日本のユーザーは持ったときにエッジの部分に指紋がつくのが嫌だというニーズが多かった」(河野氏)ということで、Reno7 Aでは3Dガラスをやめたそうです。

従来モデルのユーザーが残念に感じた点は何かを調査した

Reno7 Aでは、製造コストの上昇も課題になっています。製造コストは20%上昇し、Reno7 Aは発売の1年ほど前から開発に着手しており、為替も大幅に円安になっています。そのため「コスト増の影響は当然あった」と河野氏。

「ユーザーのニーズに基づいた企画をするというのが大原則。日常的に使うには譲れないものを優先的に機能として取り入れた」と河野氏は話します。この「譲れないもの」がいかに企画できているかが重要になります。

「OPPO Renoシリーズを使っていて、何を残念に思っているか、何がいるのかをユーザー調査すると、分析しづらい回答が返ってくる」。河野氏はそう指摘します。欲しいものを聞けば、「5000万画素センサーが欲しい」「バッテリー容量をもっと増量してほしい」といった、スペックの話になってしまうのだといいます。

河野氏は、Renoシリーズにおいては「体験価値が主題」と強調します。欲しいスペックを聞くのではなく、「どんな点にがっかりしたか、残念だと感じたか」という質問をするそう。こうして得られた回答と定量データを組み合わせて分析し、スペックを取捨選択したのだそうです。

3回のOSアップデートにも意欲

Reno7 Aは、au(KDDI)や楽天モバイルのキャリア取り扱いもあり、「キャリアとの協業関係も強くなっている」と河野氏。日本では、1年間の開発期間で2年間販売、保守を行うというタイムスパンが多いのですが、「海外だとその半分の期間」だといいます。

その結果、「グローバルのスピードに合わない」というのが現状で、Reno Aシリーズではグローバルの1世代分を飛ばす形になっているため、型番が奇数番号のみになっているわけです。その代わり、日本のニーズ調査を毎年実施し、現行モデルの不満を調査して、「1年間かけて成熟させて、製品に落とし込む」という作業をしているそうです。

なお、フラッグシップモデルのFind Xシリーズに関しては、「採用スケジュールが合わない」と河野氏は回答。Reno7 Aはキャリアの調達スケジュールに合わせてリリースできますが、Find Xシリーズはグローバルのタイミングで発表され、キャリアのタイミングに合わないという理由を説明します。

とはいえ、キャリアの採用による売上増はOPPOにとっても大きく、Reno7 Aの発売初日の売上は予想の3~4倍だったそうです。キャリアだけでなく、量販店を含めたすべてのチャネルで過去よりも売上が伸びたとのことで、着実な日本市場の進展に手応えを感じているようです。

「Reno Aを出すまでは失敗続きだった」と振り返る河野氏。ユーザーのニーズを的確にとらえることができて、ニーズの分析をして受け入れられたと分かったときの安堵感は強いそうです。

とはいえ、河野氏は「実績にあぐらをかくことなく、端末の不満点に関する質問をユーザーに投げかけていき、改善できるところは改善していきたい」と意気込みます。例えば、Reno7 Aに関しては「ステレオスピーカーなら映画を見たときの没入感が高められる」という意見があり、そうした不満点を今後の製品開発に生かしていきたい考えです。

加えて、OSのアップデートに関しても継続して検討していくと話します。OSのアップデートは、メーカー単体で確約できるわけではなく、Androidの新バージョンが端末のSoCをサポートするか、SoCメーカー自身が新バージョンのサポートに前向きか、キャリア納入モデルではキャリアの考えも影響します。

河野氏は、「来年の早い段階でReno7 AはColorOS 13にするスケジュールで進んでいる」と話します。現時点では「2回のOSアップデートはやるだろうと考えている」とのこと。Reno7 Aでは「3年間サクサクが続く」というアピールをしているので、「3回のOSアップデート」が期待されていることは想像に難くありません。

「3回目も頑張りますとしか言えず、断言はできないが、期待は絶対に裏切りたくない」と河野氏は強調。前向きにOSアップデートに取り組む意向です。

河野氏は「日本市場で長期的なビジネスをやっていきたい」と話し、世界4位のスマートフォンメーカーとしてのスケールメリットを出しながら、日本独自色を打ち出して、日本市場に根付いていくことを目指していく考えを示しました。