オーストラリアにあるシドニー大学のピーター・ゴドフリー=スミス氏らの研究チームは、タコが他のタコに物を投げる様子を初めて撮影することに成功したと発表した。人間を含む一部の社会性哺乳類だけに見られる行動が、タコでも見られたというのだ。

  • 世界初! タコがほかのタコに物を投げる様子の撮影に成功、ネット「タコって物投げるの?」

    タコが相互作用の中で、ほかのタコに物を投げつける様子を初めて捉える

物を同種に投げる動物は、人間を含む一部の社会性哺乳類だけに見られる非常に珍しい行動なのだとか。今回の研究では、そんな珍しい行動を、タコで確認できたという。米科学誌「PLOS ONE」に掲載された論文には、実際にタコが投げている動画も添付されている。動画では、泥の塊や貝殻をほかのタコ目掛けて投げているタコを確認できる。

本研究では、2015年と2016年に、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州南岸沖のジャービス湾で水中定点カメラを用いてシドニーに生息するタコの一種であるOctopus tetricusの行動を撮影。タコは体の漏斗と呼ばれる部分から水を勢いよく噴射させて移動するが、この噴射を利用して物体を投げる行動を観察した。

撮影された21時間以上の映像において、タコが貝殻や藻類、泥の塊などを投げるのを102回観測したという。オスとメスの両方で見られたが、66%がメスによるものだったそうだ。基本的にタコが物を投げるのは、巣穴の掃除の際や、食後のゴミを捨てる際に使われるようなのだが、他のタコにぶつけたという記録もあったようだ。また状況によって、投げる素材も変わることが判明した。具体的には、53%が1匹のタコがほかのタコと喧嘩したり、交尾したりしてから2分以内に発生したという。この際は泥の塊を投げる傾向が顕著だったそう。このほか、32%が巣穴を掃除するとき、8%が食後の貝殻を捨てるときだったという。この際は貝殻を投げることが多かったそうだ。

同研究チームは、ほかのタコとの相互作用の際に発生したものを物を投げる行動で、33%(17個)がほかのタコに当たったことに注目。通常とは異なる脚の組み合わせを使っているタコや、投げる瞬間に体色が暗くなるタコなどは、ほかのタコに物をぶつける確率が高かったというのだ。このことから意図的にほかのタコに物をぶつけた可能性がある、と同研究チームは分析している。

本研究の成果は、タコ同士が物を投げる行動は、タコの社会的相互作用の中で機能していることを示唆するものだそう。しかし、なぜタコがほかのタコを狙うのかは不明だとしている。また、物を投げられたタコが反撃する様子が見られなかったり、激しい相互作用の中においても、ほかのタコではなく何もない空間に物を投げたりすることから、タコが物を投げる行動の一般的な効果を評価するのは困難だとしている。

ネット上では「これはすごい」「タコって物投げたりするのだ」「タコがこんなことするなんて知らなかった!」などの声が寄せられた。