ニットやコートなどの冬物衣類は、洗濯方法によっては縮んだり毛玉が発生したり、風合いが変わってしまったりすることがあります。といってクリーニングに出すと、コートやダウンは一般的に2,000円～5,000円くらいかかるもの。ニットのセーターも1,000円前後と、頻繁にクリーニングするのはためらう値段です。
ここでは、パナソニックが開催した衣類ケアセミナーから、家庭でできる上手な洗濯やケアを紹介します。おしゃれ着用洗剤を発売している花王とともに「自宅でおしゃれ着を洗う方法」をレクチャーしてくれました。
-
衣類の知識と最適な洗剤、そして家電を駆使して、衣類の傷みを最小限にして自宅で洗濯
-
冬物衣類ケアについてレクチャーする、パナソニック ランドリー・クリーナー事業部 国内マーケティング部 ランドリー・アイロン課の山下恵さん（写真左）と佐藤弘和さん（写真中央）、花王 ファブリックケア事業部 福本梨紗さん（写真右）
-
相次ぐ物価高によって、多くの人がクリーニングをためらうように。自宅で衣類をケアしたいと考える人が増えています
どこまで知ってる？ 洗濯の基本は「洗濯絵表示」から
おしゃれ着用洗剤を発売している花王の福本梨紗氏によると、衣類洗濯の基本は衣類にあわせた方法を選ぶこと。
衣類によっては水に濡れることすら適さないものもあり、そういった衣類はもちろん自宅では洗濯できません。そこで欠かせないのが、衣類のタグなどに描かれている「洗濯絵表示」のチェックです。この表示を見れば、自宅で洗濯が可能か、どのように洗濯すればよいか、一目でわかります。
-
洗濯の基本となる洗濯絵表示。まずチェックしたいのは、洗濯機での水洗いが可能かどうか。日本では2016年から国際規格準拠マークが使われています。つまり、海外製の多くの衣類でも同じマークが利用されているのです
-
自宅での洗濯には欠かせない情報ですが、残念なことに半数以上の人が表示の意味を理解していません
洗濯が可能であることがわかったら、次に細かな条件を確認します。とくに最近の高機能洗濯機はおしゃれ着洗いに温水が使えるものが増えており、温度の高い水（お湯）で洗濯するほど皮脂汚れや油汚れは落ちやすくなりますが、衣類によっては一定温度以上の温水で洗えない物もあるので注意が必要です。
温水洗濯に対応していない洗濯機でも、洗濯前のひと手間で汚れやシミが落ちやすくなります。「襟や袖、脇、すそなどの汚れには、おしゃれ着用洗剤の原液を衣類につけて、タオルで優しく押さえるのがオススメ」（福本さん）
-
衣類は温水で洗うことで皮脂汚れなどが落としやすくなりますが、衣類によっては水温の上限がきまっている物も。マークに数字が入った表示がある場合は、数字以下の温度で洗濯しましょう
-
パナソニック最新の洗濯乾燥機フラッグシップモデル「ななめドラム洗濯乾燥機 NA-LX129B」
-
NA-LX129Bには、おしゃれ着洗いコースに約30℃と約40℃でつけおき洗いするコースも。衣類を傷めず皮脂による黄ばみ汚れを落としてくれるコースです
ちなみに、ウールなどの衣類に当たり前のように使っている「おしゃれ着用洗剤」ですが、福本さんによると通常の衣類用洗剤との違いは「弱い水流でも汚れ落ちしやすいかどうか」とのこと。おしゃれ着用洗剤はデリケートな素材を傷めにくい成分でできており、色落ちや毛玉の発生を抑えます。最近は衣類のダメージを防ぎ、伸びやヨレを元に戻す効果を持った製品も発売されています。
-
通常の洗剤はしっかり洗うことを前提に成分が調整されているので、洗濯機のおしゃれ着コースで洗うと「おしゃれ着用洗剤のほうが汚れが落ちる」という意外な結果に。おしゃれ着用洗剤は汚れ落ちが悪い印象を持つ人もいますが、ファンデーションの汚れもしっかり落ちています
-
弱い水流で汚れを落とすだけでなく、衣類へのダメージが少ないのも特徴のひとつ。福本さんによると、おしゃれ着洗いでも柔軟剤の使用はアリ。とくに冬は静電気が発生しにくくなり、静電気によるホコリの付着も防げるそうです
おしゃれ着洗いを洗濯機に入れるときは、以下の3つがポイント。
- ボタンなどはすべてとめておく
- 飾りボタンやビジューなどがついた服は絡まないように裏返しにする
- 服を洗濯ネットの大きさにたたんで洗濯機に入れる
-
衣類に応じた洗濯機のコース選び
-
花王のおしゃれ着用洗剤、最新の「エマール」にはさまざまな衣類ケア効果が
多くのおしゃれ着は、干す方法についても「吊し干し／平干し」「日向干し／陰干し」「脱水後に干す／濡れ干し」を洗濯絵表示で指定しています。干す方法を間違えると型崩れすることもあるので注意が必要。
基本的に水を含んで重くなるものは、ハンガーで干すと型崩れや伸びが起こりやすいのです。こういった衣類は、一度バスタオルでくるんで水気を減らしてからの平干しがオススメです。
-
薄手のセーターは袖と身衣（みごろも）を一緒に物干しにかけて乾燥。ハンガーを使うと袖などが伸びてしまいます。厚手のセーターは平干しがオススメ。平干しネットがない場合は、ピンチハンガーの上に乗せると手軽ですね
-
ダウンはできるだけ太めのハンガーで乾燥させます。手でたたいて形を整え、2～3日はクローゼットに収納せずに陰干しするのがオススメです。完全に乾いたら衣類の両端を持ってふりさばき、空気を含ませるようにします
家電を使えばより効率よい衣類ケアが可能に
洗濯機を上手に使うと、衣類ケアがもっと楽になります。花王の福本さんはおしゃれ着用洗剤を使うときのポイントとして「洗剤を用法通りの量で使用すること」を挙げます。
最近の洗濯機は液体洗剤の自動投入機能を持ったモデルが増えていますが、前述したパナソニックの「ななめドラム洗濯乾燥機 NA-LX129B」は、液体洗剤と柔軟剤に加えて、おしゃれ着用洗剤の自動投入機能を搭載。衣類の量にあわせて最適な洗剤量を自動投入してくれます。
-
液体洗剤と柔軟剤の自動投入機能は珍しくなくなってきましたが、おしゃれ着用洗剤にも対応しているのは今のところパナソニックの一部モデルだけ。汚れがひどいときは洗剤を「多め」に指定することもできます
-
水洗いできない衣類は「ナノイーX 衛生ケアコース」で消臭や除菌も可能。ただし、この機能では汚れは落ちません
おでかけ前など、衣類の脱臭や除菌を手軽にしたい場合は、気になる部分に衣類スチーマーの蒸気を当てるのもオススメ。スチームには衣類の形状を復元する効果もあります。セーターなどのニット製品は頻繁に着ていると袖口や襟ぐりが伸びてしまうことがありますが、こういったパーツにスチームを当てると、広がったニットを引き締めて元に戻せます（伸びの状態や素材にもよります）。
-
パナソニックの「衣類スチーマー NI-FS780」。電源オンから約19秒ですばやくスチームが出ます
-
右側の袖を無理矢理ひっぱって伸ばしてみました。伸ばした袖は広がって波打っていますが（写真上）、スチームを当てた後は伸ばす前の左袖より袖口が引き締まりました（写真下）
最近は服の生産から着用、廃棄の全家庭において環境に配慮した「サステナブルファッション」が世界的に注目されていますが、服を傷めずケアして長く着ることもサステナブルファッションの取り組みのひとつ。自宅で正しくおしゃれ着をケアすることで、クリーニング代を節約できるだけではなく、お気に入りの服を長く着られるのはうれしいですよね。
